ポカラへ
風邪は大した事なく治り、ポカラ工業大学付属高校のロボ研に挨拶に行く事にしたナラヤンである。
(ポカラかー……まだ行った事がないんだよね。観光地だし、楽しみだな)
いったんインドに出て、インド側のバスパークへ行く。ネパールの夜行バスは旧式が多いので故障しやすいのだ。インド発であれば新型が多いので速くて安全だったりする。
バスチケットを購入してバスの席に座ったナラヤンが、その座席の座り心地の良さに目を閉じた。
「……科学技術、バンザイ」
ネパールとインドでは時差が15分ある。そのため、バスの発車時刻もここではインド時間だ。しかしナラヤンは慣れている様子で、スマホの時刻を変更したりはしていなかった。
バスの乗客はネパール人が半数で、残りはビハール州のインド人という割合だった。バスのアナウンスはヒンディー語ではなく、ビハール州でよく話されているマイティリ語である。ナラヤンはこの言語にも慣れている様子で、普通に聞いて理解しているようだ。
(定刻に発車かあ……便利だよねえ)
さてポカラ行きの夜行バスは無事に翌朝到着した。バスパークから北の方角を見てみるが……
「雨期になっちゃったか。ヒマラヤ山脈がカケラも見えないな……残念」
バスパークから路線バスに乗って、目的地のポカラ工業大学付属高校へ向かう。バスの窓からポカラの街並みを眺めるナラヤンであったが、少しがっくりしている様子だ。
(ビラトナガル市内の建物とあまり変わらないな……こんなものかね)
違っている点は、チベット仏教の旗が建物の屋上にはためいているくらいだろうか。ポカラ周辺地域にはグルン族やマガール族が多く住んでいる。
ともあれ気を取り直し、付属高校のロボ研の部室へ無事にたどり着く事ができた。
「こーんにちは。ビラトナガルから来たナラヤンと申します。部長さんいますか?」
すぐに男の学生が顔を見せた。
「おお。こっちこっち。よく来たね。俺がここの部長をしているゴビンダだ」
インドから買いつけた部品リストを、早速ロボ研のゴビンダ部長に紹介するナラヤンである。ゴビンダ部長が興味津々の表情になった。
「ほう。さすがビハール州に接しているだけあるね。パトナ市には宇宙エレベータ建設に関わってる会社がいくつかあるから、良い部品も流れてくるんだな」
その後はレイクサイドの24時間営業のピザ屋で歓談する運びになった。ナラヤンの腹がグウグウ鳴り始めたせいもあったようだが。
レイクサイド地区は湖畔で眺めが良いため観光地になっているのだが、この時期は閑散としていた。おかげでピザ屋も混雑していない。
ピザを一緒に食べながら、ゴビンダ部長が試合の申し出についても聞き入れてくれた。
「しかし、国内大会には出場しないんだよ。だから、今年いっぱいは試合できないな。ロボがない。ロボを設計して組み立てるのを考えると、最短でも来年1月以降になると思う」
ポカラ工業大学が様々な事業を興しているので、その手伝いで忙しいと話すゴビンダ部長である。水素を現地製造して、それを燃料や動力源、電源などに使う研究と実証試験が進んでいるそうだ。
「しかし、多くの事業は雨の降らないジョムソンで行われているんだよ。行き来が大変なんだ、これが」
ジョムソンはポカラからヒマラヤ山脈を越えた北側にある砂漠の町だ。車で10時間ほどの道のりである。
ナラヤンも残念に思ったが、ロボがないなら仕方がないと諦めた。
「では、来年1月以降という事で予定を立ててみますね。材料や部品で要望があれば、遠慮なく知らせてください。インド側で入手できるかどうか調べてみます」
ちなみに、この二人が言う『来年1月』とはネパールビクラム暦の1月だ。西暦太陽暦では4月中旬になる。
夕方、ナラヤンがようやく一人になり、ドゥルガが祀られているビンダバシニ寺院へ挨拶に行く時間ができた。この寺院はポカラ市の北部に位置する。
再び路線バスを乗り継いで寺院へ到着すると、予想通り大勢の参拝客で賑わっていた。寺院は丘の上に建っているので、そのふもとにある供物売り場の店で色々と物色する。
(むむむ……結構高いぞ)
そこへ、太鼓腹の中年男がジョギングをして通りかかった。ちょうど一休みするようで立ち止まり、ナラヤンと目が合った。ナラヤンがちょっと聞いてみる。
「あの、すみません。供物売り場って他にもありますか? 貧乏学生にはちょっと高い物ばかりで……」
太鼓腹の中年男が細い一本眉を動かしてニヤリと笑った。身長は150センチちょっとなのだが存在感がかなりある雰囲気だ。
「くっくっく。まあそうだろうな。近くに手ごろな店があるから案内してあげよう。こっちだ」
とにかくも彼のおかげで供物を買えたナラヤンであった。丁寧に礼を述べると、ご機嫌な笑顔で再びジョギングして駆け去っていった。
見送ったナラヤンだったが、戸惑った表情を浮かべている。
(山の人はよく笑うって聞くけど、本当なんだな。何か良からぬ事を考えているんじゃないかと疑ってしまいました。すみません)
平野部のネパール人は一般的に笑わない。
供物は地元産の花とココナツ、それに小さな菜種ランプだった。それらをバナナの葉で作った皿に乗せて、丘の上にある寺院までの階段を上っていく。上った後でキョロキョロしているナラヤンだ。
「たくさんの祠や寺院があるんだな……ええと、ドゥルガ様の寺院はどこだ?」
ビラトナガルでは基本的に1神1寺院なので戸惑っている様子である。仕方ない、とスマホを取り出して起動させた。そして地図アプリを見ながら目的の寺院を探す。この時代では上空にインドの準天頂衛星群が飛んでいるため、測位誤差は数センチ単位である。
「あ。ここか」
ドゥルガ寺院には参拝者の列ができていたので、その後端に並んだ。
(凄い人気なんだな。すみません、王宮跡公園では小さな祠だけで)
しばらく待つと順番が回ってきた。司祭がいるので合掌して挨拶をし、供物を全て差し出した。
(特にお願いする事はないから、無難に家内安全祈願にしておこうっと)
そうして普通に参拝を済ませる。司祭にお金を寄進していないので、短時間で終わった。ドゥルガの女神像と司祭に合掌して礼を述べ、次の参拝者に替わる。
ドゥルガ寺院の外に出たナラヤンが一息ついた。
「……ふう。これでよし。すみませんドゥルガ様。貧乏学生なので豪華な供物ではありません」
「あはは。ビラトナガル市内を自転車こいで走ってるから、知ってる知ってる」
ナラヤンのスマホからドゥルガの声がしたので、急いで声の元を探る。と、スマホ画面では寺院の屋根の上に彼女の姿が映っていた。あぐらをかいて座っていて、気さくに手を振っている。
「やほー。暑いのによく来たね。いらっしゃい、ようこそ豊穣の女神アンナプルナさんが祝福する盆地へ」
ナラヤンが小型マイクを口元に当てて小声で答えた。さすがにここで両膝を石畳につけての合掌をすると、周囲の人たちから注目されてしまいそうなので遠慮する。代わりに立ったままで合掌した。
「部活動の一環でポカラへきたので、お参りいたしました。確か、ドゥルガ様はポカラの土地神様でもあると聞いています」
ドゥルガが感心して屋根から舞い降りてきた。ニコニコ笑顔でナラヤンの肩をポンと叩く。何となくビリビリした感覚を覚えるナラヤンだ。肩を叩かれたという感じではない。
「ほうほう。よく勉強してるね。偉いな。ポカラはアンナプルナさんが最古参でね、アタシは後からやって来たんだよ。なので、アンナプルナさんに協力して参拝者に祝福と加護を授けているんだ」
今は雨雲に覆われているので見えないのだが、天気が良ければ寺院からアンナプルナ連峰が見えるらしい。
ナラヤンが少し考えてから聞いてみた。
「ええと……アンナプルナ様って、ヒマラヤ山脈をつくった神様の1柱でしたっけ。カンチェンジュンガの巨人とは別なんですね」
ドゥルガが明るく笑った。
「だな。あの巨人は眠り呆けて仕事なんかしないし。なのでアタシが怒ってブッ倒したけど。アンナプルナさんは働き者だよ。世界の危機を救った事もあるし」
そう言ってから小声になった。
「……だけどな、馴れ馴れしい人や神が嫌いなんだ。擦り寄っていって死んだ人や仙人に聖者、存在が消された神や魔物は数えきれないぞ。ナラヤン君も気をつけな」
「は、はい。肝に銘じます」
実際にアンナプルナ連峰は、季節が良ければスニーカー靴に普通のジャケットで、最深部のベースキャンプまで観光登山できる。そこの標高は4100メートルなので高山病には注意する必要があるが。民宿も多いのでテントや寝袋も不要だ。
しかし、その先は別世界となる。アンナプルナ主峰への登頂登山では、死者数が国内トップだ。
ここビンダバシニ寺院には多くの司祭や聖者、それに修験者がいる。しかし誰一人としてナラヤンと和やかに会話しているドゥルガ本人には気がついていない様子である。
(羅刹魔法って凄いんだな……)
ドゥルガ寺院では、別の参拝者がオス山羊を1頭連れてきていた。それを司祭に託し、一緒に大きなククリ刀でオス山羊の首を一刀で斬りおとす。そして、噴き出る鮮血をドゥルガ神像に捧げているのが見えた。
それを見てナラヤンがドゥルガに謝る。
「すみません。オス山羊って高いんですよ……とても僕の財布では出せません」
季節にもよるが、子山羊であれば数千円から買える。しかし、夜行バスのチケット代が千円以下なのと比較すると、学生には高価だ。
ちなみに血を供物として捧げた後は、山羊を家に持ち帰って料理して食べる。
ドゥルガが気楽に答えた。
「まあ、学生だもんね、その点は大目に見るから安心しなさい」
上空ではカラスの群れが鳴きながら乱舞していた。が、スマホを通じてみると一羽のカラス型の魔物を追いかけていたのだと分かる。
「ドゥルガ様。カラスって魔物が分かるんですね」
ドゥルガがうなずいた。
「うん。ここのカラスには死の神ヤマさんの眷属の末裔が多いからね。魔物を見かけると攻撃するんだよ。アンナプルナさんは豊穣を司っているけど、同時に死にも関わっているんだ」
そう言ってから頭をかいて、訂正した。
「あー……もう一つあるかも。聖槍をポカラに保管しているんだよ。マジ危ない朱槍だからさ。死の関係者が引き寄せられてくるんだな」
「あ。それ、知っています」
ナラヤンが神話で聞いた話をすると、ドゥルガが困ったような笑顔を浮かべた。
「あはは……かなり脚色しているなあ、それ。でもまあ、当たらずとも遠からずだな。あの時は真っ赤な三日月が昇っていたんだよ」
落胆しているナラヤンだ。
「サラスワティ様も同じ事を仰っていました。そうですか……やっぱり脚色されていますか」
しかし、すぐに気を取り直した。財布の中身を確認してからドゥルガに聞いてみる。
「この後はビラトナガルへ戻りますが、ポカラ土産でお勧めってありますか? できれば安い物が嬉しいんですが」
ドゥルガが軽く腕組みして、小首をかしげた。
「うーん……神って直接食べたり飲んだりできないからなあ。アタシも供物しか詳しくないし」
そう言ってから、寺院に上ってきた聖者に声をかけた。
「お。マニ君が来たか。ちょうどいい。おーい、マニ君。ちょっと来てー」
この聖者はドゥルガが見えるようで、すぐに小走りでやって来る。サフラン色の法衣がよく目立つ衣装だが、ナラヤンがよく寺院で見かけるような聖者とは違い、全体にかなり質素である。
「ご用ですかドゥルガ様」
ドゥルガが気さくな口調で、この聖者にナラヤンを紹介した。その後でポカラ土産のお勧めを聖者に聞く。
「ナラヤン君は学生で金欠だから、安い物に限定してね」
聖者が目を点にしていたが、真摯な態度でナラヤンに向きあって答えた。それでもかなり威圧感のある雰囲気だが、これは生来のものだろう。瞳も琥珀色をしている。
「ワシはホテル協会とはあまり深い関わりはないのだが、評判が良いのはいくつかある」
それを聞いてメモしたナラヤンが丁寧に合掌して礼を述べた。
「相場の値段まで教えてくださって、本当にありがとうございました。一部は、ビラトナガルに着いてからサラスワティ様に供物として捧げますね。ええと……お名前を呼ぶのは憚られますよね。何とお呼びしましょうか?」
聖者の中には世捨て人になった者も多い。そういった人は名前を捨てている。
マニとドゥルガに呼ばれている聖者が、頬と目元を緩めた。
「隠者で構わぬよ。今や、その呼び名の方が通用する」
ナラヤンが真面目な表情で改めて合掌して礼を述べた。
「ありがとうございました、隠者様。実は地元にラズカランさんという呪術師の知り合いがいまして。彼はドゥルガ様の姿は見えないのですが、気配だけは察しています。凄いですよね。僕は、このスマホを介さないと見る事ができません」
そう言ってスマホを隠者に見せる。それを手に取った隠者が、画面に鮮明に映っているドゥルガの姿を見て、大いに驚いた表情を浮かべた。
「お、おおっ。何という事だ」
隠者がドゥルガに向かって両膝を石畳につけて合掌した。ヴェーダの一節をサンスクリット語で唱える。
当のドゥルガは照れているようだが。ナラヤンに視線を投げてきた。
「羅刹魔法も役に立つ事があるのね。こんなに嬉しそうなマニ君の顔は見た事がないよ」
隠者がさらに驚いた表情になった。
「羅刹、ですと? ヴェーダの伝承にしか登場していない伝説の魔物ではないですか。今も生きているのですね」
ナラヤンが恐縮しながら補足説明した。
「このスマホには、その羅刹さんの魔法がかけられています。そのおかげで、普通の人間の僕でもこうして神様や羅刹さんと会話ができています。残念ですが、僕以外にはこの魔法は作用しないようでして……すみません」
隠者が満足そうな笑みを浮かべて立ち上がった。そしてナラヤンの肩を叩く。
「まあ、そういう事だろう。ワシはこうして初めてドゥルガ様の御尊顔を拝する事ができただけで、至上の喜びを感じておるよ。感謝する、ナラヤン君」
ドゥルガが改めてスマホに関心を向けた。
「なるほどね。信者が喜ぶのか。量産する価値はありそうだね」
え? と目を点にしてドゥルガを見るナラヤンである。
ドゥルガがいたずらっぽく笑った。
「アタシの妹神のサラスワティが、そのスマホを試作してるでしょ。人間と神との意思疎通の手段に使えるかもって言ってるのよ、あの子」
なるほど、そういう理由だったのか……と納得するナラヤンであった。
「サラスワティ様の仕事の一つに、病院の医療関係者への祝福や加護があると仰っていました。意思疎通が容易になると、より効果的に行えるようになりますね」
そのような談笑を隠者とナラヤン、ドゥルガとで続けていると、寺院の司祭が隠者に声をかけてきた。
「おーい、隠者様。山羊の生贄が多くて、床が血で滑る。ちょいと掃除するから手伝ってくれないか」
隠者が残念そうにため息をついた。
「ドゥルガ様とまだ会話していたい気持ちで一杯ですが、仕方ありません。ここで失礼いたします」
次いで、ナラヤンにも礼を述べた。
「ナラヤン君。今日はワシの記念日にするよ」
ナラヤンがスマホの画面をできるだけ長い間隠者に向け続けて、ドゥルガの姿を見せる。
「僕は今晩の夜行バスでビラトナガルへ戻ります。すみません、神様の姿は映像ファイルに保存できないんですよ」
肯定的に首を振る隠者だ。ドヤ顔にもなっている。
「心配無用だ、ナラヤン君。ドゥルガ様の雄姿はこの目に焼きつけた」
スマホ画面に映る神様と羅刹、魔物を見る事が出来るのは、基本的にナラヤンだけだ。しかし、隠者だけは見る事ができている。それなりに魔力を隠者が有しているためだろう、というドゥルガの推測だった。
隠者がドゥルガ寺院内へ入っていくのを見送ったドゥルガが、ナラヤンにご機嫌な顔を向けた。
「今日は楽しいひと時を過ごす事ができたなー。褒美として、サラスワティをサラシュと呼んでも良いぞ、ナラヤン君。姉のアタシが許可する」
「お、おおおお、畏れ多いですっ」
尻もちをついて恐縮するナラヤンであった。ケラケラ笑うドゥルガだ。
ビラトナガルに戻ったのは翌朝だった。ポカラからはネパールの夜行バスに乗ったので、少し疲れ気味の様子である。
ビラトナガルへ行く途中で、イタハリの町で下車する。ここからは路線バスに乗り換えて故郷の村へ戻るナラヤンであった。
(夜行バスは疲れるなあ……お金に余裕があれば、飛行機が使えるのに)
ポカラからビラトナガルへの直行便はないので、首都で乗り換える必要があるが。
まだ雨期の序盤だったため、土道も泥沼化しておらず実家に無事着いた。
早速、お土産を渡すと両親や親戚たちから喜ばれて安堵するナラヤンである。お土産のラインアップは、ヤクチーズ、カマンベールチーズのような熟成チーズ、ミカンとオレンジジュース、地ビールや紅茶、コーヒー、トマトソースなどだった。
ナラヤンの父が特にご機嫌である。
「うんうん。ようやくナラヤンも、人並みに土産を買うような気配りができるようになったか。いつまでも変人のままではこの先苦労するからな」
はいはい、と聞き流すナラヤン。
その後で呪術師のラズカランに会いに行き、ポカラでの注文があるかも知れないと話した。喜ぶラズカランだ。
「それは朗報だなっ。収入が増えるのは大歓迎だ」
そして、ナラヤンがビンダバシニ寺院で知り合った隠者の話をすると、ラズカランがひっくり返って驚いた。両手の平をクルリと返している。
「は? あの隠者様と知り合いになったのかよ。マジか。呪術師の間でも、あの御方はマジ者だという評判なんだぞ」
その『マジ者』というのが一体何を指しているのかは、ラズカランの説明を聞いても理解できなかったナラヤンであったが。恐らくはドゥルガが言っていたような、魔力持ちという意味なのだろう。
ナラヤンが理解できていないのを見て、大いに落胆するラズカランである。
「まったく……ワシと長年関わっておきながら、どうして理解が深まらないかな」
ナラヤンが細い眉をひそめてジト目になった。内心で右手の平をクルリと返している。
「どうも、すみませんね」
「それはそうと、だな。ナラヤン」
ラズカランが自身のスマホを取り出した。ゲジゲジ眉が盛んに上下している。
「こんな動画があるんだが」
ナラヤンが肉塊になって元に戻る映像と、延々と微動だにせずに炎天下の展望台に突っ立っている映像をナラヤンに見せた。
(あー……そう言えば、まだ残っていたっけ)
内心で冷や汗をかくナラヤンだ。
ラズカランがまじまじとナラヤンを見てから、彼の手をとって脈を調べた。首をかしげている。
「……異常は全く感じられないんだがなあ。しかし、悪霊が憑いている恐れはまだ残っているから、何か異変を感じたらすぐにワシに言ってくれ」
了解するナラヤン。
(基本的には良い人なんだけれどね……)
続けてラズカランが告げた。
「ワシの占いでは、今後多くの厄災が起きるとある。ケガをしないように注意しろよ」
素直にうなずくナラヤンであった。
「それは本当にそう思います。気をつけます」




