34 仲間を救うために
「八波君」
「行かせてください、このままだと突破されてしまいます」
「しかし」
「そんなの許可できるわけないでしょ!!」
いつも人をからかうような態度を取っている玲子が声を荒げる。
「確かにこのままだと楓ちゃんも持たないし、蘭華ちゃん達も押されているし他の子達も倒れてピンチだけど、それでもあなたは行かせられないわ!!」
「なら、他に何か手があるのですか?」
「それは、でもあなたはまだ完全に治っていないのよ、今は柚葉ちゃん達戦闘系のスキルを持っている子が増えたからあなたは出撃せずに身体も治って来ているけど、それでもまだ無茶はダメよ、これは医師としてそしてあなたの友人として言っているのよ、それに柚葉ちゃん達が戻って来れば」
「それだと間に合いません、柚葉さん達が行った場所からこの基地まではどんなに急いでも数時間は掛かります」
「でも、柚葉ちゃんのスキルがあれば」
「それも無理です、柚葉さんのスキルは使う時間が長ければ長いほど柚葉さんに掛かる体力の消耗が大きくなってしまいます、普通にしていれば一日以上発動していても大丈夫でしょうが数時間も休みなく移動しながら発動すれば、ついた頃にはもう戦えなくなっている状態かもしれません」
「そうだったわ、だからあの子は戦いの時あまりスキルを使わないのよね、相手を仕留め損ねた時を考えて戦っているのよね」
「ならば、私が行って戦いを終わらせます」
「でも」
「理事長、お願いします、私に行かせてください」
「・・・・・・玲子君、今八波君が戦えるリミットはどれくらいかね?」
数秒の沈黙の後で理事長は玲子に問う。
「・・・・・・もう何年も戦わずに治療していたからだいぶ回復しているけど、それでも一時間が今の八波ちゃんが戦っても大丈夫なギリギリの時間よ」
「そうか、八波君」
「はい」
「一時間だ、一時間だけ君に出撃命令を出す」
「ありがとうございます、理事長」
「ただし、一時間を経過したら例え敵を殲滅していなくても強制的に君を抑える、だから一時間以内に殲滅するんだ」
「わかりました、必ず殲滅させます」
「頼む」
理事長の了承を得た八波はすぐに向かうのだった。
「くっ、もう限界か」
敵の総攻撃を受けている楓の城壁もそろそろ限界に近づいていた。
「だが、ここで私が倒れるわけには」
「楓さん、もう少しだけ耐えてください」
「え?」
楓が振り向くとそこには八波の姿があった。
「八波?」
「この攻撃もすぐに終わらせますので、もう少し城壁を維持してください」
「はあ、はあ」
「もう限界みたいだな」
リンネと交戦していた蘭華だがもうかなり消耗している。
「蘭華様、うっ」
蘭華を助けようと動く初音だが彼女も戦いでかなり消耗している。
「さすがに、マズいな」
湊も消耗していて限界を迎えていた。
「終わりだ」
(ここまでか)
「皆さん、よく頑張って持ちこたえてくれました、後は任せてください」
蘭華が諦めようとしたその時戦場に八波が現れたのだった。
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