聖騎士の少年?に会う
光を通さないかの如く、細い木が、たくさん生え、そして周囲は闇のように暗い。昼は誰かの声が聞こえるかもしれないが、今は俺の、走る時の足音、そして、息を吐く音だけが聞こえる。
「あと少し」
早くこの森を脱出しないと無理やりあれをやらされる。
逃げるように暗い、森の中を走るともうすぐ出口が見えてくる。
俺は自由になりたい、好き勝手、生きていたい縛られてる生活はこりごりだ
この森は自分の生まれ故郷サキュバスの森だ。
俺はサキュバスとして生まれたが心が男だ。
サキュバスの教育は俺からしたら、それはまさに地獄だった。
やれ、男の気持ちよくなる部分を覚えろだの、やれ、ある部分を無理やりたたせろだの男をだますために弱っているふりをして、腕をさりげなく絡ませる演技をして、いい雰囲気なったところで一気に襲えなどの事を耳にタコができるほど言われてきた。
淫魔として、精を搾る事を5歳のころから教育される。
それが心が男の俺にどれだけきつかったと思っている。
やりたくもないことを、無理やり、生きるためだとか、気持ちよくなるためだとか、そんなの知らねーよ。大体こっちは不老不死だっつーの。
淫魔法とかいう淫魔だけが使えるよう魔法がある。
その効果は、自分の半径50mの(それぞれの力量で変わる平均15m)男性を無理やり興奮状態にし、理性をなくさせその間に、相手を魅了眼で魅了させて精を搾り取るなどの使い方をする魔法である。サキュバスのとしての力が強くなると、普通に異性相手でも使えるようになるし、精を直接触れることなく、搾り取り強制的に戦闘不能にさせる恐ろしい魔法に早変わりする。
そんな魔法を駆使して男の精を搾り取ることを12歳の時に実践でやらされる。
そもそも何故、こんな性格なのに、この魔法が優秀なせいで他より気合を入れて育てられるし、ほかの乗り気なやつを鍛えてやれよ。
数字系が得意なのに、言語がやりたいって言っている奴に、君は数字のほうが得意だから、そっちをやりなさいって言われている気分だよ。
まぁどっちもできたけど
基本サキュバスは寝ている男性や魅了眼で魅了した男からばれないように吸うため比較的に朝は寝ている事が多いから逆にそれを利用してばれないように行動する。
だから今こうして見つからないように朝に逃げている。そうして逃げているうちに先の風景が通れるものなら通ってみろとばかりに見えない、出口が見えてくる。
もう少しで俺は自由になれる。こんなくそみたいな場所とはおさらばだ。
あばよ、
見えないのに、出口が見えてくるのも変であるが、とにかく、これで俺はこの地獄から解放される、今考えていたのはほとんどそのことだけだった。
そして朝とはいえ闇に支配されてるが如く暗く、そしてたくさんの人を惑わす化のように、細い木が生えており、先の風景がまるで見えないサキュバスの森の出口を抜けた先は、
さっきまでとは違い、日の光が入り込み、周りからは虫の声が聞こえる。黄緑色の木々、優しい風が頬をなでる。木の高さと太さが大きい森だった。
「うん、森は抜けてない」
でもこれでやっと落ち着く。もうやらなくていいんだ。自由に生きていいんだ
何をしようでも今はとりあえず疲れた
だが俺はその場で休憩のために少し座り、しばらくたってから、走るのではなく歩き出した。
だけどこれでいい。サキュバスの森を抜けると、どこか別の場所に出ることが出来、その結果として、各地にサキュバスが表れる仕組みになっている。
逆に言えば出られる場所は完全にランダムで、森の中や洞窟はたまた、海の中などもあり得る。何故か人間の街の中はないようで、村の中にいきなり現れることはあるそうだ。だから、人が寝静まる夜に出ることが多い。それはともかくランダムで出る特性上、俺は他のサキュバスに追われることがほとんどなくなるだろう。
そもそも、森を出た後は、一人前と認められるようなものなので、追われることはないし追手とかの心配はないな
だから、くそみたいで、もう行きたくもないサキュバスの森とは違い、朝、周りが明るいこの森の中では安心して歩くことが出来るようになる。
「さて、この先どうするか」
サキュバスの見た目は翼や尻尾を出さなければほとんど人間と変わらない。
今は、翼も尻尾も、森の木の枝に翼が引っ掛かる、戦闘中以外はあまり使わないなどの理由で、消している。
「とりあえず生きていく為に食料を何とか確保しますか」
そう今は食料の方が大事だ。
かれこれサキュバスの森を出た後も体力を温存するために抜け出た明るい森を歩き続けている、森の中は明るいが、サキュバスの森ほどじゃないが暗くもある。しかしサキュバスは暗視を持っている。その暗視を使って食べられそうな、木の実や生き物を探しているのだが一向に見つからない。最悪ずっと見つからないかもしれない。
地味に泣きそう。
「はぁ、まったくどこかに獣でもいないかなぁ、もしくは、木の実でもいいやぁ」
獣を仕留めることに関しては暗黒魔法を使えばいいし、魔法を鍛えて強くしたり、魔力量を増やすいい修行になるんだけど、筋トレをしたら、筋肉が鍛えられるみたいに。しかし肝心の獣があたりを見回しても一向に見つからない。
もしもいて仕留めたとしても獣のさばき方なんか知らないし、知っているとすればせいぜい血抜きのことぐらいだ。それもだいたい首を悪魔の筋力を使い、手で突き刺して、血を流させるぐらいでさばいてすらいない。いざとなれば皮だけ手で剥いで、食べるがな。
そもそも考えてみたら俺は火を起こせない。
しいて言うならサキュバスの筋力を使って摩擦で起こすしかない。
そもそもなんで、サキュバスの誰もが火の魔法が使えないんだよ。
俺も使い方知らないけどさぁ。
あれぐらい誰でも使えそうな魔法だと思うし、本には初級魔法と、書いてあったんだけどなぁ。
何故か誰も火魔法を使えない。
「さて火魔法ってどんな風に使うのだろう」
闇魔法の使い方と似ているのかな、考えてみると疑問に思ったことはあまりなかった。闇魔法に関しては夜などの暗闇を想像すればいいし、その闇を一度見たボールや槍などに形を変えて相手に飛んでいくような感じだった。
そもそも闇は消滅だ、肉のほうが消滅する。
だから同じように火をイメージすれば出来るのかな。
ところで火をイメージってどんなだ、ていうか火ってなんだ、どんな感じだったっけ、いつも魔道具使ってたから想像したことなかった。
「俺も他のサキュバスのこと言えないなぁ」
そうして暗さが無くなり、完全に明るくなった森の中で獣を探しながら、火の魔法のことをああでもない、こうでもないと考えているうちに頭が痛くなり、極度の疲労感とともに腹がなった。
「ああもう考えるの終わり。逆に腹が減るわ」
もういざとなれば生で食えるだろこの体腐っても、悪魔の体だし、男の精を見た目が汚くても何の躊躇もなく、上や下から絞っていて、感染症にかかるどころかむしろおいしいとか言って顔を綻ばせるような種族だし。俺はやったことないけど、そして、これからもやる予定なんてないけど。
「うん?」
しばらく歩くと視界の端で、光が反射したのか、何か白いものが見えた。
白いものというと、木のみかな、毒がなければ、いや、毒があってもサキュバスだから、そんなに効かないけど、食べられるものがいいなぁ。
気になったので、その場所に行くとそこには、人間の多分頭の部分?の骨が地面の上に合った。
「なんだ、骨か。食べられないじゃん」
なんだよ、ただ体力減らしていった先が、食べられない人間の骨って、時間損した。
それにしても人間の頭しかないと言う事は、デカイ獣でもいたのかな、どっちにしろ、生きている人間だったら他の人間がいる場所に案内でもしてもらい
人間の食料を恵んでもらおうと思ったのに。
両手を頭の後ろに置いて、あーあ、と言いながら、また俺は、腹が減った状態で食べ物を探し、完全に明るくなった森を歩き始める。
しばらく森の中で、うわごとのように呟きながら、木の実や獣の肉などの食料を求めながら、森を抜けることが出来るかもという期待も込めて、歩く。なんで一匹も獣がいないのかなぁ。というか木の実もない。
「……フッ……ハァ!……」
何か剣を振っているような音と声が少し低いから、男の子?の声が聞こえる、誰かいるかも。
運がいい。ちょうどよく人間の食べ物を分けてくれるかもしれない、もう腹が減っているんだ思考回路だってもうすでに爆発してる、一刻も早くそこに行かなければ。
気づけば、もう既にその場所に走り出していた。
音が鳴る場所に、草や茂みをかきわけると、そこは、他の木々がそこだけ切り取られたかのようになく開けた場所のようだ。
よくこんな場所があったなぁ。
そこには俺よりも少し身長がでかそうな10代前半で、短髪で白い布製の見た限り魔法が付与され、帽子が付いた服を着ている。
熱くないのかなぁ、あれ。間違いなく俺だったら、どこかで脱ぎ捨てているな。
そんな男の子が額に汗をかきながら必死に一つ一つ動作を確認するように鉄で出来た剣を振り、空を切っていた。何か努力しているのかな?
「あのこんにちは」
ちょっと声をかけてみると、少年はこちらに一瞬だけ目を向け俺の姿を確認すると剣を振るのを辞め、こちらに体を向け、何か探るような目つきで返事を返した。
何か、おかしな点でもあるのかな?まぁ俺でも、いきなり、森の中から、身長150に近い140センチ代の、腰まで長い金髪の女の子が出てきたら、不思議に思うけど。
「ああこんにちは、それで、今はでかい魔物が森の中にいるから、森の中に入らないようにと言われているはずだが」
そうだったのか!やっべ、そんな中、森の中に居たら不自然じゃん。俺は今、本に書いてあった、少年のような白い服と短パンの状態だし、というかお前はどうなんだよ。なんで森の中にいるんだよ
それに勢いよく話しかけてしまったけど、相手は人間じゃないか、下手に危害を加えると、討伐隊が組まれて襲われるって本に書いてあった、でも、かといって、もう話しかけてしまったし、というかもうほとんど腹が結構限界だし。
それにいつかばれると思うし、今言っても同じだよね。今は悪魔の証拠の翼と尻尾を消しているけど、後からばれてなんか言われるのもなんだしという余りにもおかしいことを考え。顎に手を当てる。悪魔達って基本名前ないからなぁ、どうしよう。
「俺はー……うーん……まぁサキュバスのサキだ」
速攻で自分の正体をばらした。そして証明するように、翼と尻尾もついでに1分間ほど出してから消した。名前はサキュバスのサキからとった。実に安直。
「サキュバスだと!」
目の前の少年は、すぐこちらに手に持っていた鉄でできた剣をこちらに向ける。心なしか、驚いているように見える、口を大きく開いているし。そういえば、悪魔だもんな、俺。
「サキュバスが、な、何の用だ。そもそも俺が、せ、聖騎士だと知って話しかけたのか」
「えっ……聖騎士だったんだ。知らなかった」
声を出し、その場で何の動きもなく俺は吃驚する。
所詮本で得た知識だが、見た目的にどう見ても白い鎧など来ていないし、紋章のついている物を身につけていない。
それに他のサキュバスの話によると、こちらに対して弱点の魔法である。
聖魔法を使って倒しに来るとんでもなく強い悪魔狩りだから出会ったら早く逃げた方がいいといわれるような存在だ。
ちなみに、聖魔法は、光魔法の上位である。
闇の上位は暗黒魔法。俺はもうそこまでいってて、あと少しで最後の最上位の常闇まで行けるかもしれないぐらいだ。
それはおいといて、今は目の前にいる少年だ、聖騎士と言ってたけど。
目の前の少年の剣を振る速度は控えめに言っても遅く感覚に頼らなくても目で追えるぐらい。それこそ、あくびをしていてもよけれるぐらい。それに今持っている剣が僅かに震えている。
そんなことを考えていると少年は剣を持っている腕を横に思いっきり薙ぎ払いながらいきなり声を荒げる。その動作も遅いけど。
「お前も俺が出来損ないと笑うのか」
確かに、総計すると弱いように感じた。
しかし今回は単に腹が減って声をかけただけだ。
少年がそこに一人だけ居て、周りに誰かいる気配がしない。
普通のサキュバスだったら、最初の魔物のくだりを聞いて、弱っているふりをしてそこに漬けこみ、襲っているだろう。多分ぼろぼろの服を着ながら女を利用して。
もちろんそんなことをするために声をかけたのではない、誤解を解くために、両手を横に振りながら俺は答える。
「違う違う、ただ腹が減ってしまって食料を探しているだけなんだ」
「ならば俺が一人でいるところを食べようと考えて襲いに来たんだな」
確かに考えてみたら俺自身はこんな考え方だが、回りから見たらどのサキュバスも考えていることが同じようなものだろう。
しかし、人間にも本で見た限りでは、いろんな考えを持っている人がいるように、俺も他のサキュバスとは違う考えを持っている。
やりたいことがみんな共通しているだけで考え方は人間と同じだ。
「それも違う。心は男なんだ。だから男から精を奪う気は俺にはない、単に食料を分けてもらえないか聞いただけだよ。それに襲うのなら最初から正体なんてばらさない」
そう答えた瞬間少年の顔が一瞬安堵したかのようにほぐれたが、すぐに戻し元の顔に戻す。
ポーカーフェイスだっけ、苦手なのかな。
少年はこちらの様子を窺うように問いかける。
「なら、逆に女なら襲うのか?」
「それは相手の了承をとってからだな、もしやるんだったら。あまり無理やりは好きじゃない、こちらも同じく、襲うのならまず正体なんて明かさない。それにもしやったとしても精を搾り取る気はない。悪魔が言うのもなんだがこれに関しては神にも誓うほどだな」
そこまで言うと少年は完全に剣を下し緊張が取れたようにその場で座り込む。
聖騎士だから、悪魔の前から逃げないで、戦うことを考えているからこちらに震えながらも剣を向けてきたのかな?
そして、人間に危害を加えない事を知って安堵したのかな。
「サキュバスにも変な考えを持っているのがいるんだな」
その言葉に俺は、思わずため息を吐き、苦笑し、少年と同じくその場に座り、尻尾だけ出して、その尻尾を左右に揺らし、そして少年の顔を、まっすぐ見る。
「まったくだよ。この考えと心が男だからそれを無理やりやらせにくる古郷からわざわざ逃げて来たんだから。というか信じてくれるのか普通に考えてみると悪魔のいうことだぞ。簡単に信用していいのか?」
いくら聖騎士とはいえ、神に誓うだけで、簡単に信用してくれるのなら。
いろんなサキュバスが、外見を俺みたいな普通の弱っている人間の女のふりをして平然と嘘をつくだろう。しかも上目遣いとか使いながら。
大丈夫なのか、そこら辺。尻尾も?状にして聞いてみると。
「お前がこっちに確認も取らずに草むらからいきなり飛び出て、不意打ちで襲ってきたらこちらは手も足も出せずやられていただろう。それなのにいきなり出てきてなにもごまかすことなく明らかに不利になる正体についてばらした。そして今も襲うどころかこっちの質問に答えてくれた。だから信用する。それに……いやなんでもない」
うれしいことを言ってくれるな、これが心まで女だったら、思わず惚れるかもしれかもな。女の子の気持ちとか知らないけど。俺、女だけど。
しばらくたち、少年がまた立ったところで、名前をまだ聞いていない事を思い出し、尻尾を消して、少年と同じようにその場で立ち。
「そういえば名前は?」
そう少年に名前を聞いた時、森の木々がざわめき始め、さっきまでの優しい風と違い、少し激しい風が頬をなでる。まだ朝だからか少し肌寒い。
少年は多分、汗かいていたし、そんなことはないかなぁ。ただ、汗の独特の匂いがするから、早く着替えてほしいけど。
少し気になったので、一応少年に注意しながら、後ろを振り向く。どうやら、少年も少し気になっているようで、一応、俺の方にも視線を向けながら、注意深く森の中を警戒する。
ちなみに、ちらっと見た程度なので、お互いに目が合う、などは起こっていない。
多分信用してくれるけど、種族が種族だけに、気を付けているのだろう。
俺も聖騎士だと言うから、気を付けているし。
しばらくたち、森の太い木々の間から、デカイ紫色の毛むくじゃらな足が見える。そして、その足はずんずんと足音を鳴らしながら近づいてきて、
ーーでかいサルが現れた
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