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宇宙人と、恋と、侵略計画。③

 当初私は、”準備”が整うまでに一年は掛かるとふんでいた。しかし、私の想像を遥かに上回る速さで期は熟することとなる。そのために、策を練った私までもが危険に苛まれてしまうのだが──。


──あれから、半年が過ぎた日のことだった。


「おい、何かおかしくないか。」

 買い物袋を引っさげたラモーが──怪訝そうな表情で、私にそう言った。(ちなみに、私とラモーは、近所のコンビニエンスストアにおける買い物を終えた帰りである。)

「言われてみれば──そうだ。先ほどから確かに、辺りに人影が全く見えないな。」

「──この時間帯は、そう、よく近所の子供が遊んでいるはずなんだが。」


 30mほど離れた物陰で、僅かな衣擦れの音がしたのをラモーは聞き逃さなかった。


「伏せろぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 ラモーが、いつか聞いた声と同じ──怒号の様な雄たけびを上げたのと同時に、私は、ラモーのその豪腕によって固い地面に押し倒された。脳みそが頭の中で揺れに揺れて、視界が曖昧になる。しかし、そんなものは──次の瞬間すぐに、消え去ることになる。


─ゴォ、ドォォン─

 雷鳴の様に、そんな音が響き渡った。それと同時に私は、今にも体が吹き飛んでしまいそうな衝撃を感じ、必死で地面にしがみつく。──爆発。そう、爆発が起ったのだ。──なぜか。理由はどうやら、思ったよりも簡単だった。私とラモーが、その、砂埃に塗れた身体を起こすと──そこには、屈強な、いかにも”軍人”という体格の地球人が立っていた。バズーカ砲の様な物をこちらに向けて、ただ、そこに──無表情に、無感情に立っていた。


 その地球人が手で合図をすると一斉に、多くの民家の玄関戸が開いた。その中から彼と同じ様な地球人がぞろぞろと出て来る。そして、五人、十人──いや、二十人以上の地球人が銃火器を手に、私たち二人を取り囲んだ。


「お前達は何者だっ。地球人がそんな”最新の銃器”を扱うなんて聞いていないぞ──。」

 ラモーがそっと身構える。──そう、彼が動揺するのも無理はない。半年前に本部へ伝えた”地球人の暗躍”について、私は、ラモーに一言も報告していないのだから。


 地球人たちは、ラモーの問いに全く答えないまま、一斉に銃口をこちらに向けている。それにしても、地球に存在する武装組織については、ラモーが地球に来る以前に全て把握し終えたはずなのだが──。これは、私の失敗というよりも私が”調べ終えた後に”結成された組織と見て間違いないだろう。


 そして、浅い緑色のカラーを持つ──そう、この謎の組織が装備している銃器について解説だが、彼らが使っている銃は、”破壊線※”でコーティングした弾丸を連射することが可能なものと見て間違いないだろう。これはすなわち、現在の全銀河系における最先端の中距離兵器である。異星間交流(ファーストコンタクト)にすら至っていない様な──そう、地球人程度の文明人が知り得るはずもない代物なのだ。


 戦況は最悪だ。まさかこれ程までに地球人が優秀だったとは──。全くの想定外である。


「おい、聞いているか──。」

 ラモーが、珍しく静かな声で私に耳打ちする。

戦闘(ここ)は俺が引き受けた。お前は何としても生き延びて──そう、このことを本部の馬鹿共に伝えるんだ。」

「正気か、幾らお前でも、これは──。」


 私が何と言って説得をしても、ラモーは聞く耳を持たずに──ただ、静かに笑って見せた。


「故郷を守れずに、何が戦士か。一人の友を救えずに、何が最強だ──。」

 そう言いながらラモーは、私の襟首を掴み引きずり始める。

「お、おい──。」

「臆する戦士など、道に転がる塵と同じ。俺は、臆して全てを失うくらいなら──迷わず、死を選ぶ。」


──ほんの一瞬だった。

 ラモーが私を引きずったままに軍勢へと駆ける。怒号と、銃声と、血肉が傷む音が辺りに響く。彼に引きずられる中で、私が見たのは──鬼の形相で地獄に立ち向かい、獣の様に獲物を喰らっても尚、誰よりも気高く──そして、屈強な戦士の姿だった。


 ラモーは血に塗れたその身体で、私を力の限り投げ飛ばす。荒い方法ではあったが、私は、そのお陰で何とか包囲網を逃れることに成功する。


「俺がいかに最高の戦士だったかを語れ。──俺は冥土で、最高の友に命を捧ぐことが出来たと神に語ってやる。」

 その言葉を最後に、ラモーの声が私に届くことはなかった。


─ゴォ、ドォォン─

 先よりも大きい爆発音とともに、何も見えなくなった。




──私はただ懸命に地を踏み、その場から逃げ去った。




※簡潔にいうと、光線銃の光線の様なもの。

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