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「ボクは夢をみる」番外編「喧嘩上等ッス」

 頭がガンガンする。

「病院にいかなきゃダメ?」、こんな痛みぐらいで気弱になって馬鹿みたいだ。

口の中はサビた鉄の味がしていて、舌を動かしたら傷口から血が流れ出た。

身体中がギシギシと痛んで、顔を上げるのもままならない・・・


「・・・クっ」


薄汚れたコンクリートの上にぶっ倒れている無様な自分の姿、なんでこんな目に?

「しかたないだろ、ヒトの女に手を出したんだから」そりゃそうだ・・・相手が悪かったと反省中。

地べたに顔を押し付けられたまま、引きずられて、まさにボロ雑巾って感じ?


もしかしたら、少年Aにしちゃうかもな・・・コイツのこと。

急に可笑しくなって、笑いを必死で押し殺している自分に気が付いた。


「テメー、何笑ってんだ!頭おかしーんか!!」

「グフッ」


腹を思いっきり蹴られた衝撃に、口の中に溜まっていた血を噴出す。

自分の吐き出した血液が、顔にヌルリとくっ付いて気持ち悪いな・・・

彼女を寝取ったくらいで、尋常じゃないよ、まったく。

自分が非力なのはしかたないとしても、正々堂々と相手にならなくたって良かったのに・・・

オレって、ホントのお馬鹿さんってね。


「馬鹿な奴、マサシさんの彼女に手ぇ出すなんてなぁ」

「ホント、どーなるかフツーはわかるよなぁ」


オレ、フツーじゃないからわかんない。

オレとマサシとかいゆー高校生を取り囲んでいる奴らの靴が、僅かに視界にはいるだけ。

きっと目とかスゲー腫れてるんだろうな・・・重くて開かないもん。

ほとんど感覚のない腕で、血溜まりから逃れようと仰向けに身体を転がした。


「うぇ、サイアク」

「マジヤバクね?」


そんなにスゲーんだ。

何がなんだかわかんねー、あー、喉渇いたなぁ・・・

身体中が物凄い悲鳴をあげてオレを襲っているってのに

まったく恐怖を感じないのは、オレが元から現実逃避してるからかもしれない。


「キレイな顔してからって、調子のってんじゃねーぞ、コラ!」

「マサシさん!!」


蹴られるのを覚悟して身構えていたけれど、身体に激痛は走らない。

なんで?

顔のスグ横でバタバタしないでくれる?うっとうしいっていうか

いつ踏みつけられるかって、気がきじゃないんだから。


「もう止めてよ、これ以上ヤったらマジで死ぬって」

「うるせー田辺、ヤらせろ!」

「もう十分だよ、コイツだってわかってるよ」

「・・・チッ!テメー、今度ミホに近づいたら本気でぶっ潰すぞ」


いや・・・もーかなり本気でぶっ潰されてるのに、これ以上ってアルんだ。

親切な誰かさんのお陰で命拾いしたって?お節介なヤツもいるんだな・・・

意識が少しずつ途切れ始めているのがわかる、頭の上でゴチャゴチャとした話し声。

次に気が付くと、奴らの気配は無くなっていた。


このまま死んだりして・・・出血多量?それか窒息死かも・・・

さっき仰向けになったせいで上手く息が出来ない・・・苦しいな・・・コレ・・・

ゴホゴホッと咳き込んだ拍子に、激痛が全身を走り抜け、オレを心地良い世界にいざなっていった。


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