⑰ 忘却の優。和奏のウィンク。『あたしと遊べる時間も少なくなっちゃうし、ね』
あっという間に、和奏と約束していた土曜日を迎えた。
映画の予約などは、映画館の会員になっている和奏がすでに済ませている。
会員になっていると、5回見たら1回無料で見られるらしい。しかし、来年から廃止になってしまうと彼女が嘆いていた。
僕たちが観るのは午後の回だが、早めに準備は済ませたいということで、朝8時くらいに彼女のマンションを訪れる。
なお、早く来ようとしていたものの、スマホのアラームが鳴らず、ぎりぎりの時間を慌てて出てきた。
「朝早く来てもらっちゃって申し訳ないわね……」
扉を開けて、出迎えてくれる和奏。
和奏も早起きしたのか、目元がちょっと眠たそうだ。
彼女はすでに着替えを済ませていた。
すでに11月に入ったこの季節。暖かそうなピンクのセーターに、ブルーのデニム姿。
セーターを押し上げる大きな胸元に目が行ってしまい、慌てて逸らす。
和奏の私室に移動。
「じゃあ、手早く着替えちゃうか……」
和奏の前でジーパンを脱いだ僕。
トランクスの下。
彼女の視線が、僕の両足、毛の生えたままの足へと向く。
「……優、ちょっと剃りましょうか?」
和奏が目を眇め、カミソリを手にする。
(——しまった、バタバタして家で剃り忘れてた……!)
そのまま風呂場に押し込まれた。
◆◆◆◆
風呂場から出て、つるつるになった僕の両足をあらためる和奏。OKが出る。
「事前の毛剃りは忘れないように……あたしと遊べる時間も少なくなっちゃうし、ね」
ウィンクする彼女。
(か、かわいい……!)
思わずドキリとする。
下着を着替えた僕は、和奏に渡された、淡いブルーのブラウスを身に着け、ミントグリーンのロングスカートを履く。
鏡を見ながら、まるでずっと昔からのルーティンのように、ピンクのリップをつけた。
和奏と本日の予定について話をする。
「そう言えば、今日は映画何観るの?」
「あら、言ってなかったかしら? これよ」
アニメ映画のチラシを取り出す和奏。
チラシには、3人の女子が並んで描かれている。
——見覚えのある絵柄。
真ん中に描かれた、キラキラした目の三つ編み少女と、右横に描かれた快活な女子……。
「……これ、もしかして、『岬トライ&アングル』?」
「そうよ! 以前、あたしのシャワー待ちの時に読んでもらった、百合マンガ。ついに待望の映画化なのよ!」
「あれ、すごい面白かったよね!」
「そうなのよ! あたしもすごくハマってたから、映画化と聞いて、ほんとに嬉しくて楽しみでっ!」
「なんだか、僕も楽しみになってきたよ」
「よかったわ! さぁ、遅くならないうちに早めに出ましょ?」




