㊶ 凛の告白。優の性癖。『あたしも和奏と————』
僕と和奏、そして凛は、用具倉庫内で車座になって座っていた。
「──凛、なんであんなこと……」
和奏が、自身の水着姿が表示されたままのタブレットに目を向ける。
「…………だって、あたしも和奏と————、したかったんだもん…………」
「え……?」
「あたしも和奏とエッチ、したかったのぉーーっっ!!」
「「えーーっっ!?」」
僕たちはふたり同時におどろく。
◆◆◆◆
「……中1の時、和奏と一緒のクラスになってまだ日の浅かった頃、和奏があたしの水泳大会に応援で来てくれたでしょ……?
でも、あたしが負けちゃって泣いてたら、和奏も一緒に泣いちゃって……。
あの時に、和奏のこと、すっごい好きだ、って思った。恋愛対象として……」
「そ、そうだったの……?」
「うん……。和奏のことを好きになる前からずっと女の子が好きだったんだけどね……、
和奏を好きになってからは、着替えを見たり、お風呂に一緒にお風呂入って、和奏の下着や裸見て、ひとりで興奮してたの……。何度も、お、オナニーもしちゃったし……。
そんな風にずっと見ちゃってて、ホントにあたし、気持ち悪いよね……」
「……いえ、実はあたしも……。
女の子が恋愛対象だと思ってたの……。だから、凛の気持ち分かるから……」
「え」
凛の目に仄かに希望の灯がともった。
「じ、じゃあ、殿村と別れて、あたしと……!」
「……ごめんなさい。あたし、凛のことはそういう風に見てないの。凛とは友達がいいの……」
和奏が凛に、きちんと自身の意志を伝える。そして、僕の腕を引き寄せ抱きしめると、そのままくちびるを重ねてきた。
舌が入ってくる。——ディープキス。
そのさまを見た凛が口を開け、唖然としている。
和奏がくちびるを離すと、唾液が糸を引いた。
「……もう、あたし、優じゃないとダメな身体になっちゃったの……。ごめんね」
「ハ……………………、」
恋人同士の抱擁。そして深い口づけ。
目の当たりにした凛。一言だけ発して完全に言葉を失う。
「あたしね、優のことは1年前にグループワークで助けてくれた時に好感は持っていたの。
ただ、2ヶ月くらい前に彼から告白されて、あたしが優に頼んで女装して、それを条件に付き合うことにしたのね……。
だけど、やっぱり、見た目じゃなくて、内面の強さにどんどん惹かれていって……。
でも、あたしがカレとの時間ばかりを優先して、凛の気持ちをないがしろにしちゃった……。
最低なことして、ほんとうにごめんなさい……」
和奏が丁寧にお辞儀をして凛に謝る。
「……うぅん、最低なのは、あたしのほうだよ……。
あたしだって、和奏と付き合えるなら、他の誰かを傷付けて自分の気持ちを優先しちゃったかもしれないし……。
和奏の気持ち考えないで、ひっぱたいたりして、本当にごめんね……」
凛が額に手を当て、天井を仰ぐ。
「……あーあ、5年間の片思いもここまでかぁ……。
……まぁ、結局、振られるとは思ってたけどねぇ……。
——ねぇ、和奏っ!?
アタシ、和奏より綺麗で可愛い恋人作っちゃうんだからねっ!? 後悔しないでよっ?!」
「……凛。あたしより綺麗で可愛い人なんて、凛、あなたくらいのモノよ」
「なっ……! 和奏、ヤめて、そういうのっ。諦めきれなくなっちゃう……!」
顔中、真っ赤になる凛。
「……てか、殿村も!
もし、和奏泣かせたら、ただじゃ置かないからね……?!」
「わ、分かったよ……」
恐ろしいまなざしを向けられ肝が冷えた。
「あっ!」
和奏が突然なにかを思いついたように手を合わせる。
「……そうよ、凛! あたし、クリスマスイヴは空いてるのよ! クリスマス当日の塾も、理由つけて休んじゃうわ! だから、あたしと2日間続けて『クリスマスデート』しましょうよ!?
……って、凛、どっちの日もスイミングあるって言ってたわね、すっかり忘れてたわ……」
「い、いや、結局、スイミングは施設の都合で急遽休みになったから、2日間とも大丈夫だけど……」
「ほんとうっ?!」
「……うん。……って! あたしと和奏で、デートぉ……!? それって殿村は……?」
「もちろん、あたしと凛のふたりで、よ。」
「和奏……! うれしいっ」
凛が和奏に抱き着く。
「……それにしても殿村、アンタのことホテル前で見た時、女の子の姿がだいぶ板についてるようだったけど、和奏に頼まれる前から女装が趣味だったんじゃない……?」
疑いのまなざしを向けてくる凛。
「いや、そんなわけないでしょ……」
「どうだか……。まぁ、あたしも色々性癖抱えてるから人のこと言えないし、
殿村が女装好きでも、なにも言えないけどね……?」
「おいおい……」
和奏に助けを乞うように目を向けるも、ふいっと目を逸らされる。
(困ったもんだ……)
——そう思いつつ、溜息にも似た安堵の吐息が、口から漏れた。




