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2話

「佐東鈴裁判官様。その判決は間違いではないですか?確かに事情を知らなかったとはいえ…」


黒髪で顔が整い肌は雪のように白く。

薔薇のように紅く染まるドレスを着こなす東城朱莉は、額に汗を滲ます裁判官こと佐東鈴の目の前に立ちとても冷静な声で話す。

その立ち姿はとても気品に溢れていた。


「申し訳ございません王女様。お言葉ですが事情とはいったい何の事でしょう?」


さっきまでの態度を改め王女様に疑問を呈する。


「実はわたくしのお命をこの方が守ってくれたのです」


王女様がそう発言した途端に周りがざわめき始める。


「いったいどういうことですか!?」


周りと同じように裁判官も焦り始める。

王女様は周りを落ち着かせるために「皆さん落ち着いて下さい」と一言言い、落ち着いたのを確認すると話を続ける。


「ある国の暗殺者が私のお命を狙っていました」


「―――――!!」


話を聞く者たちの顔には驚愕の色が滲む。


「この情報はイベントの前日には知っていました。それでも私は市民との交流を深めたいがためにイベントを開きました」


「ですがよく考えてみればこれは市民を危険に晒す行為…単なる私の我儘わがままであり自己満足です…ですからこの方への処分を改めてください!」


私に落ち度があるのです、と王女は淡々と告げる。

クスッと裁判官は優しくそこで微笑む。


(こんな王女様初めてみたな…)


「そんな事があったのですね…わかりました八雲美織の処罰は無しつまり無罪としましょう。ですが王女様には国民に情報を伝える義務があります」


それを聞いた王女様は最初こそは落ち込んでいたもののその顔に色を宿す。

もちろんです、と彼女は告げる。

俺は謝罪とお礼を述べるために席を立ち王女様に歩み寄る。

だが王女様は「私の失態ですのでお気になさらずに」と話し。

それに―――――またお会いしますので…

と気になることを残し部屋を後にした。

☆☆☆

王女様が部屋から去り少しの時間が流れた後、政府の者が自宅までの車を出してくれるとのことでお言葉に甘え自宅まで帰って来た俺は、リビングのドアを開ける。

そこにいたのは久しぶりに再会をはたす母親の姿があった。

母さんはとても有名なモデルで世界中を飛び回っている。

会えるのは年に数回程度。


「久しぶり!母さん」


軽く挨拶を母親に行うといきなり泣きながら抱きついてくる。


「美織~!大変だったわね、王女様を救うために王女様にパイ投げを…」


「本当に大変だったよ!」


そんなやり取りをしていると自分の耳に聞き覚えのある声が届く。

声の出所を辿っていくとテレビがついていたことに気づく。

そこに映っていたのは俺の処罰を無罪にしてくれた東城朱莉様だった。

どうやらイベントの事について話しているようだ。

俺の事や自分の事などすべてを。

その行動力の速さに驚きを隠せないでいると、リビングの扉が激しく開け放たれる。


「さなえ~お帰り~僕は君がいなくて死にそうだったよ!」


「たっく~ん。私もよ~」


今リビングで暑苦しく抱き合っている俺の母親と父親。

母さんの名前は八雲 早苗(さなえ)

父さんの名前は八雲 拓司(たくじ)

父さんはプライベートと仕事は区別をつける人なのだが…ここまではっきりしすぎていると気持ちが悪い。

というか・・・


「父さん!何で何もやらなかったんだ!あのまま王女が来なかったら俺は処刑だったんだぞ!」


何も行動を起こさなかった父親に俺は怒りを露にする。


「すまんすまん。怒るな美織。実は城に行っていて王族の人たちに事のあらましを話していたんだ。その時朱莉様も居たのだが、それを聞いたら朱莉様急いでお前の所に向かったんだぞ?結果的にはちゃんと助けてやったことなる」


そんな事を得意気に話す父親。

そして右手を掲げ人差し指を立てながら「それとだな・・・」と続けようとするが、来客を表すチャイムがそれを遮る。

父さんは、来たみたいだな、と告げたかと思うと俺と母さんを玄関まで一緒に来てくれと促す。

父さんが玄関の扉を開け放つ中、そんな事に疑問を抱いていたが開け放たれた扉の目の前の光景のせいで疑問なんて吹き飛んでしまった。

目と鼻の先に私服姿の王女様がボディーガードを従えて立っていたからだ。

俺が固まっていると王女様は微笑みながら話しかけてくる。


「八雲美織様。お迎えに上がりました」


俺はすぐに父親に視線を向ける。

父さんは小さく笑いながら話す。


「実は陛下が美織のことをとても気に入ってな、お前を朱莉様のボディーガード兼執事にしたいと頼んできたんだよ!」


「う・・・嘘!?」


夜空を星が飾るなか俺の声が虚しく響き渡った。

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