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ビラトナガルの魔法瓶  作者: あかあかや
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王宮跡ダンジョン その三

 翌日になった。

 準備を整えたナラヤンが王宮跡公園に自転車で到着した。顔色が少し悪そうだ。腹を押さえて口をへの字に曲げている。先に到着していたムカスラに手を振った。

「山羊料理の食べ過ぎでお腹が重いままです……」

 ちなみに、公園管理人のラムバリはまだ家で寝込んでいるという事だった。


 ムカスラが自身の水筒を手にして、中の様子をナラヤンに見せてくれた。何かが蠢いている。

「丘の上に数匹のヘビ魔物ムシュキタと犬やカラスの魔物が集まっていたので、捕獲しておきました」

 扉から漏れ出る魔法場に惹かれて集まってきたのだろう、と推測する。

「サラスワティ様が扉を封印していますが、それでも若干漏れてしまうようですね」


 ナラヤンが水筒の中にスマホのカメラを近づけると、画面にヘビ型と獣型、それに鳥型の魔物がぐったりしている様子が映し出された。

「実験動物として使うんですよね。ちょっと弱っているように見えますが」


 ムカスラが明るく笑って答えた。

「料理して食べても美味しいですけどね。魂の状態ですと実体化させる手間がかかるので、早めに来て良かったです」

 上空にサラスワティとドゥルガが転移して出現してきた。なるほど、と納得するナラヤンだ。

「神様ってすぐに魔物を退治してしまいますよね」


 サラスワティが丘の上にフワリと舞い降りて、ナラヤンとムカスラに手を振った。

「おはようございます。やる気に溢れていますね、ナラヤンさん」

 ドゥルガはしばらくの間、王宮跡公園の上空を飛び回っていた。その後、赤い屋根のドゥルガ祠に立ち寄ってから丘の上に飛んできた。元気よく着地して挨拶する。

「ナラヤン君、久しぶり。羅刹のムカスラ君は、相変わらず苦労してるみたいだね」


 サラスワティは白、ドゥルガは赤のサルワールカミーズ姿で裸足だった。武器を持っていない。ムカスラと一緒に地面に両膝をつけて合掌したナラヤンが、小首をかしげる。

「普段着……ですよね。軍服とかは着ないんですか? カーリー様たちは槍を持っていましたけど」


 ドゥルガがサラスワティと顔を見合わせてから、ケラケラと明るく笑い始めた。

「ははは。気にしない、気にしない。この衣装の方が動きやすいってだけだし」

 サラスワティも微笑みながら肯定的に首をふっている。

「まあ、そういう事ですね」


 そのサラスワティとムカスラの肩先に小型の空中ディスプレー画面が発生した。それぞれの画面にはブラーマとプラランバの顔が映っている。ドゥルガがプラランバに手をふった。

「やあ、プラランバ君。久しぶりだね。元気してた?」

 プラランバが口元と目元を緩めながら合掌して答える。緊張してかなり凶悪な形相になっていたのだが、少し和らいだようだ。

「ドゥルガさんですか。ご無沙汰しています。この二千年くらい、毎日仕事に追われていますよ」


 プラランバとドゥルガが世間話を始めた。それを微妙な表情で聞いていたブラーマが、コホンと咳払いをする。

「これこれドゥルガ……今は討伐任務が優先だぞ」

 ナラヤンとムカスラはずっと膝をついた姿勢のままで合掌していたのだが、同時にうなずいている。

 ドゥルガが頭をかいて照れ笑いをした。肩下までのセミロングの癖のある茶髪がワサワサ揺れる。

「こりゃ失敬。積もる話は後でするか」

 サラスワティは慣れている様子でニコニコしたままだ。


 ブラーマが真面目な表情になって、ドゥルガに命令を下した。

「ブラーマの名においてドゥルガ、貴公を討伐隊長に任ずる。見事、未知なる怪物を討伐してみせよ。ドゥルガとサラスワティ。全ての神術と神器の使用を許可する。あらゆる姿になる事も許可しよう」

 ドゥルガとサラスワティがそろって片膝を地面につけて合掌した。

「かしこまりました」


 ナラヤンはまだ膝をついての合掌を続けていたのだが、姉妹の女神を見て感動している。

「おお……まさに宗教画の世界だなあ」

(空中ディスプレー画面がちょっと無粋だけど。もうちょっと気品のある窓のデザインにすればいいのに)

 実用重視の一点張りなので、見た目はアルミサッシの小窓みたいな印象である。

(それと……やはり美少女すぎませんか、お二方とも)

 サラスワティの見た目は16歳、ドゥルガは17歳ほどだ。ナラヤンにとっては同級生か先輩のような感じなのだろう。


 続いてプラランバが告げた。

「新たな特殊部隊を待機させている。何かあればいつでも救援に向かうので無理はするなよ。作戦の成功を期待する」

 サラスワティたちが合掌して感謝する。


 今回の討伐作戦は昨日の夜に段取りがナラヤンにも伝えられていた。

 その手順に従って、ムカスラが素体を一体召喚する。ムカスラが自身の水筒から水を注いで、素体のミイラ状態を解除する。これにナラヤン魂が憑依した。

 ナラヤンの体はサラスワティが透明化して空中に浮かべた。これもお馴染みの手順だ。


 水気を含んだナラヤン素体が起き上がって、軽く準備運動をした。今回は同じくらいの年齢の男だ。ただ、少しヒョロヒョロしているが。ちなみにナラヤンが通っているガンガトール高校の制服姿になっている。

「問題ないですね。では、サラスワティ様とドゥルガ様も続いて憑依してください」


 しかし、女神たちは憑依に失敗してしまった。ナラヤン素体から弾き出されて困惑している。

 ドゥルガがジト目になってムカスラとプラランバに文句を言った。

「ダメじゃん」


「むむむ……まだ女神2柱の憑依には耐えられないか」

 残念がるムカスラである。プラランバも頭を抱えている。

「ムカスラ……後で話があるから時間をあけておくように」


 仕方がないので、実体化しないままで戦う事になった。

 サラスワティが腰に両手を当てて、軽く肩をすくめる。

「使用できる神術の威力が下がりますが、まあ特に支障は出ないでしょう。いざとなれば、扉の中の結界を人間世界から切り離せば済みますし」


 基本はドゥルガが攻撃担当、サラスワティは防御担当だ。三又槍を手にしたドゥルガが、ナラヤン素体とムカスラに話しかけた。かなり気さくな口調である。

「非戦闘員がいると作戦の邪魔になるんだけど……うっかり死んだり殺したりしても構わないよね」


 素直に同意するナラヤン素体とムカスラだ。ムカスラがプラランバ上司の顔色をうかがいながら答えた。多少、目の色が死んでいるようだが。

「ワタシは作戦の記録係ですから、嫌も応もありません」

 ナラヤン素体は目をキラキラさせている。

「こんな機会は滅多にないので絶対に見ないと損です。それに、素体ですから死んでも問題ありませんし」


 ドゥルガが機嫌良く笑いながらサラスワティに話しかけた。

「こういう人間って、たまーにいるよね」

 サラスワティもクスクス笑いながら同意している。

「だよね、お姉ちゃん」


 ドゥルガがナラヤン素体に命じた。

「その心意気や良し。では先鋒の誉れを与える。行ってこーい、人間!」

「ハワス、サー!」


 ナラヤン素体が古びた木製の扉に両手をかけて、バーンと勢いよく開けた。

「ていやー! 我こそはマデシ族の……」

 扉の奥から無数の矢が飛んできて、あっという間にハリセンボン状態になった。勇ましい口上の途中だったのだが全て言い終わる事もできず、さらに飛んできた矢によって体がバラバラにちぎれ飛んでいく。


 ムカスラがジト目になってつぶやいた。飛んできたナラヤン素体の右腕をつかみ取る。魂も飛んできたので、彼の水筒の中へ放り込んだ。

「即死ですね……何をやっているんですか、もう、この学生は」


 ドゥルガもジト目になっているが、ある程度は予想していたようだ。口元が大いに緩んでいる。

「言ってる傍から死んでるぞお、人間」

 そして、扉の中に神術であるマンダを撃ち込んだ。大爆発が起きて扉の中が真っ白に光る。光が収まると、矢の攻撃も止んだ。


 サラスワティがバラバラになった素体にヴィーナの音色を聞かせて瞬時に復元する。その素体にムカスラが再びナラヤンの魂を突っ込んだ。

 すぐにナラヤン素体が目を覚まして飛び起きた。士気は高いままだ。

「なんのこれしき。では気を取り直して再突入してきますっ」


 扉の中へ駆け入っていくのを見送ったドゥルガが、愉快そうに笑った。

「面白い人間だなあ、サラシュが気に入るわけだ」

 サラスワティもクスクス笑いながら困ったような表情を浮かべている。ヴィーナを消去して、右手の平を軽快にクルリと返した。

「困る事の方が多いけどね、お姉ちゃん」


 一方のブラーマとプラランバは、空中ディスプレー画面の中で微妙な表情をしている。ムカスラが見て、深くうなずいた。

「調子に乗った人間って、予測不能になりますよね」


 ナラヤン素体が扉から顔を出した。目がキラキラしていてウッキウキの表情である。

「入ってきても大丈夫ですよ。何もかも消し飛んでいます」

 ドゥルガがドヤ顔で鷹揚にうなずいた。

「そりゃ、数億発のストラを食らって平気なヤツって、あんまりいないし。それじゃあ、アタシたちも中へ侵入するかな。ナラヤン君、先鋒の任ごくろうさま」


 確かに結界内はゴミの山が完全に消滅していて、見通しが良くなっていた。石畳も高熱によって溶けてしまい、濁ったガラスのような見た目に変わっている。それは天井や壁も同様だった。

 ムカスラが感心しながら、魔法で観測を始めた。

「数万度に達したようですね。さすが兵器級の神術です。物質がプラズマ化して、再結晶したのかな。この攻撃に耐えた結界も驚異的ですが」


 プラランバは両目を閉じて呻いている。

「むう……ワシが行使できる魔力量をはるかに上回る魔力で、結界が補強されているな。何者が奥に潜んでいるんだ?」

 ブラーマも深刻そうな表情だ。

「確かにな。マンダを食らって無事な結界なんて初めて見たぞ」


 奥の方にある地下階へ下りる階段から、次々に新手の甲冑兵が湧き出てきた。どれも中に羅刹や魔物は入っておらず、空の状態だ。それでも器用に剣を振り回してこちらへ走って襲い掛かってくる。

「下の階って、かなり広いみたい」

 サラスワティがつぶやくと、ドゥルガが素直に同意した。

「だね。もしかすると、ここよりも広いかも。まあ、別に構わないけどさ」


 ドゥルガがストラを容赦なく撃ちまくりながら進んでいく。対人用に出力を抑えているのだが、甲冑兵は為す術もなく溶けて消滅していった。数十を超えていた敵が、あっという間に殲滅された。

 プラランバが画面の中で再び感嘆している。

「うむむ……この甲冑は、シシュナーガ王国のものだな。ワシが回収してここに捨てたモノが動き出したという事か」


 それを聞いたナラヤン素体が納得している。

「ゲームでよくある『動く鎧』とかいうヤツですね」


 地下二階へ続く下り階段を下りると、天井が数十メートルもある広大な空間に出た。しかも人工太陽があって昼間のように明るい。驚くナラヤン素体たちである。プラランバとブラーマ神も空中ディスプレー画面を介して驚いている。

 そしてそこには数体の全身甲冑の巨人が待ち構えていた。どれも背丈が十数メートルもある。


 警戒するドゥルガとサラスワティだが、ムカスラが中には誰もいないと指摘した。

「あれも動く甲冑ですね。巨人かあ……羅刹でも魔物でもないわけですよね」

 サラスワティも静かにうなずいた。味方を守る魔法障壁の種類を増やしていく。

「あんなのが階段の下で待ち伏せしていたら、殴られただけで神でも死んでしまいますね。接近せずに離れて攻撃しましょう」


 しかし、巨人甲冑兵は接近してこなかった。攻撃してこない。何か動きに迷いがあるような……とドゥルガが訝しむ。

 敵を注視したドゥルガだが、さらに不思議がった。

「んー……あいつらの注意が、サラシュに向けられているような感じだな」


 ムカスラが巨人甲冑兵から目を逸らさずに、プラランバとブラーマに進言した。

「ですが、昨日の攻撃は効いていた様子です。鎧が穴だらけですよ。あちこち高熱で溶けた跡もあります」

 しかし、プラランバがこれを否定した。

「あの傷は発見時には既にあったのだよ。昨日の攻撃では傷一つつけられていないと、報告書が上がっている」

 ブラーマも同意見だ。

「左様。カーリーの報告も同様だ。あれはもっと前に付けられた傷だろう」


 ふうん……と聞き流したドゥルガが三又槍を構えた。

「それじゃあ、試してみるか」

 ドゥルガが三又槍の先からビーム攻撃を始める……が、連射したストラが全弾弾かれてしまった。天井や床、壁に当たって爆発が起きる。その爆炎に包まれても敵は平然としていた。しかし、反撃はまだしてこない。


 感心するドゥルガ。

「へー……これって退魔の神術なんだけど、弾くのか。やるなコイツら」


 プラランバがドン引きしている。

「我々羅刹にとってトラウマの神術を容赦なく使いますねドゥルガさん」

 どうやら、この神術の攻撃でシシュナーガ王国軍が全滅したらしい。

 ブラーマ神が鼻で笑った。

「今の我々は実体化していないので威力は非常に弱まっているのだよ。こんな事で驚いていては、羅刹として恥ずかしいのではないかね」


 プラランバの表情が険しくなったので、ナラヤン素体が慌てて口を挟んだ。彼はムカスラと一緒に、サラスワティが張っている防御障壁の中で見物している。

「すみません。今は戦闘中です。指揮命令を乱すような行為は控えてください。この現場の隊長はドゥルガ様ですよ」

 その通りなので、ぐぬぬと唸るブラーマとプラランバであった。クスクス笑っているのは、サラスワティとドゥルガだ。ムカスラはナラヤンの隣でオロオロしている。


 その間もドゥルガが容赦なくストラを撃ちまくって攻撃を続けていたのだが、ついに巨人甲冑兵が反撃を開始した。甲冑の隙間や突起から無数のビーム攻撃をしてくる。

「おっと。ようやく目が覚めたのかな」

 サラスワティが張っている防御障壁の中へ一時避難するドゥルガ。サラスワティは平然とした表情で、巨人甲冑兵のビーム攻撃を受け止めて無効化している。

「……どこかで見たような術式なんですよね。どこだったかな」


 ブラーマが驚愕の表情でサラスワティを見つめている。

「サラスワティ……お主、この攻撃を完全に無効化できるのか。カルナとアルジュナは一撃で死んでしまったのだが」

 プラランバも同様の表情だ。

「邪神の伝説は今もなお健在ですね」

 ナラヤン素体とムカスラには、ピンとこない様子である。サラスワティがナラヤンにいたずらっぽく微笑んだ。

「今のは戯言です。聞かなかった事にしなさいね」


 その間に、ドゥルガが次の攻撃神術の準備を整えた。

「弱体化してるけど久しぶりに本気だす。シシュナーガ王国軍を滅ぼした時は本気出していなかったし。シルシャアストラ出してサラシュ。この結界ごと滅殺する。因果律崩壊が起きるだろうけど、対処よろしく」

 サラスワティが軽いジト目になって、右手の平をクルリと返した。今は片手だけで攻撃を防いでいる。

「仕方がないなあ、もう。お姉ちゃんは。まあ、変身しないだけ手加減してくれてるって事だから、構わないよ」


 サラスワティがナラヤン素体に顔を向けた。

「ナラヤンさん。一時的に素体に私が憑依しても構いませんか? 実体化しないと使えない神術なんです」

 快く了解するナラヤン素体だ。目がさっきからずっとキラキラしっぱなしである。

「もちろんです。どうぞどうぞ」


 ムカスラがサラスワティに忠告した。彼は比較的冷静である。

「素体が耐える時間には限度があります、なるべく短時間で済ませてください」


「では、始めますよ」

 ナラヤン素体の姿がサラスワティ素体に変わった。床に裸足がついて、白いサルワールカミーズが優雅に揺れた。ナラヤンが持っていたスマホをポケットの中へ入れる。

 今回はナラヤンの意識も残っていたようである。

(おおっ。見物を続行できます。サラスワティ様、大暴れしてくださいねっ)

 サラスワティ素体が苦笑した。

「私はカーリーさんのような武闘派ではありませんよ」


 と、その時、攻撃が止んだ。

 巨人甲冑兵がサラスワティ素体に注目している。目は付いていないはずなのだが……

「もしや、サラスワティ様ですカ」


 サラスワティ素体が小首をかしげた。

「そうですが……以前に会いましたか?」

 巨人甲冑兵が一斉に答え、膝をついて頭を下げた。

「お待ち申しておりましタ」

「どうぞこちらヘ」


 そう言って地下三階へサラスワティ素体たちを案内した。ここも同じく広大で人工太陽が輝き、雨雲からは雨が降っている。そよ風まで吹き渡っていた。

 そして、その中央には大きな庭園があった。水田と麻、里芋などが栽培されている。熱帯性オレンジなどの果樹園もあった。大きな澄んだ池には、白い蓮の花が一面に咲き誇っていて、風に揺れている。


 巨人甲冑兵たちがサラスワティ素体に告げた。

「サラスワティ様に返却すべク、これを守っておりましタ」


 サラスワティ素体が少し混乱している。

「ええと……どういう事なのか、順を追って説明してくださいな」

 ブラーマとプラランバも目を点にしている。ムカスラも同様の表情だ。ナラヤンが神話と伝説を思い出しながら、それでも戸惑った。

(いやいやいや……何千年も前の話でしょ。今に残っているわけがない)

 そう考えながら、ふと聖池を思い出した。

(でも現実に聖池は今もあるし……もしかして、もしかするのか?)


 サラスワティ素体から促されるままに、巨人甲冑兵が話し始めた。中に誰も入っていないので、声質は人工音声に近い。

 それによると、巨人甲冑兵は巨人族の鎧だと言う。巨人族は使役の魔法をかけられていて、隷属していたと。魔法をかけたのは、当時のカラヤヴァーナ帝国の皇帝マヒーシャスラだ。

「主の巨人は死んでしまったガ、鎧の我々は生き残っタ。長い間、野ざらしで放置されていたガ、シシュナーガ王国の羅刹プラランバによって回収されテ、ここに捨てられたのダ」


 ブラーマとドゥルガ、それにムカスラが一斉にプラランバを見る。彼は狼狽していた。

「た、確かにそのような事はした。したが、あの当時はただの古びた鎧だったぞ。人間が触れると魔法場汚染になる恐れがあったので、このゴミ捨て場に捨てたのだ。こうなるとは予想しておらぬ」

 サラスワティ素体も狼狽しながら同意している。

「そ、そうですよね。私もあの当時、鎧集めを手伝いましたが……このような魔力は感じられませんでしたよ」


 ブラーマがため息をつきながら指摘した。

「……サラスワティ。魔力は魔法場からのエネルギーを吸収して得られる。二千年も吸収し続けておれば、膨大になるのは道理だろ」

 ぐぬぬ……と押し黙るサラスワティ素体。


 ドゥルガがニヤニヤ笑い始めた。

「え? ってことは、これってサラシュとプラランバがやらかした事? マジかー」

 まだ理解できていない様子のナラヤン魂に、ムカスラが脱力しながら説明してくれた。

「ええとですね……魔力を帯びた鎧を上司がここに捨てたのですが、その後すっかり忘れていたんですよ。その間に、鎧に魔力が蓄積して動けるようになったという事ですね。この地下二、三階の結界もその魔力でつくられたのでしょう。上司による管理不行き届きです」


 何となく理解したナラヤン魂である。

(扉からその魔力が漏れ出して、ヘビ羅刹が起きたり、巨人がやって来たという事ですか……サラスワティ様はずっとコシ河にいましたから、気がつかなかったのも分かります)

 顔を赤くしたサラスワティ素体が、無言で顔を両手で覆った。プラランバも頭を抱えている。

「何という事でしょう……」

「何てこった……」


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