12月6日――マルメロ
外は吹雪いているやうですね。
ああ馨しきマルメロの実。
誘惑の甘い果実。
堅く閉ざされた豊満な腰を、その底に横たはる芯を、
どうか僕に割らせてください。
甘やかな香を抱ひて、僕は壊れてしまひたい。
ああ馨しき肉體の麗しさ。
誘惑の熱い呼気。
いつそ狂つてしまひたい。
自我も外聞も体裁も自尊も格好も何もかも棄てて
ゆつくりとした死に、此の身を横たへるのです。
その柔らかな腹に吾身を埋めて、
ただただ深い夢を見たいのです。
たつぷりの実を提げたあの小枝を手折るやうに。
甘い香を放つあの鶯色の実の捥ぎり取るやうに。
僕はあなたを奪つてしまひたい。
いけません。
いけません。
それは禁忌なのでせう。背徳に対する恐怖で胸が疼きます。
それは罪です。過ちです。
誘惑です。
だのに何故あなたは、そうも潤んだ瞳で僕を見るのでせう。
瑞瑞しい果実から滴り落ちる果汁で濡れたその朱唇で、僕の名を呼ぶのでせう。
ぺルノで潤んだその眼で、マルメロに滲んだその唇で、どうか僕を誘惑しなひでください。
ああ、義姉さん。
雪が止むまであなたと此処で二人だなんて、僕に狂へと謂うのでせうか?