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罰ゲームで黒髪清楚な高嶺の花に告白した僕は、百合だったカノジョに女装させられて秘密の関係になった。  作者: きたみ詩亜


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③ ピンクのリップ。秘密のはじまり。 『優、かわいいわぁ〜〜……♡♡』

 体毛を剃り、洗顔も終え、亜桜の部屋へと戻ってきた僕。

 彼女の視線が、短パンから伸びる、剃毛したばかりの僕の足へと向かう。

 

「あなた、けっこう足が長いのね……じゃあ早速着替えてみましょう?」


 ——目の前のローテーブル上には、色とりどりの制服や下着類の山。


 女の子モノの衣類を前に、途方にくれそうだ。

 

「どうしたらいいの……?」

「あたしが着替え手伝ってあげるわよ。上、脱いで?」

「分かった……」


 シャツを脱いだ僕のおなか。亜桜が指で、つーっとなぞる。


「本当の女の子みたいに、つるつるね……あたしのも触ってみる?」


 亜桜が自身のトレーナーに手を掛ける仕種しぐさ


「かっ、からかわないで……!」

「ふふっ、冗談よ……」


 居た堪れなくなった僕は、服の山の一番上に置かれていたブラジャーを手に取ってみる。


 ——しかし、これが一番最難関なのではないだろうか?


 細やかな刺繍が施された、その女性用下着。

 童貞男子なのだから当然だが、ブラジャーなんて、生まれてこの方、着けたことも外したこともない。

 とりあえず、肩に紐を掛け、男子特有の平らな胸部にとり着ける。

 背中に手を回してホックを……って、留められない。やり方が分からず、亜桜に言って、背中のホックを留めてもらう。


 ……なんとなく胸に膨らみが出た、気がする。

 どうやら、カップにパッドが入っているようだ……。

 そのまま上からインナーを身に着ける。


「将来的には、自分ひとりでブラジャーは着けられるようになってね?」


(え……? 今日だけじゃなくて、これからも、女装するの……??)


 ホックの留め方、その他エトセトラ……。

 今後の先行きに不安を覚える。


◇◇◆◇


「次は……これね」


 上部に小さなリボンのついたショーツ……。

 女の子モノの、小さなパンティーを見せてくる。


「いや、流石にそれはやめたほうがいいんじゃ!?」

「パンツだけトランクスじゃ変よ。後ろ向いてるから穿き替えて……」


 しぶしぶ、とりあえず短パンを脱いで、トランクス1枚になる。


(しかし、ショーツは——ん?)


 ズルリ……。


 ——嫌な予感。


「あっ!」

「何かあった?」


 こちらへと振りかえる亜桜。


 ——バサリ。


 亜桜父のトランクス。腰回りが僕には緩かったそれは、嫌な予感とともに床へとずりおちた。



   下腹部。

   トランクスが脱げ落ち、露わとなった、

   僕のアソコ。

   


   ——亜桜の視線がソコに向かう……。


(や、やばっ……!)


 ——僕のナマのアソコを見てしまった亜桜。


「あっ、あっ……!」


 彼女は言葉にならない声をあげる。

 先ほどまでの余裕の表情とは違い、慌ての色が顔に浮かんだ。

 

「……ごっ、ごめんなさい! あたしのお父さんのトランクスじゃ、サイズ大きかったわよね……!」

「だっ、大丈夫だから……!」

 

 慌てて、アソコを手で覆い隠す。


「い、いったん部屋出るわね……!」

「う、うん……」


 亜桜が部屋から出ていく刹那。

 ……彼女の顔が真っ赤に染まっているのが見えた。


 パタンと扉が閉まる音。

 急いでショーツを手に取る。


 ——しかし、扉の外から小さな声が聞こえてきた。



   『…………す、

          すごかったわ……』



 丸聞こえな彼女の独り言。


 ——僕は、恥ずかしい気持ちを隠すように、リボンのついたショーツに足を通した。


◇◇◆◇


 着替えをはじめてから、しばらく。

 僕の腰回りはスカート、上半身はブラウスにブレザー、首元にはライトグリーンのリボン。

 なんとか『女の子』の体裁が整ってきた。


「あとはウィッグなんだけど……。

 あなたに女装してもらうなんて思ってなかったから、これしかないの」


 亜桜の手元を見ると、やや短めの、ボブカットくらいのウィッグがある。


「ロングのほうが、あなただってバレにくいんでしょうけど……」


 短い髪の毛の上にネットを被せられ。その上からウィッグを取り付けてもらった。


 彼女が僕の手を取り、化粧台の前へと連れて行かれる。

 腰掛け、鏡の中を見る。

 ショートカットだった僕の頭は、ウィッグにより、肩先までのサラサラなボブカットへと変貌していた。

 亜桜が、僕の顔にメイクをつけていく。


 ベースメイクを施し、アイシャドウ、アイライン……ビューラーでまつげをカールさせ、マスカラを塗る。

 まるで、亜桜に渡された先ほどの少女マンガに出てきたヒロインのように、目元がバッチリと映える。

 続いてチーク。赤みがさし、血色がよくなって、自然と気持ちも明るく華やかになる。


 ——丁寧にやっていくので、メイクだけでも、かなりの時間を要した。


「……ねっ、最後に、これ……自分で塗ってみて?」


 彼女の指先には、小さなピンクのリップ。


「あっ…………、」


 ——思わず、僕の手が震える。


 しかし、亜桜が、震える僕の手をそっと、やさしく握った。

 ……震えが自然とおさまってゆく。

 彼女は、僕の手の平へ、ピンクのリップを乗せた。

 受け取った小さなリップをしっかりと指先で握り、自分のくちびるへと持っていく。

 すーっと滑らすように、くちびるを彩る。

 ……鏡の中の自分の口元。

 たちまちキラキラなピンクへと変身していく。  

 ラメ入りで、光り輝いて綺麗だ……。


「……さあ、完成ね」


 亜桜に導かれ、姿見の前へ。

 全身が映る鏡の中。ひとりの女の子がいる。


 ——その『カノジョ』の姿に、思わずハッと息を呑んだ。


 上半身に纏う紺のブレザー。

 首元には、かわいらしいライトグリーンのリボン。

 腰回りには、放射状に広がる赤いチェックのプリーツスカート。

 鏡に映る顔は、目元もチークも、淡いピンクにキラキラとして美しい——。


 ひとりの女の子——にしか見えない、僕の姿。


 ——思わず、口元に笑みがこぼれる。


 目元が華やぎ、くちびるが、ピンクのラメ入りリップでキラキラと輝く。


 男の自分とは思えない……。

 かわいらしい女子高生が鏡の中にいる……。


「優、かわいいわぁ〜〜……♡♡

 ……あなた、ほんとうに綺麗な肌してるのね?! メイクのノリもホントにいいわよっ?!」


 興奮を隠しきれない様子の亜桜。


(……というか、女装した途端、名前呼びに変わってるしっ……?!)


 そんな亜桜。しかし、急にしおらしく俯く。


「……あたし、小学3年生のころ、はじめて好きな人ができたんだけどね。

 周りの女の子は、スポーツのできる男の子に夢中だったんだけど……。

 ……あたしが好きになったのは、すごくかわいい女の子だった。今のあなたみたいにね。

 あたしにとても優しくしてくれる子で、

『もしかして、あたしのこと、好きかも??』なんて思ったりもした。

 しかし、やがて、あたしがすきになった子も、バスケの得意なかっこいい男子と付き合いはじめた。

 しかも、あたしが好きだった百合漫画をたまたま見て、

『ああいうの、気持ち悪いよね……』って。

 やっぱり、そういうものなんだなって思った……。

 ……あなたも、告白した相手が同性愛者だなんて、やっぱり引くかしら……?」

「……いや、そんなことはない。引く必要もないよ」


 僕には彼女の、その真摯な気持ちを否定することはできない。

 誰かを好きになる、恋慕を抱くというのは、性別に捕らわれない、真摯な感情だと思う

 目の前の彼女に告げたのは、僕の素直な気持ちだ。


「……そうかしら……?

 まあ、同性相手に告白する勇気もなかったし、男性は対象外と思ってたから、今まで誰とも付き合ったことがないの……。

 ——だからね……もし、あなたがその姿で、あたしと一緒にデートしても構わないと言うのなら——あたしとお付き合いしましょう……?」


 表情の読めない彼女の顔。

 女子の制服に包まれた自らの体を見下ろす。


 ——本当にこんな申し出を受けていいのだろうか?


 男の僕が女装して、女の子とお付き合いするという、あきらかに健全とは言えない関係……。


 ——ただ……、


「……お願いします」


 ——答えてしまった。


 なにかがはじまるドキドキ、そして目の前いる亜桜と付き合えるという魅力に抗うことができなかった。


「ありがとうっ……!」


 ぎゅっと僕に抱きついてくる……パッドでない本物の胸の感触が伝わってきた。


 ——しばらく抱き合っていたが、亜桜がハッと気付いた顔になり、そっと離れる。


「……あのね、この関係は、他のみんなには秘密にして……?

 特に、持月凛さん……、あたしの親友の、凛には絶対に、秘密よ……」


 僕たちと同じクラス、亜桜と一番仲のいい女友達、持月もちづきりん


 ——つり目の、いつも不機嫌そうな雰囲気を纏った少女の顔が頭に浮かぶ。


 あの視線で射抜かれたらマジで死にそうだ。

 普通に亜桜と付き合うだけですらヤバそうなのに、女装して付き合うだなんて、話すべきではないだろう……。


「……でも、亜桜さんは、いくら女装しているとはいえ、付き合う相手が男子でも大丈夫なの……?」


 女子の服に身を包んだところで、中身はただの男子高校生だ。性欲だってちゃんとある。


「まあ、それはそうなのだけどね……。

 ……ただ、あたし、もしかすると、

 同性愛寄りのバイセクシャルなのかもしれない。


 ——バイセクシャルっていうのは、男女どちらにも惹かれる、って意味ね。


 実は、男の子に惹かれたことがないわけでもないのよ。

 小6の頃、やっぱり顔立ちがかわいい感じの男の子で、一緒に手を繋いで遊んだこともあったの。

 でも、中学にあがったら、あっという間に逞しくなって、なんだか冷めちゃった……。

 しかも、お……、友だち、あたしのお友だちと付き合いはじめて、エッチも済ましてたみたい……。すぐ別れたらしいけど……。

 最近は、完全に男子に興味なくしちゃってね。

 男性であたしに告白してくるのは、勘違いしたカースト上位ばかり……。

 みんな、あたしのカラダにしか興味がないの。

 あたしの胸ばかり見て、目もギラギラしててね……」

「告白相手を一刀両断にしてるって噂って、もしかして……」

「そう。勘違いさせないようにしてるわけよ。

 あたしとしては、もっとかわいらしくて、優しい人のほうが好きなのにね……。

 ……ねえ、優……、あたし、

 あなたとなら、うまく付き合っていける気がするの……」

「亜桜さん……」

「——あっ! その呼び名、『亜桜さん』じゃなくて、ちゃんと『和奏』って下の名前で呼んでくれるかしら?

 あたしも、あなたのこと、さっきから『優』って、下の名前で呼んじゃってるし……」

「……分かった。じゃあこれからよろしく……和奏」

「ええ……優」


 再び抱き合う。ウィッグでボブカットになった僕の頭を、優しく撫でてくる和奏。


 ——傍から見れば、女の子同士の、よくあるハグ。


 女装男子の僕と、美しい百合の花の彼女。


 ——僕たちの、『秘密の関係』が始まった……。

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