003.不可抗力なんです(´・ω・`)
~お城の庭師 ケイト視点~
今日も、またお城に『獣人』様が出現したらしい。半年前ほどから、姿を頻繁に現している『獣人』様は、どういうわけか逃げ回っている。城の者達も困惑を隠せず、もちろん例を漏れず俺も驚いている。
前の『獣人』様は、前王様が病気で倒れる前に1度だけ見た事がある。黒い羽根を背中から生え、足が人間とは違い4つの指と大きな爪がついていた。高貴な色として尊われている『黒』を全身で身につけている『獣人』は珍しく、王様と寄りそっている姿は美しかった。
あの時、まだ俺は16歳のペーペーな庭師だったが、10年たった今でもその感動を覚えている。
そのため、王様に1匹現れるとされる『獣人』様が現れた時には、とうとう新しい王様が認められたのだと誰もが思った。契約をしに来たのだと。
だが、その予想は大きく裏切られ 何故か前代未聞の『獣人』様との追いかけっこが始まった。最初こそは、『獣人』様が自ら心を開き 近づいてくるのを待っていた王様だったが、さすがにそろそろ契約を結ばないと色々問題が生じてきたらしい。
ということで、今日も城の者たちは『獣人』様との追いかけっこをしているわけである。
もちろん、俺も探すために派遣されているのだが。はっきり言って、このデカイ城の中で見つけるのが不可能だ。
それも、タイムリミットつきで、『獣人』様は現れて3時間ぐらいで消えてしまうらしい。王様が感知できなくなると言っていたそうなので、本当なのだろう。
早々に諦めて、昼寝でもしようかと裏庭に来た俺の視界に、白いふわふわした「なにか」が揺れているのを発見した。
…なんだあれ?
俺はイカツイ顔しているから人には言えないが。大の動物好きである。というか、可愛いものは好きだ。可愛いは正義だ。まぁ、だから庭師なんていう遠まわしの花弄りをしている。
あのふわふわ感からいって、なにかの小動物だろう。飼育小屋からでも逃げ出したのか。つい、顔が二ヤケてしまう。
1つ言っておくが、城の者には今回の『獣人』様の特徴を何一つ知らされていなかった。見たら人間とは違うから、すぐに分かるだろうという理由と、逃げ足が速いための情報不足が理由だろう。
だから、俺がその時何も知らずに ニヤけて「なにか」に触れようと思ったのも、仕方ないと分かってくれ。と言い訳をしておく。
逃げないように、茂みに近づき 驚かさないようにそっと尻尾に触れた、瞬間。
「ぅあっ、やんッ!!!」
妙に色っぽい声とともに、現在逃亡中の『獣人』様が茂みから出てきた。
もう1つ言っておくが、今回の『獣人』様の性感帯が尻尾なんて情報は何一つ知らされていなかった。
だから、俺が何も知らずに その色っぽい声を鳴かせてしまったのも、仕方ないと分かってくれ。と言い訳をしておく。
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