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3 スキルホルダーと未確認

 夜中部屋で少女がパソコンを操作していた。


「よし、これで後は、このメモリのデータを送れば」


 少女がパソコンにメモリを挿そうとした瞬間。

 

「え?」


 突然少女の首から血が噴き出しそのまま倒れてしまう。

 そしてパソコンに挿そうとしたメモリもなくなっていた。


「いただきます」


 朝になり柚葉と由奈は食堂で朝食を食べていた。 

 由奈は小柄な見た目とは思えないくらいの量を食べている。

 

「美味しい~」


「相変わらずたくさん食べるわね、成長期かしら」


 由奈の食べる姿を見て紅茶を飲みながら本を見ている柚葉は微笑ましく見ている。


「はう、お姉様あまり見ないでください」


 自分がたくさん食べる姿が恥ずかしいのか由奈は顔を真っ赤にする。


「ふふ、食べる姿も恥ずかしがる姿もかわいいわね」


「はう~」


 恥ずかしがりながらも由奈はパンを食べている。


「ねえ、昨夜の事聞いた?」


「聞いた聞いた、また処刑人が出たんだって」


「死んだあの子どこかのスパイだったんだね」


「私、仲良くしてたのに残念だよ」


「?」


 少女達の話に聞き耳を立てていた由奈は柚葉に質問する。


「お姉様、処刑人って何ですか?」


「あなたは入ったばかりだから知らなかったわね」


 柚葉は読んでいた本を閉じて話す。


「まず、処刑人について話す前にあなたが勉強した成果を聞きましょうか」


「勉強の成果ですか?」


「ええ、内容はスキルホルダーと未確認についてよ、しっかり勉強したかしら?」


「はい、たくさんしました」


「そう、ならまずは未確認について説明をお願いするわ」


「はい、未確認とは突然この世界に現れた巨大生物達で人間を襲い建物を破壊して暴れまわる生物達で世界中の軍事力を使っても全く歯が立たず大きさは建物ほどで世界中で確認されているけど見た事もない生物だから、総称して未確認と呼ばれています」


「正解よ、さらに付け加えるなら集団で行動していても知能が少なくただ暴れるだけしかないから連携ができないと言うのも現在確認されている未確認の特徴ね」


「あ、そうでした」


「でも、基本的な部分はしっかり説明できてるわ、それじゃ次はスキルホルダーについてね」


「はい」


 由奈はスキルホルダーについての説明をする。


「スキルホルダーは未確認に対抗するために存在する少女達、つまり私達の事ですね、実験により作られた人間兵器で当初は男性と女性で試したのですがどうしてか男性は拒絶反応を起こしてそのまま亡くなってしまい、女性にしか適合できないと言う事がわかりスキルホルダーは女性でしかも若ければ適合率が高く十五から十八歳くらいが一番成功率が高い事が確認されてます」


「ええ、続けて」


「スキルホルダーになった少女達は高い身体能力を経てしかも一つスキルと呼ばれる能力を手に入れます、まるで漫画のキャラみたいですね」


「ええ、その通りよ」


「スキルは戦闘向きのものもあれば戦闘向きじゃないものもあり、未確認と戦うのは、戦闘向きのスキルを持っている少女達で戦闘向きじゃないものはこうして基地の中で情報収集や武器の製造、事務係などと言ったサポートに徹していますね」


「そうよ、でもスキルホルダーの少女達が人間を捨てたと言われているわ、その理由もわかるかしら?」


「はい、スキルホルダーになった少女達は身体能力が高くなって未確認とも戦えるようになりましたがその代償なのか副作用なのか少女達は歳を取らなくなってしまい見た目が少女のままなんですよね?」


「そうよ、今ここにいる少女達も実年齢が見た目よりも高い子がたくさんいるって事、老いる事なく若さを保てるのは一見良いかもしれないけど一般人からすればバケモノみたいなものよ」


「だから私達スキルホルダーは一般人が一人もいないここに住んでいるんですよね?」


「ええ、それと元々私達は普通の少女だったから当然家族もいたわ、でもスキルホルダーの適性が出たらもう家族とは会えない、だから家族達には死んだ事にされてるわ」


「私も家族と離れるのは辛かったみたいなのでスキルホルダー達も家族の思い出があるのが辛い子達は記憶から家族の思い出を消した子もいるそうですね、私もその一人です、そして私達は家名も捨てて下の名前で呼び合ってますよね?」


「ええ、そうして私達スキルホルダーは誕生したわ、ちなみにあなたのスキルはとてもレアだから重宝されているわ」


「はい、私のスキルは『無限のエネルギー』常に私の身体から何かのエネルギーが無限にあふれているみたいですね、私自身はわかりませんけど」


「ええ、しかもあなたのそのスキルは他のスキルホルダーのスキルをレベルアップさせてくれる経験値だと言う事がわかったためあなたのそのつけている首輪を伝って私達の指輪に流れて来るのよね、それによって今こうしている間も私達のスキルはレベルが上がっているわね」


 柚葉は指にはめている指輪を見せて言う。

 そして他のスキルホルダーの少女達も指に同じ指輪をはめている。


「しかもあなたの感情の高ぶりによって流れる経験値は多くなっていくわ、でもそうすると指輪をはめた私達にも大量の経験値が流れて来るからその反動で落ち着かない状態にもなるわ、だから毎日夜寝る前に大量の経験値を得るための運動をしているのよね?」


「はう、お姉様恥ずかしいです」


 イタズラな笑みを浮かべる柚葉の言葉に顔を真っ赤にした由奈は両手で顔を覆い隠す。


「由奈、未確認とスキルホルダーについてはしっかり理解しているみたいね。偉いわ」


 柚葉は由奈の頭を優しく撫でて由奈は照れてしまう。


「さて、ここで最初の処刑人についての説明をするわね」


「あ、そうでした、すっかり忘れてました」


「ふふ、未確認は世界中に存在するつまりスキルホルダーも世界中に存在するわ、それぞれの国で未確認と戦っているけれど中には他国を出し抜いて自分達の国が得をする事を考えている者達もいるのよ、そのため他国から応援で来てくれるスキルホルダーもスパイの可能性があると言う事ね」


「世界が大変なのにどうして力を合わせようと考えないんですか?」


「プライドや権力、財力に軍事力、それらが自分達の国が優れている他の国に自分達の力を見せつける手柄を自分達が手に入れるなどと言ったらきりがないわね、とにかく自分達が得をしたいと考える強欲な考えを持つ者が上の立場にいるのよ、特に日本のこの基地は世界で一番戦績が良いから他国の者達がスパイを送り込んで情報を得ようとしているのよ、しかも厄介な事に他国だけでなく自国の者達のスパイもいるわね」


「同じ国なのにスパイがいるんですか?」


「同じ国でも組織はここだけじゃないからね、戦績が群を抜くと自国でも敵を作りかねないのよ、全く世界の平和のためにと言っておきながらくだらない事するわね」


 ここまで言って柚葉は紅茶を飲み一息つく。


「当然この基地にもスパイがいるわ、昨夜殺された少女がそのスパイだったのよ、だから処刑人が動いた、他国や自国のスパイだと判明された時その者達が情報を送る前に始末するスキルホルダーがいるのよ、でもそのスキルホルダーの姿を見た者は誰もいないわ」


「誰もいないって、監視カメラにも映ってなかったのですか? 確か色々な場所に監視カメラがあるはずなんですけど」


「その監視カメラには何も映っていなかったのよ、しかも全ての監視カメラにね」


「え?」


「念のため超スピードで移動するスキルじゃないのかと思って最大までスロー再生して見たけど何も映ってなかったのよ、透明化のスキルかもしれないからサーモグラフィにして見たけど体温も何もなかったから本当に知らないうちに殺されていたのよ」


「カメラに映らないほど速いわけでもなく透明になるでもない、まさか幽霊なんですか?」


「そうね、まさに幽霊の仕業と言っても良いわね、人知れずスパイだと判明したら誰にも気づかれずに始末する、そうしていつしか処刑人と呼ばれるようになったわ」


「一体誰なんでしょう?」


「そうね、誰だかわからないけど、わかるのは組織の裏切り者だとバレたら確実に殺されると言う事だけね」


「私も気をつけないと」


「ふふ、あなたは問題ないでしょ? スパイですらないんだから」


「あ、そうでした」


「ふふ、さあ、今日も頑張るんでしょ? たくさん食べておかないとね」


「はい、ところでお姉様はその量で足りるのですか?」


「私は少食派でね、これくらいで十分足りるわ」


 柚葉と由奈は朝食を食べ終え今日の仕事に向かうのだった。







「理事長、これが処刑人が回収したメモリです」


 秘書の八波が理事長にメモリを渡し理事長は中のデータを確認する。


「これは、この基地の少女達の情報が細かく調べられているな」


「慎重に行動していたのでしょうね、これだけのデータをよく集めたものです」


「彼女はアメリカ支部から来てくれた子か、真面目な子だったのに残念だ」


「こちらには処刑人の彼女がいます、いい加減にここにスパイを送っても無意味だと気づいてほしいのですが、わかってもらえませんね」


「人間同士で争いをしている場合ではないのに、いたずらに我々のために人間を捨てて戦ってくれる少女達が死んでいくのは辛いな」


「どうか気に病まないでください、あなたが私達を大切にしてくれている、私達はそれだけで救われているのですから」


「私なりのけじめだよ、さて今日も仕事を始めようか」


「はい」


 今日も色々な所で未確認を倒すために動き出す一日が始まる。


 

読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。

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