僕達のお姫様
ヴァーデル侯爵家の一室では赤子の泣き声響いていた。それが、落ち着いた頃、そこでは二人の男女と産まれたばかりの赤子を抱き、幸せそうな雰囲気を漂わせていた。
少しウェーブがかかった琥珀色の豊かな髪を横で上手く纏め、その藍色の瞳で、産まれたばかりの我が子を愛おしそうに見つめているのは、ヴァーデル侯爵の妻のミレイリナ・ユン・ヴァーデルだ。
すぐ側で少しくすんだ金髪を遊ばせている優しげな端正な顔立ちをしている男はレイニード・ソゥン・ヴァーデル侯爵だ。
レイニードは自分の妻と我が子を同じ様ににみつめていた。
「ねぇ、ミレイ。ありがとう。」
ミレイリナはレイニードのいきなりの言葉に驚く。
「いきなりどうしたの?」
「いや、ほら。僕には君が居て、その君との間には二人の子供が居て、この子が三人目なわけだよ。」
「そうね。私達の新しい家族ね。」
「うん。だから、ありがとう。新しい家族をありがとう。」
前の二人の子供が産まれた時も同じ言葉を言われたことを思い出し、少し気恥ずかしくなり、レイニードをからかう為に、真面目な質問をした。
「ねぇ、この子の名前、どうしましょうか。」
レイニードはミレイリナの言葉を聞くなり、笑みをそのままに固まり、段々と慌て出した。
「ぇ?え?えええぇぇ?次の子供の名前は君が決めるって言わなかった?!」
「えぇ。言ったわね。」
「じゃあ、なんで、決まってないの?!」
慌てふためくレイニードを見てミレイリナは
満面の笑みを浮かべた。
「だって、貴方に決めて欲しかったから。」
ミレイリナの言葉を聞くなり破顔したレイニードにミレイリナは腕に抱いていた我が子をレイニードに差し出した。
レイニードは恐る恐るとミレイリナから自分の何分の一しか無い我が子を受け取り、優しく抱きしめた。
「そうだね、何にしようか。何がいいのかな?」
そう言ってから考え込み、少し経ってからレイニードはポツリと呟いた。
「フェルティナ。」
「………フェルティナ?」
呟かれた言葉を拾い、ミレイリナは首を傾げながら聞いた。
レイニードは微笑みながら、真面目な声音で言った。
「うん。この世界の創造主様の御名から少し頂いて、フェルティナ。」
「フェルティナ……。うん。いい名前だわ。」
「可愛い名前でしょ?」
「えぇ、とても。レイニード、ありがとう。
」
妻と微笑みを交わしながら、レイニードは自分と妻の三人目の子供に胸の中で語りかけた。
(産まれて来てくれてありがとう)
初作品なので駄文です。
ご容赦下さい。