55 不審な動き
「・・・・・・はあ」
朝食を食べながら夜見は溜息を吐いていた。
「あら夜見、溜息なんてついてどうしたの?」
夜見の隣では柚葉が紅茶を飲んでいる。
「いや溜息もつくさ、だってここのところの敵の行動が全くわからないんだから」
「そう言えばそうね」
「確か出て来てはすぐに撤退したんだよね?」
柚葉と夜見の前では由奈と菜乃がいて食事をしながら菜乃が会話に入って来る。
「そう、最初に真由達が047と出くわしてからこんな行動が続いているのよね」
「確か昨日は062で一昨日は080、その前が027でそのまた前が047だったね」
「ええ、でも全員戦わずに撤退したのよね」
「確かそのナンバーズ達って皆アドメラと言うネームドの部下でしたよね?」
「その通りよ、由奈」
「でも、どうして戦わずに帰るのでしょうか?」
「わからないけど、真由達の話だと撤退する時に何か遠くで大きな音がして煙が上がったらそれを合図に撤退しているそうよ」
「何がしたいのかわからないけど、あいつら以外の動きがないのも気になるわね、あいつらは囮で何か別の目的があるのか、あるいは何かの作戦の時間稼ぎか」
「いずれにしても警戒しないといけないわね」
「よし、今日も行くぞ」
「「「「おおー!!」」」」
アドメラの声で部下のナンバーズ達は勢いよく返事をする。
「今日は080、頼むぞ」
「お任せを、さあ出撃だ」
「見つけたぞ!!」
楓と湊がナンバー080を発見し戦闘態勢に入る。
「お早い到着だね、今日は僕が相手をしてあげるよ」
「なら、相手になってもらおう」
湊が剣を抜くとどこかから大きな音が起き煙が上がる。
「残念だけど、今日はここで終わりだよ」
そう言って080は撤退する。
「また帰った」
「一体何がしたいんだ?」
楓の問いに答える者は誰もいなかったのだ。
また次の日。
「帰る」
大きな音と煙が上がった事でナンバー027は撤退する。
「え? また?」
「蘭華様のスキルを無駄に使わせるなんて、許せない」
『何がしたいんだこいつ?』
蘭華は唖然とし初音は怒り終音はただ初音の中で疑問を口にしていた。
さらに次の日。
「合図か」
大きな音と煙が上がった事でナンバー062は撤退する。
「せっかく来たんだから少しくらい戦っていきなさいよー!!」
夜見の叫び声が虚しく響くのだった。
「ここ最近ナンバーズが意味不明な行動をしているそうだな?」
理事長室では八波と理事長がここ最近の未確認についての事を話し合っていた。
「はい、出て来て駆け付けたと思えばすぐに撤退をする、ここ最近そのような行動が続いていて、もう二週間になります」
「何か目的があるのか、それともただ我々を嘲笑うかのような行動をしているだけか」
「後者の方より前者の方だと思われます」
「だとしたらそろそろ何か仕掛けてくるだろうな」
「今日は何もしないわよ、どうせすぐに帰るんだから」
027と対峙している夜見だが夜見は武器を構えずにただ腕を組んで立っているだけだった。
「ククク」
するとどこかから大きな音がして煙が上がる。
「時間か、あーばよ!!」
「あ!!」
027はいつものように撤退する。
「本当に帰るなよー!! バカー!!」
夜見が怒りを露わに叫ぶのだった。
「・・・・・・」
朝いつものように少女達は朝食を食べるが全員どこか苛立ちを感じていた。
「あなた達随分苛立っているわね」
「苛立ちたくもなるわよ、毎回毎回あいつらは出て来ては逃げるし」
夜見はそう言いベーコンを憎たらしく噛みちぎって食べる。
「蘭華様に何度も無駄にスキルを使わせて許せない」
「そんなに怒らないの、かわいい顔が怖くなって台無しよ」
「奴等の狙いがさっぱりわからん、無駄に出撃しては他の者達のストレスにもなってしまう、湊、どう思う?」
「憶測でしか判断できないが少なくとも何かを狙っていると考えた方が良い」
「真由はどう思う? あいつらただ適当に出て来てるだけだと思う?」
「こう言う一見意味のない行動ほど何か大きな事の前触れと言う事もありますね」
各々達で最近のナンバーズの動きについても話し合っている。
「夜見ちゃん、無理してない?」
「そこは大丈夫だから安心しなさい」
「お姉様はどう思ってるんですか?」
「そうね、何かあるのは間違いないわね」
柚葉はそれだけ言って紅茶を飲むのだった。
「最近似たような内容ばかりね」
資料を見ながら言う左京の隣では右京がパソコンを操作していた。
「何かナンバーズ達が出て来てはすぐに撤退したりしてるそうだよ、夜見っちが滅茶苦茶怒ってたわ」
「確かにここ二週間そんな事が多いね、共通しているのは大きな音がして煙が出たら撤退していたと」
「その大きな音がこいつらの撤退の理由だと考えるのが普通だね、まあこいつを見れば何かわかるかもね」
「それは?」
「ナンバーズ達が撤退する時の状況を撮ったカメラのデータなんだけど、理事長が見ておいてくれだって」
「より正確に情報をまとめるには良いわね、右京早速再生を」
「了解」
右京は映像を再生させて二人で見るのだった。
「うーん、見た感じ報告通りって感じだね」
「そうね・・・・・・ん?」
「姉ちゃん、どうした?」
「右京、この映像巻き戻して」
「あ、うん」
巻き戻した映像を左京が再び見るとある場面に来たら映像を止めるように言い右京が映像を止める。
「この部分、拡大できる?」
「え? うん、やって見る」
右京が煙の上がっている部分を拡大させる。
「これって」
「もっとはっきりと出せない?」
「うーん、成海っちに頼めばもっと繊細にハッキリと映った状態にできるかも?」
「早速頼んで理事長達にも見せた方が良いわね」
二人は迅速に行動するのだった。
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同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。




