㉞ 恩田の意見。優の思い。『他人の考えじゃなくて、あなたの気持ちがいちばん大事なのよ』
学校からほど近い場所にあるショッピングモール。
僕と恩田麻音は、おたがい、ひとり分の空間をあけて歩く。
首にミントグリーンのマフラーを巻いた恩田。
モール内はクリスマス間近ということで、ジングルベルの音色が周囲に満ち、モール中央にはきらびやかに装飾された大きなクリスマスツリーが飾られている。
恩田のほうを見ると、すこし腰が痛いのか、若干歩くのが辛そうだ。
「ごめん、体調悪そうなのに付き合わせて……」
「……? あたしは至って健康だけど……」
「腰、なんだか辛そうに見えたから」
「……あぁ。それは、あたしの体が健康な証、ってやつよ」
おなかの辺りに手を当て、クスリと笑う恩田の顔。
(や、やばい! またデリケートな話題を……!)
「……で。プレゼントしたい相手ってどんな子なの?」
彼女から探りを入れられ、すこし焦る。
(これ、正直に言ったら和奏って完全にばれるよな……)
「綺麗で……」
「うん」
「可愛くて……」
「……うん」
「美人……」
「………………」
恩田の表情が怪訝に染まる。
「……そんな、誰にでも当てはまる情報は聞きたくないのよ……」
額に手を当てて嘆かれる。
「はぁーー……。仕方ないわね、とりあえず色々見てみましょう」
◆◆◆◆
「あ、これ……」
アクセサリーショップの前で足を止めた僕。桜貝のネックレスに目を引かれた。
……『桜貝』という言葉から、
和奏の名字、
『亜桜』を連想してしまう。
実際、手に取ってみると、品のある色合いが、和奏の清楚な雰囲気に似合いそうだ。
「それ、桜貝よね……、
まさか、和奏の名字から連想したわけ……!?」
「考えすぎだって……」
「……でも、あなたが、あげたい子には似合いそうなんでしょ?」
——和奏の優しげな顔を思い浮かべる。
「……うん」
「なら、それになさい」
「いいのかな……?」
「他人の考えじゃなくて、あなたの気持ちがいちばん大事なのよ」
手の中のネックレスに視線を落とす。
——和奏のことを考えて見いだした、そのネックレス。
「……うん。これにするよ」
会計を済ませる僕。
「……そんな風に自分を思って選んでくれたプレゼントなら、相手も喜ぶわよ……。あ、」
「……なにかあった?」
「いえ……。
まあ、今から言うことは、余計なお世話、と思われるかもしれないけどね。
——もしかしたら、
あなたがプレゼントを渡す相手が、クリスマスだから、と言って、あなたにとって魅力的で、都合のいい話をしてくるかもしれない。
……でもね。相手は、そのために相当な無理をしているかもしれないの。
……あなた、優しそうだから、逆によかれと思って、なにも考えずに相手の話に流されちゃうかもしれない。
だから、その時はね、あなたがきちんと考えて、相手に向き合わなきゃいけないの。
……言いたいことは分かってもらえたかしら?」
「う、うん……ちゃんと向き合う。約束するよ」
「その返事が聞けてよかったわ……。
じゃあ、あたしも、もうこれで帰るわね。
——メリークリスマス! 殿村くん。
お相手とうまくいくことを祈ってるわ」
優しく微笑み、僕に手を振ってくる恩田の顔。
——絶対に約束は守る。
そう、心に決めた。




