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28 大停電

「これまで、二度ネームドと遭遇しましたが、どちらも大して戦わずに向こうが退いていると言う感じですね」


 報告書を見ながら八波が言う。


「報告を聞く限りアドメラと言うネームドは自分の配下を大切にしている性格のようだな」


「未確認にも仲間意識があるようですね」


「対話で解決できればそれが一番平和的な解決方法だがそれはただの甘い考えにしかならないな、特に戦争においては」


「お互いに敵と認知し命の奪い合いをしてきました、今更対話など誰も望まないでしょう」


「その通りだ、だからこそ戦うしか解決方法がない」


「はい、戦うしかありませんね、そうしなければ大切な命を失う事になります」


「その通りだな」

 

 そして二人は次の戦いに備えるために報告書を整理するのだった。



「姐さん、次は俺に行かせてください」


「062か」


 アドメラに自らが行く事を志願するナンバー062道具型モデル電球。


「その意気は買うが奴等は甘くないぞ、027と047も深手を負ったからな」


「俺は油断などしない」


「良いぜ、なら行って来な」


「やってやる」


 アドメラの許可を貰った062は出撃するのだった。


「さて、そろそろいつものを始めましょうか由奈」


「は、はい、お姉様」


 柚葉に言われ由奈は頬を赤く染めて答える。

 柚葉が由奈に触れた瞬間事件が起きる。


「あら」


「急に電気が消えましたね、お姉様」


 部屋の電気が突然消え出す。


「停電かしら?」 


 柚葉はすぐに電気のスイッチを入れるが電気は消えたままである。


「やはりつかないわね」


「お姉様、外も電気がついてないようです」


「停電ならそうでしょうね、でも変ね停電するほど今日の天気は悪くないし、ブレーカーが落ちたのならすぐにつくはずだけど」


 一見ただの停電に思えるが柚葉はどうにも何か違和感を感じていた。


「由奈、あなたはここで待ってなさい、少し見て来るから」


「はい、お姉様」


 柚葉は部屋の外に出てスマホの明かりを使って移動する。

 辺りに気をつけながらブレーカーのある場所へと辿り着く。


「あら? ブレーカーが落ちていない?」


 見るとブレーカーは落ちていないのに基地の中は停電になっている。

 不思議に思っていると成海と桃花が来る。


「あれ、柚葉さん?」


「ここで何をしているんですか?」


「あら、成海と桃花、停電になったからブレーカーを上げようと思ったのだけどご覧の通りよ」


「んん? ブレーカーが落ちてない?」


「落ちていないのに停電になっているなんておかしいですね」


 落ちていないブレーカーを見て成海と桃花も不思議に思う。


「これって、本当に停電なのかな?」


「そうですね、台風が来ているとか大雨が降っているとかじゃなくて何ともない普通の天気の日に停電っておかしいですね」


「どうやら、この停電ここだけじゃないみたいね」


「「え?」」


 柚葉はスマホを二人に見せる。


「え、日本中で停電!?」


「これはいくらなんでもおかしいですよ」


「どうやら電力が残っているスマホ以外の物が全て使えなくなっているようね」


「ここの基地だけでなく、スキルホルダーじゃない一般の人達の所まで停電だなんて」


「違和感を感じるのよね、これって自然災害とかじゃないと思うしかと言って人為的にこれほどの被害を出すなんて相当な数のテロと考えられるけどそんな情報は一切ない、となると考えられるのは」


「未確認ですか?」


「ええ、未確認ならこう言う大規模な事ができても不思議じゃないと思うわ」


「なら早速未確認の居場所を探さないとね、停電になっていると言う事は病院など電気を使わないと命の危険がある人達が大変な事になるからね」


「できるの?」


「この停電が未確認の仕業ならおそらく日本中の電力を集めていると思って良いだろうね、だとしたら電気がついている場所がどこかにあるはず、ちょっと待ってて」


 成海は小型のパソコンを起動させて打ち始める。

 

「あった、ここだけ停電になっていないわ」


「ここは、私達スキルホルダー達が住む場所と一般市民が住む場所の中間ですね」


「通りで日本中が停電になると思ったら中心部分なら納得か」


「私が行くわ、こうしてる間にも命の危険になっている人達がいるようだしね」


「一人で大丈夫なの?」


「私のスキルを使えば時間の問題は解決するでしょ? 行ってくるわ」


 柚葉はスキルを使い自分以外の時間を止め停電の原因になっている場所に向かうのだった。






「ふふふ」


 停電の原因が起きている場所でナンバー062は電力を吸収していた。


「真っ向から戦う必要などない、人間達は電力に頼って生きている、ならその電力を全て俺が吸収すれば人間など一瞬で終わりだ」


「そう、あなたの仕業だったのね」


「!?」


 062は振り向くとそこには柚葉が立っていた。


「お前、いつの間に」


「あなたが国中の電力を吸収していたのね」


「わかったからどうした? お前一人でかなうと思うのか? 俺はこの国中の電力を吸収して強くなってるぞ」


「関係ないわ」


 そう言って柚葉は一瞬で062の背後に立つ。


「もう終わったから」


「何ぃー!!?」


 062の身体は切られてそのまま倒れる。


「ぐ、うう」


「あら、仕留め損ねたかしら? 少しイラついてたから手元が狂ったのね、まあいいわ、すぐにとどめを刺してあげる」


 柚葉はナイフを構えて062に近づく。


「おっと、そこまでだ」


 大鎌で飛ばした斬撃が横から柚葉に向かって来たので柚葉は後ろに下がり大鎌の斬撃を躱す。


「姐さん」


「油断したな」


「アドメラ」


「おお、あの時の」


「また邪魔をするのね」


「私の部下だからな」


「今度は逃がさないわよ」


 柚葉は一瞬でアドメラの前に移動してナイフで切り掛かる。


「うお!? あぶね!!」


「あら、避けられたわね」


 時間を止めてアドメラに接近したのに避けられた事に対して柚葉は動揺せずに笑みを浮かべる。


「お前、避けられたのに何で笑ってんだよ?」


「あら、ごめんなさい、何だか楽しくなって、少しイラついていたから」


「何にイラついてたんだ?」


「あなたの配下が停電を起こしたせいで由奈との楽しい一時がお預けになったのよ、その原因を作ったそいつには命を持って償って貰わないといけないわ」


「由奈って子が誰か知らないがお前がその子との楽しい時間を奪われて怒っているのはわかった、だが私の部下を黙って殺させるわけにはいかないんだよ」


「そう、ならあなたが私の相手をして止めてみなさい」


 柚葉はナイフを構える。


「あなた二度も現れて大して相手もしないで帰ったけど、腕に自信がないのかしら?」


「挑発のつもりか? まあ良い乗ってやるよ」


 アドメラは大鎌を構える。


「行くぞ!!」


 アドメラは地面を蹴り一瞬で柚葉との距離を縮める。


「おら!!」


 大鎌を縦に振り落とし柚葉に向かうが柚葉は両手に持ったナイフで受け止める。


「力任せに振り下ろしたのにそんな小さなナイフで受け止めるのかよ」


「振り下ろした時一番力が入らない部分を受け止めているからよ」


「そうかよ、ならこれならどうだ!!」


 アドメラは両手を上げ大鎌を高速で回転させると竜巻を生み出す。


「くらいな!!」


 生み出した竜巻を大鎌に纏い振るうと大鎌に纏った竜巻は柚葉に向かって一直線に向かう。


「そんな事もできるのね、原理はわからないけど」


 竜巻が目の前に迫っているのに柚葉は特に動揺もせずに躱そうとする。


「おっと、躱せると思うなよ」


 アドメラは大鎌の向きを変えると竜巻は方向を変えて柚葉に襲い掛かる。


「大鎌で生み出した竜巻は私の意思である程度方向を変える事ができるんだよ」


「あら、やはりある程度操れるのね、なら仕方ない」


 柚葉はスキルを使い数秒時間を止め竜巻を躱す。


「あ? どうなってんだ? 竜巻が当たったかと思ったのに」


「運が良かったのかしらね?」


「気味が悪いな、仕方ない退却するか」


 アドメラは大鎌を地面に振り下ろして砂煙を起こす。

 砂煙が晴れていくとアドメラと062の姿は消えていた。


「逃げられたわね、でもネームドの戦闘データ、少しは手に入ったわね」


 そう言うと柚葉の手元に小型のカメラを搭載した機械が戻って来る。

 アドメラとの戦闘前に飛ばしていたようだ。


「あら、電力が戻ったみたいね」


 外を見ると日本や基地に光が戻っている。

 光が戻った事を確認した柚葉は基地に戻るのだった。



 


 


 



読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。

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