㊳ ホテル前。カノジョとの邂逅。『さっきまであたし、殿村くんとエッチしてた』
——愛を確かめあった僕たちは、ホテルをあとにする。
僕の腰回りは、ホテルへ入る前に和奏が穿いていた、ダークベージュのスカートに包まれていた。
そして、彼女の手は、僕の手としっかり繋がれている。さきほどまでの互いの温もりを確かめあうよう、恋人繋ぎで……。
ホテル前で立ち止まった僕たち。
僕は、時間を確認しようと、スマホを取り出す。
「——和奏……?」
——不意に前方から、聞き覚えのある声。
夜のラブホテル街。
目の前に、
こんなところにいるはずのない女子——、
和奏の親友、
……持月凛が立っていた。
「凛……!? なんでこんなところに……!」
息を呑む和奏。
サッ、と彼女が咄嗟に僕から手を離す。
「この道、スイミングから帰る時の近道だから……。
というか和奏こそ、なんでこんなとこに……?
——あと、隣の子、誰…………?」
スポーツバッグを手に提げた凛。
凛が、僕の顔を静かに伺ってくる。
——ただ、顔を見ても僕だと気付いてはいないようだ。
彼女の視線が僕の手元へと移る。
僕の手に握られたスマホを見ている。
(スマホ——? あっ……!!)
急いでスマホを隠そうとするも——、
「……そのスマホについてるストラップ……、マンボウの……、殿村のスマホにも同じの付いてた……。
……え? あなた、女の子にしか見えないけど……、もしかして……、殿村、……なの……??」
凛の視線。
僕の綺麗にメイクされた顔、ピンクのリップが塗られたくちびる、スカートを穿いた僕の足元へフラフラと視線をさまよわせる。目線が定まらない。
——彼女の手がわなわなと震えている。
「な、なんで殿村が、お、女の子の格好してるの……?」
凛が僕たちの背後へと視線を向ける。
——ホテルの看板。
「……わっ、和奏と殿村、今、そ、そこから出てきたよね……? 手繋いで……、え……ホテル……、ホテルぅ……? ふ、ふたり、も、もしかして……」
顔面蒼白の凛。
「ぼ、僕たちはっ……!」
凛相手に、必死に否定しようとする僕。
——しかし、和奏がさっと前に出た。
凛の目をまっすぐに見つめる。
「——そうよ、凛。
さっきまであたし、殿村くんとエッチしてた」
「エ、エッチぃ……? と、殿村とぉ……?」
凛の足がガクガクと震えて今にも崩れ落ちそうになる。
「き、きょうがはじめてなの……?」
「まだ4回目くらいかしら……」
「……さ、最近和奏、休みの日、あたしにほとんど付き合ってくれなくなったの、と、殿村とずっと一緒にいたからなんだ……、
あたしが一所懸命、水泳練習しているあいだ、和奏は陰で、殿村とふたり、な、仲良くエッチしてたんだ……。
……しかも殿村は女装してぇぇ……??
…………最、低……ッ!!」
——パチン!
「凛……っ!」
弾かれるように走り出す凛。
スポーツバッグも置き去りのまま。
和奏は叩かれて赤くなった頬をそのままに立ち尽くす。
僕は何も声を掛けることができなかった——。




