⑧ 和奏の心配。男子なカレの生理現象。『息が荒いみたいだけど、大丈夫……?』
喫茶店をあとにした僕たち。
バスに乗り、ショッピングモールへとやってきた。
「どこも混んでるわね……」
休日ということもあり、どの店も、お客さんで賑わっている。
——しかし、大勢の人に囲まれると、女装しているという実感が更に強くなり、恥ずかしさが増してきた。
前方から、おしゃべりしながら歩いてくる、女子中学生らしき私服のふたり組。
すれ違いざま、彼女たちの視線が僕の顔へと向いた。
僕の口元。ピンクのリップが塗られたあたりを見た彼女たち。通りすぎていく。
しばらくして、遠くから、先ほどのふたりが小さく「キャー!」と叫ぶ声が聞こえてきた。
(——女装がバレた……!!)
途端、顔が真っ赤になるのを感じた僕。
とっさに胸に両手を当てた僕は、柱の陰にしゃがみこんだ。
——気分が悪くなり、スカートを押さえてうずくまってしまう。
「優、大丈夫……? おなか痛い……?」
和奏が不安そうに訊ねてくる。
いや、おなかが痛いわけじゃない……けど……。
——そう思いつつも、言われると行きたくなってくるのが性。
「ちょっとおしっこ、したいかも……」
ただ、今の格好では男子トイレに入れないし、女子トイレは、一番駄目だ……!
女装中の僕は、どちらに入ったところで詰みが確定してしまう……!!
「大丈夫、こっちよ……」
そんなことはお構いないしという表情の和奏。
僕の手を掴み、そのまま通路を進んで行った。
◆◆◆◆
通路の奥まで連れて行かれた僕は、俯いていた顔を上げる。
目の前には、とある個室があった。
——多目的トイレだ。
「ここなら今のあなたでも大丈夫でしょう?」
優しく微笑みかけてくる。
(よかった! ここなら安心だっ)
そして、意気揚々と、ふたり一緒に個室内へ入る。
(早くショーツをおろして、おしっこして……)
——って、ふたりで??
「なんで和奏も入ってくるのっ??」
下着にかけた手を慌てて止める。
「スカート穿いてトイレなんて初めてでしょう? あたしがいたほうがいいかなって……」
……別に、パンツ脱いでおしっこするだけだから問題ないと思うけど……そう思ったが、言えない。
しかし、尿意を我慢できなくなった僕は、スカートを穿いたまま、ショーツだけおろす。
便座に腰掛ける。陰部はスカートで隠したままで……。
——なぜか、和奏が僕のことを、じーっと見てくる。……そこへ、ある男子特有の「生理現象」がきた。
「うっっ……」
「大丈夫……? やっぱり調子悪い……?」
和奏が心配そうに訊ねてくる。
「ご、ごめん! 一旦出て!」
慌てて彼女をトイレの外に出す。
「やばい、まずはこれを落ち着かせないと……!」
スカートをめくりあげる。
元気に直立している、僕のおちんちん。
——この状態ではおしっこが出ない。
とりあえず、この昂りをおさめようと、固くなったアレを右手で握る。
着替えの際に見た、彼女の姿を思い出す。
——ピンクのブラジャーに包まれた大きな乳房。
そして、同色のショーツを穿いたお尻を網膜に思い浮かべて……。
◇◆◇◆
「ハッ、ハッ、ハッ……!」
「——ゆ、優……? 息が荒いみたいだけど、大丈夫……?」
——ガチャリ。扉が開く。
彼女が心配そうに、こちらの様子を伺ってくる。
(……しまった! 鍵かけ忘れてた……!)
和奏と目が合う。
便座の上。スカートをめくりあげ、右手で握ったモノ。
彼女の視線が、ソレに向いた。
「っっ! ごめんなさい……!」
——そのまま、そっと扉がしまった。
◇◆◇◆




