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第10話「雨」

 それからも私は、何故か小木曽くんや岸田くんに話しかけられる日々を送っていた。

 そして昼休みになると、これまた何故か私のエデンへとわざわざやってくる国分寺くん。


 そう、気が付けば私の周りには、何故かイケメンで溢れているのであった。


 ――いやいや、少女漫画のヒロインかってのウケる


 客観的に見たら、きっと私は何とかサーの姫みたいに思われてたりするかもしれない。

 だったら、こんなに実体の伴わない姫なんてただただ残念すぎるって話だった。

 そして何より、そんな姫になりたくもなければ、恋愛のれの字も無い私にとって不名誉でしかなかった。


 まぁそれは流石に私の考え過ぎかと思いながら、私は窓の外に目を向ける。


 窓の外は、生憎のどしゃぶり状態。今日は朝からずっとこの調子だった。


 ――あーあ、今日はエデンはお預けかな


 流石にこれでは、エデンでお弁当を食べるのもしんどい。

 そう思った私は、今日のところは渋々教室でお弁当を食べるしかないかと諦めていた。


 そして四限が終わり、お昼休みがやってくる。

 私は仕方なく、久々に自分の席でお弁当を食べる事にした。



「あれ?新田さん今日は教室なんだ?」


 そんな私に声をかけてきたのは、岸田くんだった。

 そしてその手には何故かお弁当が握られており、空いた私の前の席に腰掛けるのであった。



「――えっと、そ、そうですけど」

「よし、じゃあ一緒に食べようぜ」


 え、いきなり何言っちゃってるのこの人。コミュ力化け物ですか!?


 そんな、まさかの私とお弁当を食べようとする岸田くんに、私はただ慄いた。

 そしてそんな私達の元へやってくる一人の人物。



「おい、新田困ってるだろ」


 小木曽くんだった。

 なんやかんや小木曽くんは、同じ中学出身の(よし)みだろうか、こうしていつも私の事を気にかけてくれているのかこうして助けてくれるのだ。


 そして最早お馴染みになりつつある、岸田くんと小木曽くんのいがみ合いが始まる。


 ――ああ、もう勘弁してよ……どっか濡れないところに移動しようかな


 そんな事を考えていると、そんな私達の元へ近付いてくるもう一人の人物。

 そしてその人物の登場に、教室中の注目が集まる。



「今日は天気、残念だったね」


 誰かと思えば、国分寺くんだった。

 今日も圧倒的美少年スマイルを浮かべながら、私に話かけてきたのである。


 そんな国分寺くんには、クラス中の視線が集まっているのが分かった。


 疎い私も、あれから一応国分寺くんについては軽く調べたのだ。

 そして分かったんが、一言で言えば国分寺くんは普通に凄い人だった。


 どうやら若手の俳優の中では有望株とされているようで、去年からじわじわと人気が伸びてきており、そんな国分寺くんは学園を飛び越えてお茶の間のアイドル的存在なのであった。


 だから、そんな国分寺くんがいきなり教室へ現れた事に、クラスの皆目を丸くして驚いていた。

 そしてそんな国分寺くんが、私なんかに話しかけてきているという事に、完全に教室内はざわついてしまう――。



「お、おい、新田さんに何か用か?」


 普段グイグイくる岸田くんも、国分寺くんの事は当然知っているのだろう。恐る恐る声をかける。



「あ、うん、新田さん今日はどこでお昼食べるのかなって思って」


 しかし岸田くんの問いかけに、国分寺くんはニッコリ微笑みながら普通に答えた。

 そして手にしたお弁当を掲げると、これから一緒に食べるようなジェスチャーをする。



「え、それじゃまるで、普段から一緒に――」

「うん、ここ最近は一緒に弁当を食べさせて貰ってるよ。ね、新田さん」


 いやいや、そこで私に振らないで――。


 確かに一緒に食べているが、別に誘ったわけでもない。

 ただ毎回わざわざエデンへやってくる国分寺くんの事を、私は受け入れたというか拒否しなかっただけというか――いや、そうなると一緒に食べる仲になるのか?


 ――駄目だ、友達という友達のいなかった私には、その辺の匙加減がよく分からない


 ただ、国分寺くんは嘘をついているわけではないため、私は恐る恐る頷いた。


 すると、岸田くんに小木曽くん、それにクラスのみんなは一斉に驚いてしまう。

 そしてそんな周囲のリアクションに、私も一緒に驚く。



「ていうことで、隣いいかな?」


 しかし国分寺くんは慣れてるのか、お構いなしだった。

 そう言うと、そのまま私の隣の席に腰掛けるとお弁当を広げ出す。


 そして何を思ったのか、小木曽くんもいつもの輪から外れて逆サイドのお隣の席に座ると、自分の弁当を広げ出した。

 こうして、前に岸田くん、両サイドに国分寺くんと小木曽くんという謎の布陣が完成してしまう。


 ――え、なにこれ


 囲まれた私は、今何が起きているのか頭が追い付かない。

 何故こんな事になってしまったのか、この短時間で流れるように完成してしまったこの謎布陣に、ただただ居心地の悪さを感じてしまう――。


 ――視線が、視線が痛いぞぉ


 クラスの、特に女子達からの視線が痛い。

 その理由ぐらいは、疎い私にも流石に分かった。


 こんなイケメンパラダイスを構築してしまっている私は、どこぞのラブコメヒロインかよって状況に他ならない。



「どうしたの?食べないの?」

「そうだぜ、早く食べないと時間無くなっちまうぞ?」

「新田、具合悪いのか?」


 うん、全部あなた達のせいなんですけどね――なんて、チキンな私には言えない。

 それにどうしてか、全員私に対して一応好意的なのだ、尚更そんな事言えやしなかった。


 諦めた私は、時間が無くなるという意見は確かにおっしゃる通りだったため、さっさと弁当を食べてトイレへ緊急避難する事にした。


 こうして私は、不本意ながらもイケメンに囲まれながらお弁当を食べる羽目になってしまったのであった――。




イケメントライアングルの完成!

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― 新着の感想 ―
[一言] 三方を囲むと、平面状では逃げ場がなくなりますが、上下方向に逃げ道があります。 三次元空間で、対象を包み込むためには、最低4点の基準点が必要です。 もしも、もう一人増えたら、もう逃げ道なんて…
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