表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
まいふぇち!  作者: 晴輔
1/1

序章





 人は、人のどこを好きになるの?


 ------1つだけ答えて。




 〆1

 私は完璧だった。完全無欠とはまさに私のことだろう。まずそれを理解して欲しい。

 何故なら私は全国で名実共にトップクラスの私立七帝(ななみかど)学園高等部にて、全学年含めて成績はトップクラス。スポーツは万能でいつもどこかの部から勧誘される。その上、世界的に有名なIT企業ハートリディア社の令嬢で帰国子女だからだ。これらは完璧な理由の1つ……あら、1つじゃないわね。

 でも、1番の理由はこの美貌。この学園の美少女コンテストで1位の座に輝き、歩く宝石とまで言われたこともある。

 特に、この絹のように背中辺りまで流れる長髪が自慢だ。母親譲りの誇りと言ってもいい。

 毎日かかざず手入れを怠らない。この髪を保つ為ならいくらでも投資できる。

 人生において最も嬉しかった賞賛の言葉は、友人の一言だった。


「昔、絵本で見た人魚姫の髪みたいだね! 綺麗」


 その友人には欲しがっていたサッカーボールをプレゼントしてあげたわ。もちろん、私のサイン入りのね。


 とにかく、理解してくれたかしら? 私の完璧の程を。

 そんな、神に愛された私が、学校のトップに立たずしてどうする。私はこの学校だけじゃない、どこにおいても絶対の存在でなければならないのだ。

 つまり、学園の頂上。……決して屋上じゃないわよ。所謂、皆を導くリーダー的存在! それは生徒会長! 会長……あぁ、なんという響き! ますます私の素晴らしさを引き立たせること間違いなし!


 だから、2年生へ進級したこの春、生徒会長に立候補することを決意した。

 まぁ、敵になる人間なんていないと思うけど。そう、友人と下校中、高笑いしていると……なんと、私以外に立候補する生徒がいると友人から情報を得た。

 なんということ! 私以外に会長を狙う人がいたなんて……!

 とりあえず有益な情報をくれた友人へ、感謝の印に、またサッカーボールにサインしてあげたわ。

 もう価値ありすぎて蹴れないわね、フフフ。


 情報によれば同じクラスの男子だった。名前は雨城 陽(あめしろ よう)。驚いた。彼のことは既知していたからだった。

 何故、驚いたのかは至極簡単で、雨城 陽は生徒会など、そういうアクティブな役職や地位にはこだわらず、ただただ、面倒事を嫌う昼行燈の様な男。

 しかし、1度だけだが1年最初の期末試験の時、学年トップの成績でこの私を打ち負かしたのである。あの時は教員含めて学校中全員が騒然とした。カンニング疑惑もでたが、この七帝でそれはありえない。

 私はあまりの屈辱に、彼の元へ行き今まで実力を隠していた理由を聞きだし、あわよくば、彼の個人情報を入手し復讐を遂げてやろうかと思ったのだが……


 彼は、1人放課後の教室で泣いていた。舌打ちしながら、学年トップの成績表を破り捨てていたのである。


 その映像が今も頭に焼き付いている。ただならぬ雰囲気に流石の私も関われなかった。

 それ以来、雨城 陽のことを僅かだが意識していた。彼は何故泣いていたのだろう?


 そして、それはピンチだと焦りが生まれる。無気力だが、良い言い方をすれば平和主義者。彼は、実際、同学年の男子から結構慕われている。しかも、成績も悪くないし問題も起こしてはいない。(遅刻はややあるようだが)

 考えてしまった。私という牙城を崩せるのは彼しかいないと考えてしまっていた。


 この完全無欠、おまけに神に愛されている私が、敗北を喫することはありえないのだが、万が一……いや、那由多が一ということもある。

 楽観するは愚者。備えるは賢者。そう私は後者なのよ。


 豪華絢爛の自宅で彼を生徒会候補から引きずり落とす作戦を立ててみる。


 ・彼の家を陸上爆撃機“銀河”で襲撃

 ・雇った殺し屋で抹殺

 ・ミッドナイトナイスガイ

 

 ……どれもなんて卑劣なアイデアなのだろう。我ながら美し……恐ろしい。

 しかし、賢者のアイデアでは無いわね……。むぅ、どうしたものかしら。

 しばらく、高級ソファの上で美味しいハーブティーを味わいながら黙考。過ぎゆく時間が心地よい風のように流れた時だった。

 ふと、閃く。


「……さすが私、この方法なら勝てるわ……ふふ、うふふ、おほほほほほっ!」


 思わず口端が緩み、エレガントに手先を口に添え、私は声を出して笑った。


「お嬢様……ぐすん」


 使用人はいきなり一人笑いだす私を蔭から見つめ目頭を熱くしたそうだ。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ