9月4日――ダチュラ
そうして甘やかな腐臭を振りまいて、あなたは僕を殺すのですね。
最初はあの夏の日です。
俯いたあなたの首筋は、馨しいほどの美しさで
思えばあの時から僕は毒されていたんだ。
夕日を浴びたあの唇で、僕の体に毒を注ぎ込んだのでしょう。
知っていますよ。
あなたはそうして幾人もの命を奪ってきたんだ。
みんなその優美な細腰に欺かれたんだ。
甘い夏の香りで、僕の記憶を飛ばしたんだ。
分かっています。
あなたは何の気なしに愛嬌を振りまくのです。
可憐な笑みに毒を込めて。
あなたは初めから、そのつもりだったのでしょう。
正直に仰って下さい。
僕は何人目です?
僕のような男は、幾人いたのです?
僕と出会ったあの日のように、何度毒を注いだのです?
僕はこれから死ぬのでしょう。
あなたの毒で、痙攣の中で。
気づいていましたよ。
甘やかな腐臭は毒の匂いですね。
あなたは何の気なしに僕を殺すのですね。