3月10日――ルビナス
春の終わりに狼の牙が咲き乱れ、
夏の初めに獣の花が死に絶える。
あの薄紫の花に、君の姿を見たのです。
眩暈のするような香りを振りまいて、
蔓延る花を贈ります。
爛漫と咲くあの美しさ。
御覧なさい。
ものの道理を逆さにし、下から上を目指すあの花を。
貪欲にも更なる美しさを求むのです。
あの美しい花は、さぞかし君に似合うでしょうに。
いえ、解っています。
君は絶対にこの花を持たない。
君が持つのは椿だけです。
ぼとりと首を落として腐る、あの花だけです。
椿姫。
それでも僕はこの狼の花を、君に見て頂きたいのですよ。