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8 処刑人

「ん」


「目が覚めた?」


 柚葉の言葉を聞いたターニャは意識をハッキリさせると周りを見渡し自分が椅子に拘束されている事に気づく。


「ここは?」


「基地内の尋問部屋とでも言ったところかしら、スパイのあなたから情報を得るためのね」


「拷問でもするつもり? でも残念ね、そんなの意味がないわ」


「別にあなたが何もしなくても良いわ」


「?」


 柚葉の言葉が理解できないターニャは疑問に思っているとドアが開き誰かが入って来る。


「な!?」


 その人物を見てターニャは驚愕する。

 それもそのはずターニャの目の前に現れたのは自分が殺したはずの理事長と八波であった。


「君達が裏切るのはわかっていたからね、とても残念だ」


「どうして、あなた達がここにいるの!? 確かに殺したはず!!」


「その疑問には私達が答えるよ」


 理事長の後ろから現れたのは双子のスキルホルダー右京と左京である。


「あなた達」


「いやーごめんねー、私のスキルってタイピングが速くなるって言ったけどあれ嘘なんだよね」


 そう言って右京は理事長に手を触れると理事長とそっくりの姿の理事長がもう一人現れる。


「え?」


「私の本当のスキルは『複製(ふくせい)』この手で触れたものと全く同じものを生み出す事ができるスキル、最初は生み出しても僅か数分で消えてしまったけど由奈っちのスキルのおかげで今では一ヶ月もつようになったんだ」


「でも、私が殺した時は血も出てたわ」


「レベルが上がったから血液や臓器、なんなら細胞や遺伝子まで再現できるようになったんだよね、柚葉っちがあんたの切った腕の時を止めてるように」


「そこまで再現できても動かす事はできないはず」


「そこからは私のスキルよ」


 今度は姉の左京が理事長の複製に手をかざすと複製の理事長は動き出す。


「私の本当のスキルは『念力(ねんりき)』超能力みたいに自在に動かす事ができる、最初は物を少し浮かせるくらいだったけど由奈さんのスキルでレベルが上がり、今では手足のように自在に細かい動きもできるようになったわ、だから複製の理事長と八波さんを人間と同じように不自然のない動きで操作する事ができるわ」


「ちょっと待って、ならあなた達のあれは」


「そう、私の速いタイピング打ちもお姉ちゃんの資料をパラパラと見て記憶するのもスキルを手に入れる前からできてた事なんだよ」


「でも納得できない、なら声はどうしたの? 喋ってたじゃない」


「それなら、無線の小型マイクを仕込めば簡単にできますよ」


 ターニャの問いに八波が答える。


「さて、私達のカラクリがわかった所でそろそろ本題に入りましょうか」


 八波の言葉にターニャは冷や汗をかく。


「ターニャさん、あなたの情報をもらいますね」


「情報、拷問しても無駄よ」


「そんな事しなくても彼女に頼めば解決しますよ」


「え?」


「私だよ、ターニャちゃん」

 

 ターニャの前に現れたのは菜乃だった。

 菜乃はターニャに近づきターニャに抱き着く。


「ナノ?」


「ターニャちゃん、ごめんね」


 菜乃に謝罪されたターニャは疑問に思いながら菜乃の言葉を聞く。


「私のスキルって抱き着いた相手のスタミナを補給するって言ったけど、あれ嘘なんだ、こう見えて元から体力があったからあれぐらい動いても大丈夫なんだよ」


「え?」


「私の本当のスキルは『記憶探(きおくさぐ)り』対象に触れるとそれが持っている記憶を見る事ができるスキルで密着度が高い、つまり抱き着いたりすると細かい記憶まで見る事ができるの、最初は昨日の記憶とかしか見えなかったけどレベルが上がった今では私が見たい記憶をたった数秒で好きに見る事ができるようになったの」


「な!? まさか、今までスパイバレたのは」


「そう、私が毎日スキルを偽って抱き着く事で記憶を見ていたからだよ」


 菜乃はそう言ってターニャから離れる。


「記憶を全て見ました」


「どうだった?」


「理事長達の推察通りでした、ターニャちゃんはかなり深い所に関わっていましたから」


「そうか、ならもう良いだろう」


「そうですね」


 理事長達はそのままドアを開けて部屋から出て行き残ったのは柚葉とターニャだけである。


「さて、あなたはもう用済みね」


 言って柚葉はナイフを取り出す。


「な、ちょ、ちょっとどう言う事!?」


「わからないの? どうして彼女達が自分の本当のスキルを言ったのか、死人なら話しても別に問題ないからよ」


「死人」


 柚葉の言葉にターニャは震え出す。


「待ってよ、あなた私を殺すの!? 人を殺すのよ!? 私の仲間を殺した時もそうだったけどあなたには人を殺す事に抵抗がないの!?」


「ターニャ、まだ気づかないの?」


「え?」


「私のスキルが時間を停止させるスキルだって事よ、時間を停止させるって事は相手に気づかれずに殺す事もできるって事よ、監視カメラにも映らずに気づいたら殺されている、似たような事がなかったかしら?」


「監視カメラにも映らずに、まさか!!」


 ターニャはある事実に気づいてしまう。


「まさか、あなたが処刑人・・・・・・」


「ふふ」


 柚葉はターニャに笑みを向ける。

 

 柚葉が部屋から出て行き、部屋の中に残されたのは、血を流して死んでいるターニャの姿だけだった。



 


 

読んでいただきありがとうございます。

同時に投稿している作品「魔王様、今日も人間界で色々頑張ります」もよろしくお願いします。

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