26 人間達の反応
『私の名前はアドメラ、ネームドの一人だ、覚えておきな』
「これが数日前に現れたネームドと呼ばれるナンバーズよりも上の存在の未確認です」
会議で総帥と世界中の各支部長に八波がネームドの存在について説明する。
『ネームド、何も知らされていなければ普通の少女にしか見えないな』
『これが未確認達を率いている者達なのね』
『ですが、問題はそれだけではないですよ』
『その通り、まさか未確認の細胞のデータが我々人間と同じだとは、確かなデータを見せられても今だに信じる事ができませんな』
各支部長達は未確認と自分達人間が同じ存在だと言う事に驚きを隠せていない様子。
「玲子さんと検査班の細かい検査の結果によると98%人間と同じ存在だと言う事がわかりました」
『98%とはほぼ人間と言う事か』
「いえ、そうとは限りません」
『どう言う意味ですかな?』
「残りの2%は誤差のようなものだと考えてください、例えば自分と同じ人間でも身体の構造や細胞組織または遺伝子情報など全く一緒だと言う人間はいません、百人いれば百通りのデータが存在します、指紋検査とかで本人の指紋でも100%一致するとは限らない、そう言った誤差と考えれば」
『未確認は私達と姿が違うだけで同じ存在、と言う事ね』
『何と言う事だ、こんなバケモノの見た目をした連中と我々人間が同じ存在だとは』
『認めたくないのが本音ですが、ハッキリとしたデータがあるのなら、嫌でもこの現実を受け止めなければなりませんね』
『しかし、そうなって来ると我々は今まで同じ人間と殺し合っていたと言うのか』
『これからの戦いであの子達に支障が出ないか心配ね』
「それについてはご心配いりません」
『ん?』
「今回のネームドの出現で我々の基地に少女達に全てを話しましたがあまり動揺した反応は見られませんでした」
『それは、本当か?』
「はい、現にその後の任務も特に支障なく未確認との戦闘を行っていました」
「八波君の言う通り、私もその場にいました、間違いなく彼女達に動揺は見られませんでした、彼女達自身が言っていたのですが、スキルホルダーになった事によりいくつかの感情が欠如してしまったのではないかと言っていました」
『感情の欠如?』
「スキルホルダーは未確認を倒すための存在、彼女達は自分達の事を人間を捨てたバケモノと自覚しているようです、自分達を兵器と考えている者もいるそうです、スキルホルダーになった事により、恐怖等と言った感情がなくなっているのかもしれません」
『兵器だなんて、そんな』
『しかし、言われて見れば今までの戦いで恐怖で逃げ出した子達を見た事がありませんな』
『確かに我々の所にも戦いに恐怖を感じたと言う報告はなかったな』
『まさか、本当にスキルホルダーになると恐怖等の感情がなくなるのか』
『人間離れした強い力を手に入れた代償と言う事ですね』
「まだそうと決まったとは言えません、もしかしたら我々の所だけかもしれない可能性がありますから、まずはレアスキル持ちの少女達に報告をした方がよろしいかと思います」
『なるほど、確かにそうかもしれないな』
理事長の意見に各支部長達も頷く。
『それにしても、ネームドは何体いるのだろうか?』
『確かにこの映像を見るに私達と言っていたからこれ一体だけではないわね』
『しかも、実力もまだ未知数だからどれくらいの強さなのか判断できませんな』
『総帥はいかがお考えですか?』
全員が総帥のモニターに目を向ける。
『現時点でネームドの強さは未知数ですのでそれについては考えても仕方ありませんのでそちらの方は今後の戦いでデータを取っていきましょう、それよりも優先すべきは戦っている少女達に人間と未確認が同じ存在だと言う事を伝える事です、竹本支部長の所は全員真実を伝えてもその後の戦いも今まで通りに戦えたと言う事ですね』
「はい、彼女達には特に動揺はなく今まで通りに戦えてたと報告を受けています、そうだな八波君?」
理事長の言葉に八波は頷く。
『そうですか、では各支部長達にも少女達にこの情報を伝える事をお願いします、とは言えいきなり全員ではなく竹本支部長がおっしゃった通りまずはレアスキル持ちの子達から伝えて特に問題なさそうだと判断したら他の少女達にも伝えてください、そしてネームドと遭遇した場合は十分に警戒を怠らないようにお願いします、もしかしたら戦闘に特化したスキル持ちの少女でも相手にならないネームドが出る可能性もありますので、勝てないと判断した場合は即座に撤退をさせてください、生き残れば次に戦う時に対策を立てる事ができます』
『はい!!』
総帥の言葉に各支部長達は返事をする。
『では、今回の会議はここまでとします、ナンバーズより上の存在ネームドが現れた事で戦いがさらに過酷なものとなりますので、気を引き締めてください』
総帥の言葉で各支部長達は頷きモニターを切るのだった。
『向こうも本格的に動き出しましたね』
「はい」
『ナンバーズの身体の一部を調べて人間と同じ存在だと言うデータが出ましたがもしかしてネームドが現れる前にわかっていたのではないのですか?』
「さすがですね、総帥」
『でも、あなたはすぐには伝えなかった、いえ時期を待ったと言う方が正しいですね』
「やはり、お見通しですか」
『確信は持てませんでしたが今回のネームドの存在でわかりました、ナンバーズの段階では話したところで今以上の動揺や信用する者は多くいなかったと思います、だからこそ時期を待った、ネームドが現れるまで』
「その通りです、ナンバーズより上のネームドの見た目が少女の姿をしていると聞きましたので、そのネームドを映像に取る必要がありました」
『現にネームドの姿は人間の少女達と同じ姿だった、そのネームドの存在とナンバーズのデータがあったからこそ、未確認が人間と同じ存在だと言っても動揺はありましたが素直に受け入れる事ができました、当然この私もです』
「報告が遅れてしまい、申し訳ありません」
『問題ありません、むしろ私達の事を考えて報告する時期を考えてくれた事に感謝します』
「勿体ないお言葉です」
『今後もあなたを頼らせていただきます』
「は」
『では、お疲れ様でした、今はゆっくり休んでください』
そう言って総帥のモニターは切れるのであった。
「さて、八波君帰ろうか」
「はい、すでに車は手配しています」
理事長と八波も基地へと帰還するのであった。
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