㉜ 12月18日。覚悟のまなざし。『——あたし、この日がいいわ』
12月12日、放課後。
怒涛の期末試験期間も、土曜日のデートを一旦お休みにして、和奏とふたりで勉強した甲斐もあり、無事に終わった。
本日は、和奏宅にて、間近に迫ったクリスマのデートの相談をする。
和奏はマンションに帰る途中、薬局に寄って、トイレットペーパーや生理用品などの日用品を購入していた。
なお、今回のクリスマスデートにあたり、僕は自ら、「女の子の格好をする」と、しっかり和奏に宣言した。
◆◆◆◆
和奏の部屋。
しばし雑談に耽る僕たち。
「——それにしても、この2ヶ月いろいろあったわね……。
まさか、優に告白されるなんて思ってなかったし……」
「ハハ……僕もだよ……」
「……あなたには、去年のグループワークの時のことや、暴漢から救い出してもらったことと言い、いつも助けられてばかり。
なにか特別なお返しがしたいわ……」
和奏はそう言いつつも、すこし口元に手を当て、顔色があまりよくない。
「いや、もう充分くらいにもらってるよ……」
すこし不安になりつつも答える僕。
「……まだまだ足りないくらいよ……、
——あ、ごめんなさい……!
ちょっとあたし、お手洗い行ってくるわね……」
お腹を押さえ、トイレへと立つ和奏。
◆◆◆◆
30分ほどして戻ってきた彼女。
顔を見ると、すこし落ち着いたようだ。
「ごめんなさいね……、せっかく来てもらってるのに……」
「いや、無理しなくていいからね……。
……あ、今年のクリスマス当日は日曜だけど、和奏は日曜は塾があるんだよね……?」
話題を変えようと、本日の、本題へと切り替える。
「……ああ、そうなのよ……。そういうイベントごととは関係なくあるから……。凛のスイミングも、クリスマスイヴとクリスマス当日もあるって言ってたし」
「じゃあ、一緒にいられるのは土曜日のクリスマスイヴだけかぁ……」
「うーーん……、でも、イヴも混むのよね……、優も、女装して人混みには行きたくないでしょう……? あ、」
和奏はなにか言い掛け、スマホで何かのアプリを立ち上げ、確認をはじめた。
画面を見つつ、和奏は顎に手を当ててしばらく無言で考えこむ。
——しばしの黙考。しかし、意を決したように顔をふいとあげ、スマホをカレンダー画面に切り替えた。
「——あたし、この日がいいわ」
スマホの画面を見せてくる。12月18日。
クリスマス1週間前の日曜日だ。
「この日、塾がない日なのよ……」
「……そうなの?」
「クリスマスウィークイヴ、ふたりでちょっと早めのクリスマスデートをしましょう」
彼女の瞳の奥に、なにか強い意志のようなものが宿る。
決意を秘めた強いまなざし。
——しかし、一瞬、その瞳に揺らぎが見えた。
その不思議な灯し火に、僕の胸には、不安なざわめきにも似た感情を覚えた。
◆◆◆◆
自室。
ベッドに横になった僕は考える。水族館で和奏からもらったストラップのお返しをしたい。
あまりお金のかかるものは無理だけど、彼女に何か、特別なクリスマスプレゼントを渡したい——。
「和奏……、」
手近に置いていた小さなノートをめくる。
——以前、下町デートした際に撮ったプリクラを、和奏を真似して貼った、そのノート。
小さなプリクラに写る、僕たちの姿。
——眩しい笑顔の和奏。
——彼女に抱きつかれて、
困ったような笑顔を浮かべた僕。
(……なんだか、すごく楽しくて、濃密な日々だったな……)
そんな感慨に浸りつつ、スマホをスクロールする。
(なにか彼女にいいプレゼントはないだろうか……?
……あ、)
ネット上。
クリスマスのプレゼントを相談しあうというSNSのサイトを見つけた。
(——誰かに相談してみるのもいいかもしれない。
できれば和奏と同じ、女の子に……)




