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第13話「美少女と美男子」

 理由はよく分からないが、国分寺くんが立ち去って行ってしまったため、私と西沢さんの二人が取り残されてしまう。

 しかし、突然西沢さんと二人きりになってしまった根暗な私は、この状況どうしていいのか分からない。

 しかも西沢さんは、たった今国分寺くんに告白をしようとしていたのだ。

 その事が尚更気まずさを増しており、私は嫌な汗が流れ落ち行く感覚を味わう……。



「――えっと、ごめんなさい」

「えっ!?い、いや、私の方こそ、その」


 謝らないで西沢さん、貴女は悪く無い。

 悪いのは、あの場面で木の枝を踏んづけた私の方だからっ!


 しかし、そう言おうにも根暗な私は中々上手く言葉に出来ない。

 こういう時、自分のポンコツさ加減が本当に嫌になってくる。



「――新田さん、ですよね?」

「え?は、はい、新田です!し、知ってるんですね――」

「うん、有名だから――」


 有名ってなんだ?と思ったけれど、私は自分を客観視することぐらいちゃんと出来る系女子なのだ。

 だから、あれだけ髪を伸ばしていつも一人でいた私が、逆に目立っていたことぐらい分かっているのだ。

 しかし、よく今の私が同一人物だと気が付いたなという点では、この西沢さんは中々侮れない女の子なのかもしれない。



「新田さんは、いつもここにいるの?」

「あ、うん、晴れた日はここでお弁当食べてて――」

「そっか、教室にいると色々大変そうだもんね」


 そう言って微笑む西沢さん。

 そんな初めて見る彼女の微笑みは本当に可憐で、美少女って凄いと分からされてしまう。



「ねぇ新田さん。新田さんは、本当に国分寺くんとは何もないの?」

「え?な、ないですっ!本当に何も!」

「そっか――うん、だったらまだ可能性はあるよね」


 可能性?何の話だ?

 その訳の分からない話に、私が追い付けていない可能性ならほぼ100パーセントですけど?


 そう思っていると、微笑みながら西沢さんが近づいてきた。



「ねぇ新田さん、わたしもここでお弁当食べてもいいかな?」

「え?ど、どうして?」

「わたしも色々面倒なことがあるの。分かるでしょ?」


 分かるでしょと言われても、全然分からないんですけど?

 私はただ、クラスにいると男の子達が一々構ってくるから――あ、なるほど。

 私のそれとは違うだろうけど、こんだけ可愛い西沢さんならきっと私以上に大変に違いない。


 そう思った私は、何だか仲間を見つけたような気持ちになってくる。



「ま、まぁ、私は構わないと言うか、その、ご自由に――」

「本当?ありがとう!私の名前は西沢茜って言います。よろしくね新田さん!」

「こ、こちらこそ」


 そう言うと、西沢さんはニッコリと微笑んで教室へと戻って行った。

 残された私は、とんとん拍子に話が進んで行ってしまった事に少し戸惑いつつも、西沢さんからは悪い印象を受けなかったし、もしかして初めての同性のお友達が出来たのかもしれないと思うと一気にテンションが上がってきた。


 ――あんな美少女とランチ、中々悪くはないじゃろうて


 うへへ、明日から楽しみが増えちゃったなと上機嫌になった私は、すっかりさっきの出来事なんて忘れてルンルンとした気分で教室に戻ったのであった。



 ◇



 その日の夜、夜ご飯を食べている時のこと。

 意味もなく映されているテレビを見ていた私は、思わずお味噌汁を吹き出しそうになってしまう。



「ちょっと、何よ汚いわね……」

「いや、テレビに!」

「テレビ?――ああ、この俳優ちょっと人気出て来てるらしいわね。なに?あんたこういうのが好きなの?」


 そう言って、今日も今日とて私のことをおちょくってくる姉。

 そんな姉に苛立ちながらも、私はそうじゃない事をちゃんと告げる。



「違うし!この人、同じ学校なの!」

「へぇ、そうなんだ。でもなんで、同じ学校ってだけであんな反応するのかしらね」

「は、話するしっ!」

「あんたが?こんなイケメンと?ないわー」

「ほ、本当だもんっ!」

「ふーん、仲良いんだ?」

「い、良いし?」


 引くに引けなくなる私。

 姉に馬鹿にされるのだけは、いつだって許せないのだ。

 それに今回ばかりは、別に嘘なんてついていないから尚更だ。



「じゃあ、今度連れてきなさいよ」

「――は?」

「仲良いんでしょ?そしたら信じてあげるわよ」

「い、いや!それとこれとは!」

「嘘なんだ」

「嘘じゃないし!い、いいよじゃあ連れてきてあげるっ!」


 絶対信じていない姉にイラッときた私は、つい勢いで大見得を切ってしまう。

 そして言ってしまったが最後、ニヤリと嫌な笑みを浮かべる姉。



「じゃ、約束ね。明美のそれが嘘じゃないことを願ってるわよ」


 そう言う事だけ言って姉は、ご馳走様と自分の部屋へと戻って行ってしまった。

 そんな姉妹のやり取りに、お母さんは面白そうに微笑んでおり、お父さんは何とも言えない表情を浮かべていた。



「――嘘じゃないし。こうなったら本当に連れて来てやるからな」


 覚えてろよお姉ちゃん。

 そう強い決心と共に、こうして根暗クイーンの私にとって攻略難度SSS級ミッションが課せられてしまったのであった。




乗せられやすさもSランクな明美さんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 相変わらず自己認識がいかんなあ。 それで、家族に合わせようとするとは。きっと本人も周りも誤解するなあ。
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