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円の街



俺達は森の出口まで来ていた。


「外には私の見張りがいるから氷夜には私以外からは見えなくなる術をかけるぞ。」


見張りか、やっぱりお姫様は大変なんだな。


「なんで、見張りはこの森には入って来ないんだ?」


「この森は聖森といって王族以外は入れないんだ。」


少なくとも、天界人ですらない俺が居てもいい場所ではないな………


「俺がこっから出ていく所を見られたらたしかに、まずいな。」


「良くて死刑。悪くて公開処刑かな。」


どっちにしろ死ぬのかよ………

まぁ、俺は死んでも戻るんだけど。


「術をかけるからじっとしてろ。」


神楽の手から光が漏れ、俺の周りの光の屈折率が変わった。


「これでよし。

それから、外では能力をできる限り使わないでくれ。

天界人も人間も基本的に違いはないから、能力さえ使わなければ、バレることはないだろう。」


「了解。」


ようは、誰にも気付かれなければ問題ない訳だ。

周りの重力の歪みを感知する検索(サーチ)や、体の内部だけに作用している重しには影響はないだろう。


「で、いつまで俺は透明人間でいればいいんだ?」


「どこか人のいない場所を見つけたら、私が近くで待ってるから、氷夜はそこに行って、術を解いて私のところに来てくれ。」


「術はどうやって解けばいい?」


「誰にも見つからないように能力を使って解いてくれ。

できるか?」


「大丈夫だ。

じゃあ、そろそろ行くか。」













目の前に広がる円の街並みは昔の日本というよりも昔の中国に近いかもしれない。

しかし、西洋人風の外見の人や、髪の色が赤や青などの人が着物を着て歩く姿には多少の違和感を感じる。

ちなみに、神楽は動きやすいように、着物ではなく、巫女のような服装をしていた。



街には活気があり、市場には人が溢れている。





「氷夜、はぐれるなよ。」


神楽は俺だけに聞こえるようにつぶやく


「氷夜、この手はなんだ?」


俺と神楽は手を繋いでいた。


「はぐれないようにと思ってね。」


俺は神楽の耳元で囁いた。


「やめろ…

見張りに気付かれる。」


神楽は動揺しまいとし、繋いでる腕も周りから不自然に見えないように努めた。


しかし、神楽の声は色っぽくなっており、氷夜は更に調子にのって繋いでる手の指を絡ませた。


「な!?」


「ほら、気付かれちゃうよ?」


神楽の我慢する姿によけい意地悪をしたくなってしまう。


人のいないような場所を探すのは神楽に任せて、俺はしばらく神楽の反応を楽しませてもらう事にした。





「氷夜、あそこに人気のない空き地がある。

私はここで待っているから、行ってきてくれ。」


しばらく経って目的の場所が見つかった。


恥じらう神楽の姿を充分に堪能した氷夜は、満足してその空き地に向かっていった。









「この周りにある靄みたいなのが、光の屈折率をかえているのか。」


能力を使い、靄のような物に重力操作をし、無理やり霧散させ、術を解除する。


これで透明人間ではなくなった氷夜は神楽のもとに戻ろうとしたが、先ほどの場所には神楽だけでなく、神楽の知り合いであろう男が神楽と楽しげに話をしていた。







「神楽、待ったか?」


わざと馴れ馴れしく肩を叩く。

すると、神楽と喋っていた男は露骨に怪訝な目で俺を見てきた。


俺はスマイルをお返ししてあげた。



「氷夜か、随分と早かったな。」


「失礼ですが、神楽さんとはどういったご関係で?」


お〜、怖い。

男は俺を睨みつけるだけでなく、体中から不快オーラを発していた。


「私から紹介しよう。

こいつは友人で、名前を氷夜という。」


「今は"まだ"、"普通の友人"の氷夜です。」


痛い!!!!

神楽の奴、バレないように思いっきり足を踏んづけやがった。


「で、こいつは、私が世話になっている道場の門下生で、雄也だ。」


「"神楽さんにいつもお世話になっている"雄也です。

どうぞよろしく。」


敵対心丸出しで握手を求めてきやがった。


まぁ、正直な話、今は神楽にしか興味ないし、他の人間など、文字通り眼中にない。

そもそもで、白夜とマゼリナ、そして神楽以外の人間がどうなろうと俺には関係ないのだ。


よって俺は、


「俺、神楽以外の人間は眼中にないんで。

行こうか、神楽。」


態度と言葉で握手を拒絶した。

ついでに神楽に気付かれないように男(既に名前を忘れた)に軽く殺気を浴びせる。


男は腰を抜かすことこそなかったが、足が震え、顔が恐怖で歪んでいた。


神楽の手を握り、強引にこの場を離れる。


「氷夜、いきなりどうした!?

またな、雄也!!」


男は恐怖で神楽に返事もできないようだった。









「どうした氷夜?何かあったのか?」


「いや、洋服だとやっぱり目立つみたいだから、早く着物に着替えたかったんだよ。」


言い訳としてはかなり信憑性があるだろう。

実際さっきから周りの視線が痛いし。特に男からの。


多分、神楽の手を引っ張って歩いたのが大きな原因だろうけど。



本当は氷夜の容姿が整っている為、女からも熱い視線が送られていたのだが、それこそ氷夜の眼中にはなかった。



「確かにそうだな。

ただでさえ氷夜は背も高くて目立つんだから。」


どうやら納得してくれたようだ。


「しかし、だからといって、私以外眼中にないなど、街中で言うのは冗談でも関心しないな。

いや、もう慣れたけどな……

若干諦めてもいるし。」


「諦めてくれ。」


最高の笑顔で返事を返す。


「はぁ〜。」


ため息をつかれてしまった。

今ので赤面してた頃が懐かしい。

といっても、まだ会ってから一日も経ってないが。




「ほら、あそこで服が売っているみたいだぞ?」


俺は見つけた服屋に向かう。


「氷夜、いつまで手を繋いでるつもりだ?」


俺と神楽はいまだに手を繋いでいた。


「いつまででも?」


「氷夜、そろそろ私も疲れてきたぞ。

それにこのままじゃ寸法も測れないだろ?」


「それもそうだな。」


神楽に嫌われたくはないので素直に従う。

退き際も肝心だ。












そして無事着物に着替えた俺を見て、神楽は決心したかのように言った。


「では行くとするか。」


「どこに?」


「我が家、王宮にだ。」









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