009.監禁、なう!
ピピピピピピピピッ!!という目覚まし時計の電子音ではなく、外にいるカラスの「カァーカァー!!」という、けたたましい声で目が覚めた。
やっと変な夢から覚めた…。ぬくぬくと布団を堪能しながら、時計を見るとまだ4時前だった。どうりで辺りが薄暗いわけだ。
今回の夢は中々長くて 内容が濃かったなぁ。まぁ夢の中で見つかったことはあっても、捕まったことはなかったし…。…、なかった…よね? あれ?昔にもあの世界の夢で、一度捕まった事があるような気がする…。
何かを思い出せそうになりかけた時、私の腕がズキッ!!と痛んだ。意識すると腕じゃなくて他にも体のあちこちが痛い。イタイ イタイ イタイ…
ズキズキッ。痛みで目が覚めた。
でました、夢オチ。それも夢の中で夢を見ちゃったよ。どんだけだし。ため息をつくと、顔がズキンッと痛んだ。あれ、なんで腕以外にも痛いわけ?というか、左目が上手くあかない。身体のあちこちが痛いのは夢オチじゃなかった。
私は右目をあけて、周りを伺う。どうやら私はベッドの中にいるらしい。それも、あのお姫様の部屋ではなく、もっと狭い部屋…とはいっても6畳の私の部屋とあまり変わらない広さだけどね。
丸い50cm程の窓が一つあり、暗い部屋を窓からの光が照らしている。
木材で出来た勉強机のような机と、椅子、机の上には数冊の本とランプが置いてある。扉は3つあり、1つは細いので想像するにクローゼットだと思う。もう1つは、外へ通じるのだろうドアと 残り1つはたぶん、トイレとか洗面所的なものだろう。
なんで、私はここで寝ているのだろう?痴漢撃退した後の事が思い出せない。目も覚めてきたので、とりあえず顔を洗おうと洗面所にむかった。思った通りそこは洗面所だったが、予想が当たったのを喜ぶよりも、鏡に映った自分の顔の衝撃の方が上だった。
お、お化けがいるぅぅ!!
そこには、左目が大きく腫れて青くなっている自分の顔が映っていた。私の黒髪は胸の下辺りまで伸びている。きっと、白い服を着ればお化け屋敷で人気者になれるだろう。それも特殊メイクではなくて、本当の怪我とか、かなり体張ってんな私!!自分の顔見て、尿をチビッちゃいそうになったのは初体験である。
先程のクローゼットからタオルを出し、水につけて腫れた顔を冷やす事にした。調べてみると、掴まれた腕と右肩に痣が出来ていた。
覚えてないけれど どうやら、痴漢対処法は王様の逆鱗に触れてしまったらしい。だからって女の子を殴るのはヨロシクないわぁ。王様の将来はきっとDV男だな。
一応、チャレンジとしてドアを開こうとしたけれど、外側から鍵がかかっていた。まさかの監禁!!?でも、あの王様なら考えられるなぁ…。夢だからなのか、イマイチ危機を感じない。
唯一ある丸い窓を覗くと、結構 綺麗な風景だった。赤く染まり始めている空は美しいし、城下町が見えて人々が活動し始めるのが分かる。お城の屋根に隠れて半分しか見えないが、手入れされた城の庭も見え、花が咲き誇っている。
私は勉強机から椅子を持ってきて、顔を冷やしながら飽きることなく その風景を見ていた。
カタンッ
物音で意識が戻ってくる。あぁ…飽きることなくか言っといて早速、窓の所で眠ってしまったらしい。部屋には美味しそうな匂いが充満しており、机の上にご飯がおいてあった。起きようとしたら、寝る前にはなかった肩にかかっていたシーツが落ちた。いつの間に人が入ってきたんだろう。
はふはふ しながら野菜スープを飲み、食パン、デザートのフルーツを食べた。もぐもぐ食べながら、殴られても監禁されても、食欲のある自分に驚きながらも、もしかしたら これは夢じゃないのかなぁ?とリアルすぎる夢に、疑問を抱き始めたのであった。え?気付くの遅いって?
今度から就活する時の履歴書の特技に、現実逃避を加えておくから許して欲しい。
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