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作者: 喜多河 済

 ある国に恐ろしい噂が流れていた。その内容を知る者はごく少数しかいないが、その恐ろしさだけは皆が知っていたのだ。国民はいつそれが起こるかに身を固くし、恐怖におののいて毎日を暮らすようになっていた。やがて家にこもりきりになる者が現れ、次第にその数は増えて行った。国家側はあわて、なんとか対策を打ち出そうとしたが、いい案が出てこない。なにしろ、噂なのだ。とても信憑性は低いが、人々の恐怖は計り知れないほど大きい。国はうろたえた。

 やがて国は崩壊寸前となった。それでも国民はそれぞれ自己を閉ざしたままだった。国側はまず噂の内容をつかまなくてはならないと考えたが、知っている者はごくわずか。それも、皆ひきこもった国民なのだ。国は絶望した。やがて、国は完全に崩壊した。それでも、噂は続いた。

 ある日の午後、国の幹部は一人の噂に詳しい男を見つけ、大金を支払って教えてもらうこととした。男はしばらく応じなかったが、やがて出てきた。

「教えてくれ。どういう噂なのだ。早くしないと、崩壊した国が再建できなくなる…」

「まあ、お待ちなさい」

 男は茶をついで、幹部の前に置く。幹部はあせりながらそれを飲み干し、男をせかした。

「早く、噂を教えてくれ」

「分かりました」

 男は少しためらったような顔をし、やがて口をひらいた。

「家に隠れていないと、国が崩壊してしまうという噂です」


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