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「よう、真壁じゃあないか。」

 この男が、勤務先で知り合った私の友人で、名前は”仲橋(なかはし)”という。

「あぁ、奇遇だな。」

「お前も今日は休みなのか?」


 私が首を縦に振ると仲橋は、何か思いついた様な素振りをした後で、悪戯を企んでいる少年のように無邪気で性格の悪い笑みを浮かべる。私はこの男が苦手だ。この二ヶ月で友人関係になったのは間違いないのだが、堅物で神経質な私と、軟派で無神経なこの男とでは今一噛み合わない部分が多いのだ。私が物思いに耽っている内に、仲橋は携帯電話を取り出ししきりに誰かへメールを打ち始めていた。


「お前この後付き合えよ。」

 携帯電話の画面に目を落としたままの仲橋がそう言った。

「何かあるのか?」

「ん、まぁな。”合コンもどき”な食事会を企画したんだけれど、全然人数が集まらなくてな。困っていたんだ。」


 彼は勿論私の正体を知らないのだが──私のパトロンである政府上層部は、私が任務中に”合コン”へ行くと知ったらどう思うのだろう──。そんなことを考えながら、結局私は、仲橋に連れられてノコノコ着いていくのだった。


──それから、地球の地下鉄で二駅ほどの距離を歩いた後。


 私と仲橋は、住宅街の片隅にある洒落たベーカリーの前で足を止めた。カフェに併合された小さなベーカリーだった。確かに”合コンもどき”の様だ。特に言及はしていなかったが時間はまだ正午過ぎといったところで、この店もとても”合コン”というフレーズが連想される様な外観ではない。私と仲橋が店の中に入ると、この洒落た店に似合わない中年の店主が無愛想に「いらっしゃい。」と言い、奥へと案内してくれた。


「や、お待たせっ。」

 仲橋が声をかけると、既に席についていた四人が店主とは対照的な愛想笑いで、こちらを見た。


 四人の内一人は男性だが、それ以外は皆女性だった。右から順に、モデル風の女性、少し男勝りな雰囲気の女性──そして。

 

──”不覚だった。”今日初めて会った女性に目を奪われてしまった。


 その女性は、他の二人と比べると──どこか、個性に欠けている様な印象を受けた。決して絶世の美女というわけではなく、むしろ本人が望んで引き立て役を演じている様にすら思えた。しかし、私は彼女を一目見てから、しばらく身動き一つ取れなくなるほどの動悸とめまいに襲われた。立ち尽くしている私を仲橋たちが案じているのを感じたが、それでも動悸は治まらなかった。私は、既に席についていた四人に詫びてから一先ず、店の奥にある化粧室に逃げ込んだ──。


 あるはずがないんだ。そうだ、我々と、地球の人間。あまりにも立場が違うはずだ。我々は”この星”を私利私欲のために利用すべく侵略する。我々は侵略するだけの高度な文明を持つ──侵略するだけの、絶対的な資格のある”侵略者”だ。それに引き換え、どうだ。地球の人間は害虫だ。我々にとっても、良環境の”この星”にとっても──そう、我々が侵略する上での害虫でしかないはずだ。仲橋も彼女も、例外はない。


──この感情が”恋”であるはずがないんだ。


 私は、刺すように冷たい水を顔に浴びて、化粧室の扉を開いた。

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