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鍛錬


††††††††††††


朝早くからはじめて今日の分の稽古を昼までに終え、私は氷夜と共に私の新しい霊術について話あっていた。


「神楽、とりあえずは時を長く止められるようにならなくちゃね。

まずはその特訓からかな。」


「そうだな。」


私は霊力を込めて鈴をならす。

すると氷夜の周りにこの間のような黒炎が現れた。


「う〜ん、実戦で使うにはまだまだ、かな…

もしかしたら、物を媒介にしたやり方が霊力を霧散させているのかも。

霊術で鈴の音は出せない?」


「やってみよう。」


私は霊力を集め、神楽鈴の音をイメージしそれを発した。


「シャン」


氷夜の黒炎が今までとは比べものにならない程燃え上がった。


「驚いた、今ので一秒の半分くらい時が止まったよ。」


「次は霊力を乗せてやってみよう。」


「今のは霊力を乗せてなかったの!?」


氷夜の言葉を無視して霊力を乗せて鈴の音をイメージする。


「シャン」


すると今度は更に黒炎は大きくなった。


「……凄いね、一秒も時を止めたよ。

これなら十分実戦でも使える。」


「だが、氷夜には効かないではないか。」


「それは俺の"リリス"の概念の方が神楽の時を操る概念よりも強いからだね。

でも、俺以外なら充分効くと思う。

ただ、強い相手だと効いても抵抗されて数瞬しか時を止められないかもしれないから、今よりももっと長い間止められるようにならないと強敵相手に使うのは難しいかな。」


「なるほどな。」






それから私はこの術をなるべく長く続かせるように自分なりにいろいろ試してみた。














「待って神楽。

今のどうやったの?」


それは私が特訓をはじめてから四時間がたった頃だ。


氷夜はびっくりしたように私に尋ねてきた。


「今のは鈴の音を響かし続けるんうなイメージでやってみたんだが、どうかしたのか?」


「気付いてないのかい?

今、神楽は時を止めずに遅くさせていたんだよ。

ちょっと、ひたすら響かせるようなイメージで鳴らしてみてくれない?」


「分かった。」


私は永遠に続く響きをイメージした。

すると、さっきまで気がつかなかったが、確かに時が延びるような感覚に襲われた。

どうやら、時を止めるよりも時を遅くさせる方が燃費がいいらしく、私の体感でそれは十秒ほど続いた。


「なるほど、今のでだいたい時間を十分の一くらいに縮小してるね。

つまり、神楽は相手よりも十倍早く動けるんだよ。

たぶん、練習すればもっと早く動けるようななると思う。

でも時を止める訳じゃないから、これは実戦も兼ねて練習した方がいいかな。」


たしかに、相手よりも十倍早く動けるといってもたかが十倍だ。

相手の行動を止めるのとは違い、戦闘の最中に使うとなると、それだけで術の発動も難しくなるだろう。

そう考えると、やはりこれは実戦練習をした方がいい。


「そうだな、早速たのめるか?」


「ちょっと待って、その前にこの術の名前を決めようよ。」



「ああ、名前があった方が呼びやすいし、便利だ。

時を操るのだから"時霊術"で良いとは思うが、それぞれを何と呼べばいいだろうか?」










結局名前を決めるのに私達は二時間を費やした。


「じゃあ、時を止める方が時霊術【静】

遅くするのが時霊術【瞬】で決まりだな。」


私達は長い塾考の末に無難な名前をつけた。

その時にはもう、あたりは暗くなってしまった。



「今日はもう遅いし、慣れないことばかりで神楽も疲れてるだろいから、この辺りで切り上げよう。」


実際、私は氷夜のいう通り、クタクタだった。

特に最後の名前つけは精神的にかなり疲労した。


「そうだな。」





帰りは氷夜がここと家を直接つないでくれるので、そこはとても楽だ。













私は家に着くと同時に布団に倒れこんでしまった。







「神楽、今日はお疲れ様。」


目を開けるとそこには氷夜の顔があった。


「不甲斐ない。

疲れて寝てしまったようだ。」


「しようがないないさ。

時を操るなんてとんでもないない事をやってのけたんだから。

それに今日一日でだいぶ成長したしね。

むしろ俺は神楽はよくやったと思うよ。

ほら、ご飯作ってきたから。」


どうやら夕飯を作らせてしまったらしい。

これじゃあ、まるで氷夜が奥さんのようだ。

いや別に結婚してる訳じゃないから奥さんというのもおかしいかもしれないが、だけど、そういうのも………。


疲れた頭で更に混乱し、私は無意味にテンパってしまった。



「顔が赤いね、やっぱり疲れてるんだよ。

ほら、俺が食べさせて上げる。」


そういって氷夜は作ってくれた肉じゃがを私に食べさせてくれる。

例によって私は抵抗しなかった。


「おいしい?」


「あぁ、うまい。」


氷夜の作ってくれるものは相変わらずとてもおいしい。


「どれどれ………うん、上手くできたみたいだ。」


氷夜自身も満足できる味だったようだ。

しかし私は重大なことに気付いた。


氷夜、さっきまで私に食べさせていた箸を使って今食べたか!?

それが、思わずなのか、わざとなのか分からないが………


これって間接キス!?




「はい神楽、あーん。」


氷夜は更にその箸で再び私に肉じゃがを食べさせようとする。


ま、待てこれは私も間接キスってことだよな!?

それは、恥ずかしいんだが………

しかし氷夜は気がついてないようだし…

むしろここで意識するような態度をとる方がよっぽど変か?


私は気にしないようにして氷夜からの肉じゃがを食べた。

すると氷夜は私の耳元に口を寄せていき……


「間接キスしちゃったね。」


囁いた。



「なんで氷夜はそういう恥ずかしいことを言うんだ!?

しかも耳元で!!」


「でも嫌じゃないんでしょ?」


……意地悪だ!!

意地悪氷夜が光臨している!!

こうなると私には勝ち目がない。


「嫌……じゃない。」


「素直な神楽はかわいいな。」


「知らん!!」


私は早々にこの甘々空間を終わらせる為に布団に潜る。

氷夜は何も言わず布団の上から私の頭を撫でてくれた。

私は気持ちがいいのと溜まった疲れによりすぐに眠りに落ちた。













††††††††††††


神楽と鍛錬を始めて一週間が経った。

あれから何度か暗殺者に狙われたが、神楽に気付かれないよう秘密裏に処分している。




この一週間で神楽は目まぐるしい成長を見せた。

今ではまるで初めから使えたかのような適応力だ。

もちろん、神楽の努力によるところもある。

毎日倒れるまでやっているのだから。


まぁ、そのおかげで俺は弱った神楽を愛でることができているんだけど。


しかし、神楽の成長の速さは神楽の努力だけではどうにも説明がつかない。


最初に有耶無耶になって忘れていたが、神楽の名前は"月詠" 神楽 だ。

俺は神楽の成長の早さは神楽が神、もしくはそれに準ずる何かであるからではないかと推測している。




そんな事はどうでもいいんだけどね。

神楽が神だからって俺が神楽への態度を変えるわけじゃないし。





そう、それが問題なわけではない。

では何が問題かというと、単純に神楽が強くなりすぎているのだ。

すでに一瞬だけなら俺の概念重力操作をも使った最高スピードに追いつける程になっている。

神楽はまだ、それをしてしまえば霊力が尽きてしまうので、実戦では使えないがこの成長速度なら近いうちに実戦で使えるようになるだろう。

そうなると、俺が手加減できなくなってしまい、神楽を怪我させてしまうかもしれない。

それが俺は心配だった。













それは神楽と鍛錬して一週間後の朝食の時だった。


「氷夜は強すぎだ!!」


これまで、実戦を兼ねた試合は多くしてきた。

が、今までの模擬戦は全て俺の勝利で終わっている。

いくら神楽の成長が凄まじいといっても、俺が負けるわけがない。


「護衛が神楽よりも弱かったら意味ないだろ?」


「確かにそれはそうだが…

だが、やはり負けっぱなしはつまらん。」


「じゃあ、俺に一撃でも当てられたら御褒美をあげよう。」


「良い案だが、その御褒美とはなんだ?」


……しまった、俺ってお金ないし、御褒美が思いつかない……



「えっと…、神楽の願いを一つだけかなえてあげよう。」


「なんでもいいのか!?」


「俺にできることなら。」


「よし、早速聖森で勝負だ。」


「ちなみに、できなかった場合は罰ゲームがあるから。」


俺は満面の笑み。


「………………」


顔をしかめる神楽。


「……分かった。」



苦悩の末、神楽は了承した。

どうやら、よっぽど俺にかなえて欲しい願い事があるようだ。













場所は変わって聖森。




「始めるけど、準備はいい?」


神楽は自分の刀を構え、俺も神楽が用意してくれた剣を構える。



「いつでも大丈夫だ。」



二人の間に緊張が走る。






木の葉が一枚、湖に波紋を広げた。



その瞬間、俺も神楽も動いた。


神楽の鈴の音が広がり時霊術【瞬】が発動し、時間が遅くなるのを感じる。

その遅くなった時間に捕らわれず動くことのできる神楽は俺に刀を振り下ろす。

だが、重しを外した俺はその遅くなった時間内でも充分神楽に対応できる。

神楽の刀を俺の剣が上に弾いた。

すぐさま、しゃがんだ神楽。

ほぼ同時にその頭上を俺の蹴りが通り過ぎた。

低姿勢になった神楽はそのまま足の脚力も上乗せした突きを放つ。

俺は剣の柄の部分を刀の側面にぶつけ、その軌道をそらす。

俺の顔のすぐ横を通り抜ける神楽の刀を無視し、そのまま、手首を返し神楽を斬りつける。

神楽は俺が剣の柄をぶつけた瞬間に左手を放しており、刀の鞘を腰から引き抜きそれで俺の攻撃を受け流す。

それによって俺の剣は上の方に流され、未だに俺の顔の横にあった刀が再び俺に迫る。

俺はそれを今度は手刀で弾く。


「シャン」


その瞬間、神楽の時霊術【静】が発動。

俺は時が止まるよりも先に"リリス"を呼び出した。

しかし、その一瞬の間に神楽は刀を鞘にしまい、居合いの構えをとった。


神楽は今まで時霊術【静】を使用する時は必ず静止していた。

というのも時霊術【静】は時霊術【瞬】に比べて集中しないと発動しないらしいからだ。



この一戦で更に成長したのかよ……



刹那、神楽の刀が一閃。

しかも、それが放たれる瞬間、時霊術【瞬】の効力が更に増大。

それにより神楽はもう一つ上の"早さ"に到達した。

どんどん遅くなっていく時間のなか、俺は概念重力操作により自分の速度を相対的に上げる。

これにより、再び神楽と同じ"速さ"になった俺はすでに直前まで迫りくる刀をギリギリ間に合った指先で止めた。

神楽は早くなっただけであり、力が強くなった訳ではない。

だから、神楽の刀を俺は指先だけで止められた。




「勝負あったな。」



「はぁはぁ。」


神楽は倒れて息を荒くしていた。

それでも、最初は意識を失っていたのだから、大したものである。


「そうだ、最後のいきなり早くなった奴は時霊術【刹那】と名付けよう。」


勝手に命名。



「やけに張り切ってたけど、神楽は俺に何をお願いしたかったの?」



「……世界を見てみたかった。

魔界、人間界、天界の全てを見渡せるところに行きたかったんだ。」



そんなこと、頼めばすぐにつれてってあげたのに。


神楽は俺に頼みごとをすることは殆どない。

それがちょっぴり俺には寂しかったりする。









しばらくして、神楽は回復し、息も整ってきた。


「やっぱり氷夜は強いな。」


「当たり前だろ。」


しかし、実際さっきの最後の攻撃は危なかった。

そろそろ本気で戦わないと足元をすくわれるかもしれない。



「では、お楽しみの罰ゲームの時間だ。」


「げっ、覚えていたのか…」


「もちろん!!」



俺は神楽に近づき、神楽を抱いた。


激しい戦闘の後だけあって神楽の巫女服や髪は汗でしっとり濡れていた。

ちなみに俺は汗はかかない。


「氷夜、せめて水浴びをした後にしてくれないか?」


神楽は顔を真っ赤にして上目遣いで俺に懇願した。



「そんなかわいい顔してもダメだよ〜。

それに、それじゃあ罰ゲームにならないしね。」


俺は神楽の首筋に顔をうずめ、神楽に聞こえるように思いっきり息をすった。


ちなみに、俺は匂いフェチではない。

ただ、神楽の匂いが好きなだけ。



「やめろ、汗臭いだろ?」


「いや、神楽のいい匂いがするよ。」


「この変態。」


神楽は顔を更に赤くしてそう呟いた。

どうやら、先ほどの戦闘で疲れきってしまっているようで、抵抗はなかった。


「ぺろ」


俺は神楽の首筋を舐める。

汗をかいたその場所はしょっぱかった。


「や、やめろ!!」


これには流石の神楽も抵抗してきた。


「罰ゲームなんだから、大人しくしてて。」


俺はそれを無視し神楽の首筋から鎖骨にかけて舌を這わせる。


「あっ」


神楽は時折、甘い声を出す。

すると俺は調子にのって更にペロペロした。


しばらくその罰ゲームは続いた。













「はぁはぁ、氷夜に汚されてしまった……」


「失礼だな、俺の唾液は綺麗だよ。」


罰ゲームにより神楽の声は絶え絶えになっていた。


俺は疲弊した神楽を有無をいわさずお姫様抱っこをして"どこでもドア"をくぐり家まで帰った。

風呂にも入れようとしたが、それは神楽の猛抵抗にあい、諦めた。

神楽はそのまま風呂に一人で入っていった。



「さてと、俺はお姫様の願いを叶えに行きますか。」













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