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ビラトナガルの魔法瓶  作者: あかあかや
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小話

 翌日はついにロボ研のサンジャイ部長に捕まり、部員たちと一緒に市内の飯屋でたむろする事になった。話題になるのはドラマや映画の話題ばかりだ。次いでサッカーの高校リーグの話題だろうか。

 この飯屋はここの学生がよく利用しているようで、他の客も多くが緑色のズボンと縞模様のネクタイ姿の学生だ。


 全員が未成年なので、酒ではなくてチソと呼ばれている炭酸飲料水に氷を入れた飲み物を頼んでいた。ここではコーラが人気で、次にスプライトのようだ。

 食事はチャパティと呼ばれる小麦粉のクレープと、ツマミ料理である。


 この飯屋はマデシ料理を出しているようで、ツマミ料理は川エビや川魚の香辛料揚げだ。

 川エビの見た目はバナメイエビに似ているが、かなり小さい。川魚も小さめでフナとナマズ、それにマスの仲間だ。内臓とウロコを取ってから、香辛料とレモン汁をかけて、高温の菜種油でガッツリと揚げている。

 そのため、殻や小骨ごと食べる事ができるのだが……味の方は、小さいエビと魚なのでお察しだ。


 他には川魚の香辛料煮込みもあるのだが、小骨が多いので注文されていなかった。他には、養殖のコイやテラピアの仲間を素揚げしてから香辛料煮込みした料理がメニューに載っていた。これらは普段よく食べている魚なので、今回は注文していない。


 揚げ物としては他にバナナや里芋の輪切りのフライが注文されていた。どちらも甘くなく、衣には香辛料が混ぜられている。


 ナラヤンはタニシの香辛料煮込みを好んで食べていた。このタニシは日本のものよりも一回りほど大きい。ジャンボタニシほどではないが。作り方を簡単に記しておこう。


 泥を吐かせた後で、タニシの殻の先を包丁で切り落とし湯通しする。この際に少量のコーンスターチを湯に加えておく。

 湯通しが終わったらタニシの身を殻から引き抜く。殻から出た汁は別の皿に取っておく。内臓は好みで残しても捨てても良い。


 底の深いフライパンに菜種油を垂らし、みじん切りにしたタマネギとニンニク、ショウガ、トマト、乾燥唐辛子と生唐辛子を加えてじっくりと炒める。時々水を足して焦げつかないようにしながら、ペースト状にする。これにクミンとターメリック、ガラムマサラ、緑カルダモンなどを加えて風味を付けて、塩を振って味を調える。


 このペーストに湯通ししたタニシの身を投入して、じっくりと火を通す。汁も加える。最後にコリアンダーやバジルなどのハーブ葉を散らして完成だ。

 店によっては、殻つきのままで料理したりする。


 肉料理は鶏肉の他に、水牛肉の香辛料煮込みもあった。これもクミン風味で、大量のタマネギを使っているようだ。これに唐辛子とタマネギを刻んで混ぜたマッシュドポテトがついている。ジャガイモ栽培はビラトナガル近郊では難しいので、ヒマラヤ地域から運んできているそうだ。


 その飯屋でデスメタルのバンドが演奏を始めた。サンジャイ部長と部員たちが歓声を上げる。

「おっ、始まったか。行くぞ」

 サンジャイ部長が部員たちを連れて演奏を聞きに行く。さらには、観客に混じってヘドバンやモッシュなどを始めた。

 ヘドバンは頭を前後やそれ以外の方向へ勢いをつけて振り回す音楽鑑賞方法で、モッシュは演奏会場で輪になって走り回って音楽を楽しむ作法である。どちらも警察に見つかると怒られる可能性が高い。


 ナラヤンは参加せずに、チソをすすりながら呆れて見ている。

 と、彼のスマホ画面のクジャクがデスメタルを聞いて、オウムに変化した。一目で死体だと分かるデザインで、狂犬病にかかっているような震えをしてヨダレを垂れ流している。

(……なにこれ)


 不思議に思い、緑のオウムを指タッチしてサラスワティに電話して聞いてみる。すぐにサラスワティが電話に出た。

「ああ……そう言えばまだ言っていませんでしたね」


 サラスワティの説明によると、彼女は清浄の女神なので、不浄な場所に来るとマタンギに変身してしまう。不浄な音楽を聞いてもそうなってしまうらしい。

「音楽ではデスメタルなどを聞くとこうなります。その影響がクジャクにも表れたのでしょう」

 サラスワティの声が小さくなった。

「ですので、ビラトナガル市内とかインドへはあまり行きたくないのですよね、あはは……」


 ナラヤンが質問した。何か思い当たる節があるようだ。

「……って事は、ビラトナガル市内に配置されている小人型のサラスワティ様にも悪影響が出ているのでしょうか。僕はミニスワティ様とお呼びしています」

 あっけなく肯定するサラスワティだ。

「ミニスワティですか。良いですね。このミニスワティですが、そういった理由で少しオテンバになっているんですよ」

「なるほどー、理解しました」


 サラスワティがナラヤンに一言注意を加えた。

「ああそうそう、そのオウムですが咬まれないように注意してくださいね。ナラヤンさんが生ゴミになってしまいますよ。清浄な場所に移動すると元のクジャクに戻ります」

 マジですか……と指を引っ込めるナラヤンであった。


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