47 得体のしれない
「何でわかったのよ」
イリスは柚葉に問う。
「気配で丸わかりなのよ」
「気配って結構離れてたのにわかるものなの?」
「スキルホルダーになる前から命の危険と隣り合わせな生活をしていたから気配には凄く敏感なのよね」
「ふーん」
「ところであなたは誰かしら? 新手のネームドかしら?」
「正解、私はイリス」
「もしかしてあなたがさっきのナンバーズを強化させる薬を作ったのかしら?」
「ええそうよ、よくわかったわね」
「ただの消去法よ、まさかこんなに早くバラすなんて思わなかったわ」
「別にバレたところで困らないし」
「随分余裕ね、何か企んでるの?」
柚葉の問いにイリスはキョトンとした顔をしたらすぐに小さく笑う。
「ふふ、何も考えてないわよ、だって見つかるなんて思ってなかったんだから」
「そう、考え過ぎたわね」
「何アンタ戦うの?」
「あなたが望むならそうするけど」
柚葉がナイフをつき出すとイリスは戦う意思がない事を示すために両手を挙げる。
「今は遠慮しておくわ、まだ私が戦う準備ができてないから」
「そう」
イリスが戦う意思がないと知った柚葉はナイフを下す。
「いや、アンタ普通に戦わないの? 私敵だよ?」
「戦う意思のない相手を襲うほど私は未確認に対して復讐心があるわけじゃないからね」
「アンタ、おかしな考えを持ってるわね、普通敵同士でそんな事言う奴なんて少ないわよ」
「そうね、でも戦う意思がない者と戦うのは乗り気がしないのよね、あなた今から戦う気になれない? そうすれば私もあなたを殺せるんだけどね」
「何? アンタ私に勝てる気でいるの?」
イリスが少しイラつきながら柚葉に言う。
「試して見る?」
一方の柚葉は余裕な笑みを浮かべて言う。
「はあ、アンタと話してると調子狂うわね、良いわ今日はこれで退いてあげるけど、私をここで倒さなかった事後悔しないでよね」
「そうね、そうなったら見境なくあなた達を・・・殺してあげるから安心しなさい」
「っ!!?」
殺して以降の言葉の時だけ柚葉の目の色が変わった一瞬イリスは全身に来る寒気を感じた。
「とにかく、私は帰らせてもらうわ」
「ええ、次に会う時が戦いの時ね」
イリスが帰るのを柚葉は何もせずにただ黙って見ているのだった。
「あいつ、本当に何なの?」
柚葉の姿が見えなくなるくらい歩いたイリスは近くの壁に背を預け座り込む。
「まさか私が人間相手に恐怖を感じるなんて、いや、あいつが特別なだけよ」
イリスは自分の考えを否定するがそれでも柚葉に対して恐怖心を持ったのは確かであるが人間相手にそう感じたのがどうしても認めたくないと言う思いもと言う複雑な感情が起きていてそれを払拭するかのように壁を強く叩く。
「認めたくないけど、今あいつとは絶対に戦わない方が良い、理屈とかじゃなく私の直感がそう言っている、もうすぐアレも完成するしそろそろあたし自身も動くか」
そう言ってイリスは立ち上がり歩き出すのだった。
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同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。




