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黒衣の魔女は夜に輝く

作者: ゆうこ
掲載日:2026/01/13

冬童話2026


 全てが凍りつく世界



 冬の夜空には、美しい魔女が現れ、見る者を魅了する舞を踊ると伝えられている。


 それは、冬の訪れと終わり、2度だけ見ることができる。



 その魔女が何処から来て、何の目的で舞うのかは、誰も知らないー…。



 今年の冬も、また例年と変わることなく、魔女が現れるだろう。



 ✳️✳️✳️


 「さあ、今宵は冬の始まりの舞を踊りましょう。冬の精霊、私と共に楽しみましょう」


 秋が終わり、森の動物達が安心して眠ることができるように、黒衣の魔女は冬の精霊を呼びだし舞を踊る。


 魔女の舞が精霊を目覚めさせ、雪を降らせ、気温を下げ、静寂をもたらすのだ。春が来るまでの森の休息時間ー…。


 魔女が高らかに精霊を呼ぶと、夜の冷たい空気から、きらきらと氷の粒が現れた。そしてそれはくるくると小さな竜巻をおこしてゆく。冬の精霊の訪れだ。


 竜巻の中から、アイスブルーの瞳の容姿の整った青年が姿を見せた。襟足までの髪も瞳と同じアイスブルーだ。黒衣の魔女を見て、フイと視線をそらした。



「……どーも」


「あらあら、今年の冬の精霊は素敵な王子様ね。無事に冬が来るように、一緒にダンスを踊りましょう」


魔女の差し出した手に精霊が自らの手を重ねると、氷の粒が光と共に辺り一面降り注いだ。


魔女と精霊の背中にアイスブルーの翼が生える。


「このまま世界を冬で覆いましょう。行くわよ。王子様」


きらきらした氷の粒をまき散らし、魔女と精霊は夜空を駆けた。



 風をきり、氷の粒をまきながら、空を駆ける魔女は、精霊に問う。


「毎年ね。私のお手伝いをしてくれた精霊には、1つだけ願い事を叶えてあげるのよ」


「知ってる。あなたが俺の仲間の願いを叶えるのを毎年見ていたから。だから知ってる」


 精霊は繋いだ手に力を込め、魔女を見て呟いた。


 2人はそのまま踊り、世界を冬で覆った。


 世界をすっかり冬に変え、凍る木の枝に腰かけて魔女は精霊に問う。


「さあ、王子様。君の願いは何?私が叶えます」

 

 ある精霊は花の精霊になりたいと願った。

 また別の精霊は人間になりたいと願った。


 魔女は快く願いを叶えてきた。自分だけの力では冬の魔法を使えない。手伝ってくれた優しい精霊にお返しをしたかったから。


 魔女の目を見つめながら、精霊は口を開く。



「俺は、来年、再来年もその先も、あなたと過ごしたい。そして舞も、ずっと俺が手伝いたい」


「ぇ」


「あなたが何処から来て、何処へ向かうのかは知らない。森に休息を与えてくれるように、俺はあなたに温もりを感じてもらいたい。あなたはずっと一人だから」


「……」  


「ダメ、か?」


 精霊が魔女の顔を覗き込むと、しばらく魔女は固まっていたが、頬を赤くしながら口を開いた。


「その願い、変更できないわよ?」


「変更するつもりはない」


「来年、また願い「願い事は今回だけでいい」」


 魔女の言葉を遮り、精霊は挑む目で魔女を見た。己の意思は変えないと伝わる目。


 魔女はしばらく黙っていたが、精霊の願いを叶える魔法を使った。

 その瞬間、2人の周囲にきらきらと光る氷の粒が舞った。


「ありがとう」


 光の氷の粒に隠された涙の雫は魔女のものだったのか、精霊のものだったかは誰も知らない。


 永遠の孤独ではなくなった黒衣の魔女の幸せな物語。










 



 





魔女ときらきらになるかな

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― 新着の感想 ―
黒衣の魔女はずっと一人だったんですね。冬の寒い孤独の中、温かいぬくもりを貰えた魔女の幸せ、精霊の淡い恋が伝わります。 この作者の悪役令嬢にすらなれない私シリーズからファンです。商業化してほしい。 特に…
 口数は少ないけど他者を完全には冷遇しない冬の精霊さんと華麗にダンスや氷粒での不可思議ショーを行い、森などの景色を変えていく魔女さんのお話、魅力的でした。
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