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第7話「第二のエデン」

 昼休み。


 私は今日も、最早お馴染みになっている校舎裏のスペースへと一人避難してきていた。

 それにしても今日は、授業中も昼休みも何だかずっと視線を感じた。


 視線を感じるぐらいならまだいい。

 それどころか、隙あらばクラスの男子達に話しかけられたりするのは本当にしんどかった。



「みんな寄ってたかって、私の事面白がって……チクショウめ……」


 ついそんな愚痴を呟いてしまう。

 ああ、早く(エデン)に帰ってアニメ観たいな。

 そう思いながらモグモグと食べる弁当は、唐揚げ多めでちょっとだけ元気が出た。

 食べ物ってやっぱり偉大だ。


 ――とりあえず今日も光合成して、午後のパワーを吸収しようかな


 そして弁当を食べ終えた私は、今日も日課の光合成タイムと洒落込む事にした。


 心地よい風に、ポカポカと暖かい陽の光。

 まさしくここは、私にとってもう一つのエデンだった。


 しかし、そんな私のもう一つのエデンに、段々と近付いてくる足音が聞えてくる。


 ――もう、こんな所に誰よ


 仕方なく私は、見つかりたくないし重たい腰をあげてそっと隠れる事にした。

 そして、一体誰がこんなところへ何用だと、私は万引きGメンがごとく身を隠しながらその様子をそっと伺う。


 するとそこへ現れたのは、知らない女の子だった。

 そして、彼女と少し間を空けてもう一人現れたかと思うと、それは前にもここで会ったことがある美少年だった。

 見た感じ、あの美少年が女の子に呼び出されたと見て恐らく間違いないだろう。



「こ、国分寺くん、今日は来てくれてありがとう」

「あぁ、うん――」

「それでね、あの、えっと――――私!ずっと国分寺くんの事が好きでした!良かったら付き合って下さい!」


 何事かと思えば、それはまさかの告白だった。

 つまりは、この女の子は美少年――国分寺くんに告白するため、ここへ呼び出したという事だ。


 ――ど、どどどうしよう、これ絶対見ちゃいけないやつだよね!?


 そんな、まさかの告白現場に立ち会ってしまった私は、ただあわあわと身をひそめるしか無かった。

 もしここで見てる事がバレたら、絶対に不味い。



「気持ちは嬉しいけど、ごめんね」

「――え?」

「僕はその、他に好きな人がいるんだ――だから、君とは付き合えない。ごめん……」

「――そっか。うん、分かったよ。ちゃんと答えてくれてありがとう」


 残念ながら国分寺くんにフラれてしまった女の子は、それだけ言うとどこかへ走り去って行ってしまった。

 そして残された国分寺くんは、一人気まずそうな表情を浮かべながら溜め息をついていた。


 ――告白する方もされる方も、色々大変なんだな


 恋愛とかに縁のない私には、全く関係の無い話だけど。

 それでも、私から見ても可愛い女の子だったけどフラれちゃうもんなんだな。

 まぁ好きな相手がいるなら仕方ないし、人生本当に巡り会わせだよね。


 バキッ――


 そんな小並感を抱きつつ一歩下がったところ、私は木の枝を踏んづけてしまう。

 そしてこれでもかっていうぐらいクリアな音で、枝の折れる音が辺りに響き渡る。



「――え、誰?」


 そして当然、その音に驚いた国分寺くんが反応する。

 そんな、漫画のような失敗をしてしまった私は、観念してそっとその姿を現すと共に光速で頭を下げる。



「ご、ごめんなさいっ!聞くつもりは無かったんです本当です!!」


 咄嗟に平謝りする私。

 すると、突然姿を現した私に国分寺くんも驚いて飛び退いてしまっていた。



「い、いや、こっちこそごめん!先にここにたのは君なのに!」

「いやいや!それでも見ちゃったので!」

「う、ううん!あとから来たのはこっちだから!ごめん!」


 お互いに、綺麗に頭を90度下げながら謝り合う。

 こうして数秒間、頭を下げながらお互い硬直し合ったところで、何だか可笑しくなって同時に吹き出すように笑ってしまう。



「えっと、じゃあ僕はその、怒ってないので」

「え、ええ。私も大丈夫です――」

「そっか」

「うん」


 微笑み合う二人。

 根暗でコミュ障の私でも、不思議とこの国分寺くんの前では普通でいられた。

 それはきっと、私がどうこうではなく、彼の持つ雰囲気がそうさせてくれているのだと思う。



「今日もここに居たんだね」

「は、はい。ここは私のエデンなので――」

「エデン?」

「あっ!いや、その、エデンっていうのは憩いの場というか、秘密基地と言うかその……」

「あはは、面白いね君」


 慌てる私を見て、国分寺くんは面白そうに笑った。



「あのさ、良かったら名前、聞いてもいいかな?――おっと、先に自己紹介しなきゃだよね。僕の名前は国分寺彰(こくぶんじあきら)、一年三組です」

「え、あ、えっと――新田明美です。一年六組です――」

「そっか、新田さんか。宜しくね」

「は、はい――こちらこそ――」


 自己紹介をし合う私達。

 私なんかの名前を知れたのがそんなに嬉しいのか、国分寺くんはニッコリと微笑んでいた。


 そこで丁度、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。



「あ、ヤバイ昼休み終わりだ。戻ろうか」

「そ、そうだね」


 こうして私は、国分寺くんと一緒に教室へと戻る事になった。

 隣を歩く国分寺くんの横顔は、やっぱり物凄く美少年って感じだった。


 ――成る程確かに、これだけ整ってたら女の子から告白したくなるのも納得だな


 でも、こんな国分寺くんにもどうやら好きな相手がいるようだ。

 それがどんな相手なのか、私はちょっとだけ気になったのであった。



第二のエデンに現れたのは、あの時の美少年でした。


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