12 報告
「さて、報告を始める前に、皆無事に帰って来てくれて何よりだ」
「問題ないですよ、理事長、それよりも私と桃花が行った国の支部長が言ってましたよ、私の技術を本当に無償で教わって良いのかって、こちらも何か送った方が良いのではないかと」
成海のスキルは『作成』。
物を作る事に長けたスキルであり、スキルホルダーが戦闘で使っている武器や由奈につけられている首輪や由奈の首輪を伝ってスキルホルダー達に経験値を与える指輪を作ったのが彼女である。
「それなら私が行った国の支部長も言ってました、私の剣技の腕を無償で教わって良いのかと」
刀を添えた少女が成海に続いて答える。
彼女の名は真由。
刀を武器に戦う戦闘面でのスキルホルダーである。
「うむ、それなら私の行った国もそうだったな、戦闘の指揮を教えてあげたら何も見返りはなくて良いのかと言っていたが」
軍人の帽子を被っていてマントを羽織っている少女が答える。
彼女の名は楓。
戦場で指揮を執りながら他の少女達に指示を出す戦い方をするスキルホルダーである。
「問題ない、君達が行った支部の者達は総帥の味方になってくれる者達だと思ったからね今後の友好関係を築くためにも必要な事だからな、今の内に恩を売って置くのさ」
「さすが理事長、見事な采配」
真由の隣に座る物静かな少女が理事長を称賛する。
彼女の名は紗耶香。
真由と組んで行動しているスキルホルダーである。
「さて、話を進めようまずはこちらの報告をしよう」
理事長は少女達に基地で起きた事を話す。
「まあ、大体の事情は聞いていたけどバカな連中ね、理事長が優しい内に身を引いておけばもう少し延命はできたのに、まあ遅かれ早かれ死ぬ事に変わりはなかったけど」
アメをなめながら少女が言う。
彼女の名は夜見。
机に置いてある二丁の銃を武器に戦うスキルホルダーである。
「て言うか、理事長を殺すとか良い度胸してんじゃないの、あたしが始末したかったわ」
アメをガリっと噛み砕きながら夜見は怒りを露わにする。
「おや、夜見さん怒ってるね、まあ右京さんが作った偽物とは言え大好きな理事長が殺されたら無理もないよね」
成美がからかうように言う。
「ええ、そうよ、あたし理事長大好きだもん、優しいしカッコいいおじさんって思うし」
「ありゃ、そっちの意味の好きだったのね」
「? 他にどんな好きがあるのよ?」
成美の言ってる事がわからない夜見は新しく飴の袋を外して口にくわえる。
「成海さん、いちいち絡んで理事長の話を逸らさないでください」
「あ、はい、ごめんなさい」
八波が怒気を含んだ言葉を受け成海は素直に謝罪し大人しくなる。
「まあ、君達がいない間は柚葉君が戦場で未確認達を相手に犠牲なしで済んで何よりだ」
「そうか、柚葉よ、ご苦労だったな」
「それだけでなく、裏切者達の始末もお疲れ様です」
楓と真由が柚葉に労いの言葉を送る。
「あなた達のいなかった分を埋められて何よりよ」
「我々からの報告はこんなところだ、次は君達の報告を聞かせてくれ」
「それじゃ、私から発表しますよ」
成美が手を上げて言う。
「まず、私と桃花はフランス支部に行きました、私のスキルで作った武器や道具がかなり好評で似たようなスキルを持った開発部の人達に簡単に量産化できる方法を教えてあげました、そのおかげで戦いやすくなったと感謝されました」
「なるほど」
「桃花のスキルもとても助かったと言ってました、いや~パートナーが褒められると私も嬉しいよ」
「私より先輩の方が大きく貢献してました、私は武器や道具の調整をしただけです」
「桃花はすぐ自分を低く見るよね、あなたのスキル『完全調整』だって大したスキルよ、だって武器や道具を見ただけでその人が使いやすいように調整できるんだから」
「その通りよ桃花、あなたのスキルで私の武器も自分の身体の一部のように扱えてるからね」
「ほら、柚葉さんだってこう言ってるよ」
「わかりましたから、私の話より報告です」
桃花は顔を赤くして報告を促す。
「では、私と紗耶香が向かった、イギリス支部での報告を、私はそこで剣技を教えたり、模擬戦の相手をしました」
「真由の実力は本物で性格からイギリスの少女達に人気だった、別れも惜しまれていた」
「それは関係ありませんよ紗耶香、それにあなたも人気だったではないですか」
「・・・・・・人気があるのはそう言う所だと思う」
「あ~、こっちはこうなんだね」
「どう言う意味ですか?」
成美は何となく理解したが真由はよくわかっていない模様。
「じゃあ、続いて私と初音が行った中国支部での事ですけど、問題なくお互いに良い関係を築けましたよ、食べ物も美味しかったし」
「蘭華様が美味しそうに食べていて私も嬉しい」
ドーナツを食べて説明する蘭華を見ながら初音はドーナツを持って微笑んでいる。
「なんだかんだ皆良い感じなんだね、ねえ、桃花?」
「何で私に聞くんですか?」
「うむ、最後は私の報告だな、私はアメリカ支部に行っていた、そこで少女達と連携を取り私は指示を出し未確認とも見事な連携で勝利はしたのだが」
「楓君、どうした?」
「いや、指揮官、私の考え過ぎかもしれないしあくまで戦場で私が見て感じた事なんだが」
「構わないから言ってみなさい」
「うむ、未確認の動きがどうも今までと違っていたんだ、まるで統率の執れた動きをしていたのだ」
「何だと?」
楓の言葉にその場の全員が信じられない顔をする。
未確認は今まで統率力もなくただ暴れるだけの存在だったため知能が低く連携など執れないものだと考えられていたため楓の報告は今までにない新しい情報である。
「私も最初は信じられない光景だった、だが私が戦った未確認はお互いに連携を執り仲間が次々と倒されていくと勝てないと判断したのか撤退したのだ、間違いなく統率が執れた動きだった」
「しかし、統率の執れた未確認など今まで報告にありませんでした、楓さんの報告が確かなら今までにないタイプの未確認が現れたと言う事になります」
「まだ、未確認についてはわからない事だらけだが貴重な情報だ、もう少しはっきりさせてから総帥に報告をした方が良さそうだ」
「理事長、全員の報告をまとめました」
「ああ、ありがとう八波君、では君達も疲れただろう久しぶりの我が家だ、次の任務があるまで身体を休めてくれ」
お互いの報告が終わり少女達は理事長室を後にするのだった。
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