010.このメス豚めっ!!
皆さん、ご機嫌いかがでしょうか?私は元気に監禁生活を送って……いるわけないでしょ、おバカさん☆監禁されて不愉快に感じないほど、図太くない。
この部屋に監禁されてから2週間経ち、顔の怪我も内出血していた所が青から黄色になり、良く見ると腫れてるなというレベルまで治ってきた。ちなみにこの2週間、寝ても覚めてもこの世界にいるので、さすがにこれが夢じゃないと気付いた。認めたくなかったけど。
監禁生活はご飯は3食出るし、お風呂もベッドも用意してあるし、一応ご飯の用意や洗濯物を取りに侍女さんが来てくれる。生活は保障されていて、何もしないで過ごす日々は贅沢でもある。しかし、現代っ子の私には、分かるかな?この生活は暇すぎるのだ!!やることなくて寝すぎたせいで、私のお肌はココに来た時よりもツルツルだ。
最近の私の悩みは、寝すぎて頭痛がすること。あぁ、慣れない大学生活や人間関係・課題で疲れがたまっていた時の私ならば、羨ましすぎる悩みだろう。この生活で平均13時間睡眠の私だが、不眠症にならなくてすんだのは、机の上にあった本のおかげである。本の内容が難し過ぎて読むと3秒で寝れるという、のび●君並みの寝る速さを身につけたのだ。おかげで毎回同じ行から本は進んでいないが。
コンコンッ
扉をノックし、部屋に入ってきて静かに礼をする彼女は、監禁生活での私の身の回りの世話をしてくれる侍女さんである。年齢は私よりも幼い14歳前後で、なんと目も髪も青みがかかった紫色である。目は大きく、物腰や数少ない会話からも知的さを感じる。鼻の上にあるそばかすが、キュートな子だ。
「獣人様、もう少しお食べになられないと…。」
テーブルの上に残してあるご飯を見て、侍女さんがため息をつく。あぁぁご飯を無駄にしてごめんなさい。別に、この世界のご飯がマズイわけではない。しいて言うならば、量が多いのだ。それも監禁生活の私は基本寝るなどしかしていないため、そんなにお腹が減らない。ご飯が勿体ないので量を減らしてほしいと言ったのだが、この世界の人は胃袋が大きいのか、逆にもっと食べろと怒られてしまった。
「そんなに食べてたらブタになっちゃうよ…」
ただでさえ、耳と尻尾ついてんだからさ。体型ぐらいは人間らしさを意地したいものだ。
「…?それと、用意してほしいと頼まれていたモノをお持ちいたしました。」
どうやら、おデブ=ブタという考えがないらしい。じゃぁ、お黙り!このメス豚め!!とか言っても怒られないのかなぁ…。言う機会は無そうだけど。
私が頼んでいたモノが、片づけられたテーブルの上に置かれる。そう、私が頼んだもの それは、もっこもこ のパジャマである。
この世界は砂漠のように、昼間と夜間の温度差が激しい。そのため、私が昼間に着ている短パンやノースリーブなどでは、夜は寒すぎるのだ。
ということで!暖房器具に囲まれて冬を過ごした私には耐えきるわけもなくて、もっこもこのパジャマを頼んだのだ。耳と尻尾が何故か生えている私が、このもこもこパジャマを着ると他の人から見たら、本当の動物に見えることだろう。どうしよう、獣人じゃなくて獣って言われるようになったら…。
ササッと用事を済ませて、侍女が出ていく。その後ろ姿を見ながら、もうそろそろ限界だなぁ なんて思ったり。監禁2週間に耐えたのも褒めて欲しいぐらいだ。
私は、昔からこの世界を夢に見てきた。それも、最近こそ城の人に追いかけられて捕まったりしているけど、昔は空気のような存在で城や町をよく探検してきたのだ。今こそ、その知識を活用するべきだよねー。
侍女さんが来る時間は規則正しく、特に夜から朝にかけては一度も巡回には来ない。脱走するならこの時間帯だろう。暗いから人目にもつきにくい利点つき。
問題の脱走経路は、もちろん窓である。屋根を辿れば地面に着くと思われる。城の部屋数も多いから窓につかまりながら移動したり、カーテンが閉ってるからバルコニーで一休みも出来るだろう。
もっこもこのパジャマが届いたことだし、今夜 脱走することに決めた。久しぶりに何かを行うことへの興奮でお腹が痛くなってきた。ヤバいヤバい、下痢で決行が延期とかダサすぎる。
「…ふぐっ。」
夜になり脱走を行った私だが…出だしからつまずくとは、予想外だ。原因は下痢ではなくて、窓の開く幅が狭かったこと。そのせいで私のお尻が挟まっているのだが、私が太ったからではなく もこもこのパジャマのせいだと言い訳をしておく。
こ、こんな所で…負けられるかぁぁぁ!!! ファイトー!!!イッパーツ!!!
ビリビリッッ!!!
すっぽん!っとお尻が抜けてマヌケな姿から逃れた私だが、すごく嫌な音が聞こえた。気のせいだと思いたいけれど、お尻のあたりがスースーしていて私に現実だと教えてくれる。まぁ、成功に失敗はつきものだ。
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