5 基地内のスキルホルダー達
「由奈ちゃん、おっはよう」
菜乃は由奈に挨拶するとすぐに抱き着く。
「おはよう菜乃ちゃん」
「うん、今日も頑張ろうね」
柚葉達戦闘向きのスキルを持っている者達が外で未確認と戦っている間由奈達非戦闘向きのスキルを持つ者達は基地内で仕事を行っている。
由奈は菜乃の仕事の手伝いをしている。
「それじゃ、行こうか」
「うん」
菜乃の仕事は倉庫にある資料を各専門のスキルを持つ部署に届ける仕事である。
「由奈ちゃん大丈夫?」
「うん、菜乃ちゃんは元気だね」
「これが私にできる事だからね」
「あ、菜乃ちゃんおはよう」
「今日も頑張ってるね」
「おはよう、早速だけど、ぎゅう~」
菜乃は挨拶をした二人の少女にそれぞれ抱き着く。
「あはは、今日も一日頑張って」
「遠慮なく補給してね」
「ありがとう、頑張るよ」
菜乃はそのまま荷物を運び出す。
「菜乃ちゃんのスキルって面白いよね」
「うん、私のスキル『スタミナ補給』は他人のスタミナをほんの少し補給して自分のスタミナにする事ができるんだよね、でもそのためには、相手に抱き着かないといけないんだよね、だから皆に会ってスタミナを少しずつ補給してもらってるの」
そう言って菜乃は出会う人達に次々と抱き着いてスタミナを補給してもらっている。
そうしているうちに二人は資料を運ぶ場所に到着する。
「右京ちゃん、左京ちゃん、今日の分の仕事持って来たよ」
「おお、菜乃っち、由奈っちお疲れ~」
「菜乃さん、由奈さん、ご苦労様」
菜乃と由奈を迎えたのは双子のスキルホルダーの右京と左京である。
「はい、今日の資料だよ、昨日より多いけど大丈夫?」
「大丈夫問題ない」
「左京さん、はい」
「ありがとう、由奈さん」
菜乃と由奈から資料を受け取った右京と左京は仕事を始める。
右京は資料を見ながらパソコンを目にも止まらぬ速さで打ち込んでいき、左京は資料をパラパラめくって間違いがあった箇所に赤ペンで修正していく。
「いつ見ても凄い」
「そうだね、妹の右京ちゃんのスキルは『超速タイピング』パソコンの打ち込みが速くて正確に打つ事ができるスキルで姉の左京ちゃんのスキルは『瞬間記録読み』資料をパラパラとめくるだけで瞬時にどこのページに何が書かれているか一言一句間違えない正確さで資料の誤字、脱字さらに間違ったデータを修正してくれる、正に事務仕事に向いているスキルだね」
「事務はこの二人しかいないけど、この二人だけで十分すぎるほど足りてるよね」
「うん、事務仕事は二人に任せて次に行こう」
菜乃と由奈はその後も書く場所に必要な資料や物資を持って行く。
「あ、そろそろお昼だから昼食にしよう」
「うん」
午前中の仕事を終えた二人は昼食を食べる。
「由奈ちゃんはたくさん食べるね、スキルの影響なのかな?」
「うーん、どうなんだろ? お姉様も私がいくら食べても身体が変わらないのはスキルでエネルギーが出て行ってるからじゃないのかもしれないって言ってたけど」
「うーん、スキルの事はまだよくわかっていない事があるからね、考えたってわからないからとにかくたくさん食べて午後も頑張ろう」
「うん」
昼食を終えた二人は午後の分の資料や物資を届ける仕事を続ける。
夕方頃になって最後の資料を届ける。
最後に届けるのは理事長室である。
「理事長、今日の資料を届けに来ました」
「失礼します」
「ああ、君達か今日もご苦労だね、八波君受け取ってくれ」
「はい、菜乃さん、由奈さん私が預かります」
「うん、わかったよ、でもその前に」
菜乃は荷物を置いて八波に抱き着く。
「って私は良いでしょ?」
「だって、これが私だもん・・・・・・そう、そうなんだね」
菜乃は八波から離れてどこか悲しい顔をする。
「やっぱり、そうなるんだね」
「ええ、もう決まった事ですから」
「できればずっと仲良く一緒にいたかった」
「私もできればそうあってほしかったです」
「でも、仕方ないよね、皆を守るためだから」
「ええ」
「じゃあ、ちゃんと届けたからこれで失礼します」
「ああ、菜乃君、由奈君ご苦労だったね」
「はい、失礼します」
「失礼します」
菜乃と由奈は理事長室を後にする。
「菜乃君は悲しい顔をしていたか」
「はい、彼女は優しいですから、こんな結果になったのが残念でしょうがないでしょう」
「だが、もう決まった事だからな、すまないな君にはいつも私に付き合ってもらって」
「私はどこまでも理事長について行くだけです、あなたの守りたいものが私の守りたいものでもあるのですから」
そう語る理事長と八波は覚悟を決めた目をしていたのだった。
「あら、ナノとユナじゃない」
「あ、ターニャちゃん、お帰り~」
菜乃は帰って来たターニャに抱き着く。
「あらナノ、スタミナ切れかしら?」
「うん、そうなの、他の皆も」
そう言って菜乃はターニャ以外の少女達にも抱きつく。
「あれ、ターニャさん、お姉様は?」
「ああ、ユズハなら少し遅れて帰って来るわよ、それよりも私達は、理事長室に任務の報告に行くのだけど良いかしら?」
「あ、ごめんね、じゃあまた後でね」
「ええ」
ターニャ達は理事長室へと向かう。
「菜乃ちゃん、どうしたの?」
「あ、ううん、なんでもないから、そう、なんでも」
そう答えるが菜乃の顔はどこか悲しそうな顔をしていたのだった。
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