髑髏騎士(カカシ)討伐戦
屋敷の裏手に広がる畑――そこに、ヤツは立っていた。
薄汚れたマントを翻し、首には白く風化した髑髏。槍のような棒を手に、村を見下ろしている。
アランは息を呑んだ。
「……あれは、髑髏騎士! 村を狙っているぞ!」
「は?」とフィオナが聞き返す間もなく、アランは剣を抜き、畑へと駆け出していた。
カンカンと金属音が響く。
実際には、アランがカカシの支柱を必死で叩き斬ろうとしているだけだ。
しかしその表情は真剣そのもので、まるで本物の魔物と死闘を繰り広げているかのようだ。
「村の者ども、安心せよ! このアランが貴様を地獄に送り返す!」
「やめてええええっ!」
悲鳴とともに現れたのは畑の持ち主の老人だった。
腰を抜かしながら、必死にアランの腕を押さえる。
「それはただのカカシだ! 害はない! 頼むからやめてくれ!」
「……なに?」
剣先を止めたアランは、カカシを凝視した。
確かに、よく見れば木の枝と藁でできている。髑髏もただの漂白された牛骨だ。
すぐさまフィオナが駆け寄り、頭を下げた。
「本当に申し訳ございません! うちのご主人が……その……幻覚をよく見るもので……」
老人は苦笑いを浮かべながらも、どうにか許してくれた。
屋敷に戻る途中、アランは満足そうに空を仰ぐ。
「……これで村の平和は守られた」
「守られたのはカカシの命でしょうが」
フィオナの呆れ声は、夕焼けの空に吸い込まれていった。