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第12話「遭遇」

 この学校には、攻略難度SSS級美女がいるらしい――。


 その噂を聞きつけた私は、完全なる興味本位からその美女とは一体誰なのかをリサーチする事にした。


 まさか現実で、そんな異世界転生者みたいな異名を持つ人とは一体どんな存在なのか、このラノベマイスターである私は興味しかなかったのだ。


 そして、これまでは全く気にする事なんて無かった周囲の人間を観察し調査に調査を重ねた結果、私はついに二人にまでその候補を絞る事に成功した。


 一人は、この学校の生徒会会長だ。

 名前は、如月颯希(きさらぎさつき)先輩。クラスは三年一組。

 黒髪ストレートがトレードマークで、背も高くスラリとスレンダーなそのスタイルはまるでモデルのようで、まさにラブコメヒロインに出てきそうな美人先輩だ。

 普段クールそうに見える彼女だが、もし彼女に主人公くんと二人きりの時にだけデレデレになるような属性でもあれば百点満点といったところだ。


 そんな彼女が、実は攻略難度SSS級の美女だと言われれば、確かに全然あり得る話だなと思える程この学校において特別な存在だった。


 そしてもう一人は、意外にも同じ学年にいた。

 名前は西沢茜(にしざわあかね)さん。クラスは一年七組。

 彼女は生徒会長の如月先輩とは真逆なタイプで、背が低くてぷっくりとした可愛らしい感じの女の子だ。

 ショートヘアーがよく似合い、同性の私でも守ってあげたくなるような愛くるしさが感じられる小動物系美少女で、女の私でも小一時間愛でたくなる程可愛らしかった。


 そんな彼女も会長と同じく、例の攻略難度SSS級と言われても全く違和感なんて無かった。


 というか、私はこうして同性をウォッチングしてみて気付いた事がある。

 それは、彼女達以外にも同性の私から見ても美人だと思える女子は多く、もしかしたらこの学校のレベルって実は物凄く高いのかもしれない。


 まぁそんなわけで、その美女達の中から候補者をその二人にまで絞る事までは出来たのだが、残念ながら私に出来るのはここまでだった。


 ――とりあえず、例の美女はそのどっちかの事でまちがいないだろうし、あとはもうどうでもいいかな


 まさか本人に聞いて回るわけにもいかないし、そう思ったら私の興味はあっという間に薄れてしまったのであった。

 まぁあの二人のどちらかが、この学校の攻略難度SSS級美女と見て間違いないだろうから、それ以上は正直どっちでも良かった。


 ――あーあ、私も異世界に転生したいなぁ


 今は昼休み。

 弁当を食べ終えた私は、久々に晴れ渡った空を見上げながらぼんやりとそんな妄想を思い浮かべる。


 ちなみに今は昼休みだが、あの日以来ここエデンに国分寺くんが姿を現す事は無くなっていた。

 やっぱり傷つけちゃったかなとか思わなくもないが、これでいいのだ。


 そもそも私なんかと一緒にいる必要もないし、周囲から変に思われるのもお互い迷惑でしかないのだから。

 それこそ男版異世界転生者みたいな国分寺くんなら、私なんかとお昼を食べなくても引く手あまただろうと思っていると、遠くから微かに足音が聞えてくる。


 ――え、まさか国分寺くん!?


 丁度考えていた人が現れたかもしれない状況に、私はテンパってしまう。

 咄嗟に壁の裏に身を隠すものの、その足音はこちらへ現れる曲がり角の手前で止まったのが分かった。


 一先ずは無事な事を確認し、ほっとする。

 しかし、このエデンの近くに人がいるというのはどうにも落ち着かないため、気になった私はそーっと近くへやってきた人たちの様子を壁の裏から伺う。


 するとそこには、やはり国分寺くんの姿があった。

 そして国分寺くんの他にもう一人の姿があり、その光景を見て私はとても驚いてしまう。


 ――あれは、西沢さんっ!?


 そう、国分寺くんと一緒に居るのは、私が攻略難度SSS級美女だと目を付けていたあの美少女だったのだ。

 なんでこの二人がこんなところに――そう思った私は、気付けばそんな二人から目を離せなくなってしまっていた。

 一体今ここで、この異世界転生レベルの美男美女の二人は何をしようというのか。



「あの……国分寺くん、私!」


 すると西沢さんが、思い切った様子で国分寺くんに話を切り出す。

 その様子を見て、流石の私でもようやく二人がここへ何のためにやってきたのか察しがついてしまった。


 それはこの間のデジャブのようで、こうして覗き見していいものでは決してなかった。

 だからその事に気付いた私は、前回の失敗の反省も踏まえてそーっと慎重に右足から後ろに引っ込める――。



 バキッ!


 オウ、ノー。

 ドウシテイツモ、アナタハソコニイルノデスカ?


 またしても、木の枝を踏んづけてしまう私。

 そしてその音は辺り一帯に綺麗に響き渡ると、当然二人にも気付かれてしまう。


 こちらを振り返る国分寺くんと、西沢さん。

 二人の視線が私の姿をバッチリ捉える。


 そして二人共、明らかに驚いた表情を浮かべていた。



「――えっと、その……て、天気良いですね」


 パニクった私の口から出たのは、必殺の天気デッキだった。


 困った時には、天気の話!これで間違いなし!



「――えっと、そうだよね。ここは新田さんの場所だからね」

「ふ、二人はお知り合いなんですか?」

「え?う、うん、まぁ」

「ど、どういう関係なんですか!?」


 焦った様子で、私達の関係を聞いてくる西沢さん。

 どうと言われても、ちょっとだけここで一緒にお弁当を食べた仲でしかない。

 本当に、それ以上でもそれ以下でもないのだ。


 だからここは、覗き見してしまった手前私からキッパリと真実を伝えてあげる事にした。



「な、何も関係ありませんっ!ほぼ他人ですっ!はいっ!」


 だから安心して西沢さん。

 私みたいな根暗クイーンのことなんて気にせず、貴女は貴女の恋に向き合って!


 そんなエールを籠めつつ、私はきっぱりと告げた。

 すると西沢さんは、分かりやすくほっとした表情を浮かべていた。


 ――良かったぁ、どうやら変な誤解されずに済んだみたいだ


 そう私もほっと安心していると、西沢さんの隣で俯く国分寺くんの姿が視界に入った。



「そう、だよね……。ごめん、ちょっと行くね」


 そして国分寺くんは、そう言葉を残して一人ここから足早に立ち去って行ってしまった。

 その表情は何故か悲しそうにも見えて、その理由が全く分からなかった私はまたしてもテンパってしまうのであった――。



そこに枝がある限り――彼女は何度でも踏み続ける――。


枝を踏むことに定評のある新田さんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] きっと、動かなかったら今度は携帯が鳴りだしたりするんだ… 想定した相手は、彼女が振った相手に想いを寄せるような人。到底SSSではありえない… とりあえず、鏡を見たら、ということでしょうか。…
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