㊱ スカイフォレストからの夜景。引き結ばれたくちびる。『絶対に、和奏のことは僕が守るから』
僕たちはしばらく、クリスマス前のにぎやかな街を散策した。
まだ、クリスマス本番を1週間後に控えたタイミングの街。
道行く人の表情や、人工物のはずのイルミネーションの灯りにも、祭りの前に感じる独特の高揚感が宿っているように見えた。
飛行機に乗り、旅先へと向かう際のようなワクワクにドキドキ……。
そんな感情で街は満たされている。
「冷えるわね……」
クリスマスケーキの宣伝をするサンタの着ぐるみを遠くに見ながら、和奏が、ふぅ……、と息を吐く。彼女の顔の周り、空気が白く煙る。
和奏と繋いだ手にすこし力をいれると、それに呼応して彼女が握り返してくる。
◆◆◆◆
17時過ぎ。
人気の高層スポット、スカイフォレストへ。
観光客やカップルで、ごった返すエレベーター。
展望デッキへとあがる。
「すごいわぁ……!」
眼下に見下ろす夜景。暗い中に灯る人々の営み。
窓からも、足元の透明な床からも外の世界が一望できる。
黄昏時にライトの灯る街並み。
道路をゆく車や、川面を走る船が見えるばかりで人の姿はさすがに視認できない。
外の夜景をふたりで眺めつづけていると、この世界には、僕と和奏しか存在していないかのような錯覚に陥る。
◆◆◆◆
展望デッキ内にあるレストラン。
予約はしていなかったものの、運良くキャンセルが出て、席に案内される。
「和奏にクリスマスプレゼントがあるんだ」
「なぁに……?」
長方形のケースを取り出す。綺麗にラッピングされている。
受け取ると、丁寧に開封。
箱を開ける。
「まぁ、綺麗……!」
麻音に付き合ってもらいつつも、僕の直感で選んだ桜貝のネックレス。
「ねえ、あなたがつけて……?」
和奏の首の後ろへ手を回し、ネックレスをつけてあげる。
「あたし、嬉しいわ……!」
首に光る桜貝のネックレス。
やはり、僕の直感どおり、彼女によく似合っていた。
——食事を終え、スカイフォレストをあとにする。
地上へと降りる。
すでにあたりは真っ暗になっていた。
◆◆◆◆
ホテル街をふたり歩く。
——流石に制服姿でホテルはマズいだろうということになった僕たち。
上はとりあえずコートで隠し、下は、ユニシロで調達した。
それぞれ同型のスカートで、僕は濃紺、和奏はダークベージュ。
あとで、交換して穿こうと和奏と決めている。
——俯いた和奏とふたり。ラブホテルの横をいくつも通りすぎていく。
「……………………、」
横を歩く和奏はくちびるを引き結び、先ほどから固い表情で黙りこんでいた。
繋いだ彼女の手が、ふるふると震えている。
(初めてではないのに、こんなに震えて……)
昨年のグループワークの際、皆の前での発表に怯え、手を震えさせていた時の和奏の姿と、今の横顔がオーバーラップする。
彼女の手に、力を込める。
「和奏、大丈夫だよ……。絶対に、和奏のことは僕が守るから」
「………………ッッ!」
和奏の目が見開かれる。
——ふっと、その目をやさしく細め……。
「ありがとう、優…………。
…………あたし、今日のエッチ、
あなたのために、すっっごく頑張るわ…………」
ドキリとすることを言う和奏。
——僕の体に、そっと、その小さな頭を預けてくるのだった……。




