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箱入り最恐サキュバスは精を搾らない  作者: 氷水
最強のサキュバス外の世界に出る
5/35

人間の食事を食べる

 とりあえず魅了されているミノの父親の意識を戻すと、さっきまで垂れていた目が元に戻る。意識あるという証拠である。


「はっ……ここは、体が動かない。そうか……私は……負けたのだな」


 ミノの父親はその場を見まわし、俺のぼろぼろの姿で、目を赤くしているのを見て瞬時に状況を理解したようだ。


「私はもう動けない。だが、お願いがある。私の家族には手を出さないでくれ、いくらでも私からはとってもいいだが、リアタとミノ、ロアには」


 やっぱり、まだ勘違いしていたようだな、というかそれをするのだったらこんな近くで解除はしないと思うのだけど。どうなのかな。


「誤解だ、もし二つの約束をしてくれるのなら、今ここで、魅了を解除してやる」


「なんだ、その約束は?さっきも言った通り家族には指一本触れさせないぞ」」


 動けないはずなのに、簡単に弱い獣なら殺せるような、家族を守るためにすさまじい眼力でこちらをにらんでくる


 いい父親だな。こんな父親を持つなんて本当にミノは幸せ者なんだな。サキュバスの父親なんてだいたい見る影もなく皮の色が薄い茶色になるぐらいまで枯れているけど。


「なに、大したことじゃない、一つは暴れない事それから」


「あとは、人間の食べ物が食べたいで、あっているよな、サキ」


 そう、ミノが俺の代わりに、言おうとしていた約束を言い、それに俺がうなずいた瞬間、俺の腹の音が鳴る。


 正直、戦闘するとは思っていなかったのだ。それも二回も、片方はしょうがないとして、父親は説得すればいけると、なんとなく甘い考えで思っていたし。


「それでいいのか?分かった。ちょうど朝ごはんの時間だ。それでいいなら解除してくれ」


 その言葉を聞くとすぐに俺は魅了を解除する。


「本当に解除するとは、すまなかった少し誤解をしていたようだ、家に招待するよ」


「あ、ごめんその前に、近くに川とかないですか?体の汚れを落としたいです」


「わかった」


 そのあと、ミノの父親に川まで案内してもらい、体の汚れを落とし、ついでに、服の汚れも落としておく。もう既に服としての機能を果たしていないが。


 改めてミノの家の中に入る。テーブルが一つあり、奥に料理を作る場所があった。他にも横の方にドアが四つあり、それに二階に行く為に、梯子がかけてある。

 そして先ほどまでと違う光景は、椅子の上にもう一人だれか座っていることと、父親が横に立っていることだ。


「……だれ?」


 第一印象が幼く儚げで、髪が短い少女はこちらに向き、そのようなことを聞いてくる。


 それに答えるのはいいけどどうしようかな、まぁいいか


「俺はサキュバスのサキだ」


「サキュバス?」


 とこちらに首をかしげる動作は実にかわいい。なんでミノはこんな風に美人にならなかったんだろうな、不思議でしょうがない。


「ああ、気にするなロア。ただの客だ」


 ロアと呼ばれた少女は、父親の言葉で本当に気にしなくなったのか、また視線を元に戻すと思ったのだが、


「服……ボロボロ」


「ああ、そういえば」


 そういえば服ボロボロだったな。俺、本人だけど、すっかり忘れていた。あんまり気にしないからね。


「すまない、え~とサキちゃん?君?」


「あ~と君でお願いします」


 ちゃんとは、呼ばれたくはない。それを聞くとすぐに、分かった君だなと言ってたけど、というかどうしようかな、服。

 女性物の服は着たくないから、男性もの一択だろう。


「なぁ、ミノ。男物の服って持っていない?」


「逆に俺が男物の服を持っていないってどうなんだよ。あと、見た目を大事にしろよ。お前見た目だけだったら、本当に美がつく少女だぞ」


 そうか、じゃあ、襲われないように注意しよう。特に近くの人に、ついさっき襲われたばかりだしな。誰にとは言わないが。


 横目で傷ついていないミノの父親を見る。


「いや本当にすまなかった」


「あら、あなたこんな少女を襲ったってどういうことかしら」


 あ、さっき料理を作っていた女性だ、見た目は若そうに見える。身長は163㎝ぐらいかな、怒っている様子で、ミノの父親に詰め寄り、ミノの父親は顔を青くしていた。


「こんなかわいい子を、髪や服がボロボロになるまで、襲ったですって」


「いや、誤解だ、リアタ」


「いやたいして誤解ではないよ、母さん、わけも聞かず勝手に興奮して襲ってたし」


「ちょっとミノ!」


「あとで話してもらいますからね、あなた」


 その女性が、まるで、鬼のような顔をして、ミノの父親に詰め寄り、顔を戻すと、丸っこい器に入った料理を三人分テーブルに運んできた。そして、すぐにもうひとり分料理を器によそい、持ってきてくれた。


「ワドが。こんなに、髪の毛が短くなるまで、襲われるなんて、それに、いきなりもう一人来るとは思っていなくて、ごめんなさい。」


「ああ、いえお構いなく」


 差し出された料理を見て、食べようと思ったが何より、周りの人は、食べないで手を合わせている。何をやるのかわからない俺はなんでかその場で、尻尾を出しておく。

 ちなみに髪の毛は何故か再生しない。だから肩にもかからないほど短いままだ。


「なんだ、サキ、手を合わせないのか?」


「いや何をするの?」


「なるほど、サキュバスの間ではこのようなことをしないんだな、一つ分かった」


 どうやら、人々の間では手を合わせて合図をしてから、食事をするようだ。


 サキュバスにはそんな風潮なかったなぁ。いつも、食える瞬間をいつも我先に狙ってたっけ、そしていつも俺が、そこら辺に生えている野草や獣を食べる流れだったな。


「まぁ郷に入っては郷に従えというし、やってみろよ」


「分かった」


 そのあと俺もみんなと同じように手を合わせる。


「「「「いただきます」」」」


「えっ……えっと……いた……だきます?」


 合図とともにみんな食べ始めるので、この時点でサキュバスのための食事じゃないことがわかる。スプーンを使い、スープを掬い、そのまま一口入れてみる。


「なんだ……これ」


 とてつもなくおいしかった。今まで食べたことのないような感触が口の中に広がる。どこぞの便所のごみのような生臭い料理とは違うちゃんとした料理だ。


「……美味い……」


 つい口からその言葉が漏れる。一口食べるとあとはもう止まらなくなり、二口、三口と口の中に入れる。すごい幸せだ。思わず出している尻尾が揺れる


「そんなに喜んでくれると作った甲斐があるわ」


 ミノの母親が喜んでくれる声が聞こえるが、今の俺にはそんな言葉は聞こえていない。

 そして、気づけばもう、皿の中がもうない。美味しすぎてきっと、我を忘れて食べてしまったんだな、そうに違いない。周りを見ると、まだ食べている途中だし、どうしようかな。


「そういえば、サキ。なんであの森に居たんだ?サキュバスっていつもどこからともなく現れるから気になっていてさ」


 そんなことか、まぁ隠すことでもないし、話しておこうどうせ対処できないし、出来れば、対処してほしいけど。でも、ランダムでピンポイントに当てるのは至難の業だと思う


「そんな特性になっていたのか、こりゃ全てを倒すのは大変だな。最近厄介な事が起きているし」


 厄介な事、果て何だろうそんなことを考えてたり、ロアとミノの母親の質問に答えたり、ミノの母親の名前を聞く。名前はどうやらリアタというらしい。それで、今度料理を教えて欲しいお願いがしたら、いいよという言葉をもらったりしているうちに、どうやらみんな食べ終わったようだ。

 あれ?またみんな手を合わせ始めた。またなんか合図があるのかな?


「やっぱりこれも知らないよな」


「まぁそういうなってミノ。一応、悪魔だからそういう文化がないんだろう」


 なんかひどい言われようだな。まぁそうなんだけど。あれは戦争だよ。皆血走った目で、一番おいしそうな男のもとに行こうとするんだから。あれを俺も味わいたくないね。たまに、寄られることがうれしそうな人も居るらしいけど。

 曰はく、魔法使いを辞められるんだと。とらわれている時点で、魔法を使う分の力なんて全部、精を作るための力に変えられているはずなんだけど。


「サキお姉ちゃん、食べ終わったら、手を合わせてご馳走様というんだよ。こうやって」


「えっとこうか?」


 言われたとおりに手のひらを合わせると。


「「「「ごちそうさまでした」」」」


「えっ……せーの、みたいな合図とかないの……えっとごちそうさまでした?」


 とりあえず朝と同じように、みんなとは違い遅れたが、俺も挨拶?みたいなものをすると、リアタさんが片付けに入ったので、俺も、片づけを手伝いに行くが、手伝おうとしたとき、まずは服を着てきなさいと言われた。

 そういえば、今俺ほとんど裸の状態だったのに、食事中誰も突っ込まなかったな。


 そのあと、リアタさんが、この服いいんじゃない。とか言って女の子の服を着せてこようとしたが、全部断り、ミノに服を貸してもらった。


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