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九話 アドバイス

「随分ワイルドになったんだね」


ノースリーブ姿の僕をまじまじと見て真白は言った。


授業中だというのに、当たり前のように抜け出して制服を洗う僕を眺めている。


僕は教室の向かいにある手洗い場で汚水に汚れた制服を洗っていた。


背後にある教室から騒いでいる音は聞こえない。いてもいなくても変わらないまるで幽霊のような扱いだ。


「まさか稲村くんまでイジメに参加するなんてね、そんな勇気ないと思ってたのに」


そう言って真白は教室に視線を移した。稲村くんを見ているのだろう。しばらく眺めてから、真白は鼻で笑って僕の方へ向き直った。


「ねぇ、死にたいって思わないの?」


またその話しか。真白のこの問いかけに対して僕はもう辟易していた。最初の恐怖はもう跡形もなく、コイツのせいでひどい目に遭ったという怒りしか湧いてこない。


「思わないよ、君とは違って僕にはお母さんがいるから」


「私にもいるよ、お父さんが」


「虐待をするお父さんだろ」


「君のところもでしょ?」


僕は飽きもせずにそんなことをいう真白をキッと睨み付けた。しかし、真白は意に介せず、ため息をついてヤレヤレといった感じで眉根を寄せた。


「まだお母さんが味方だと思ってるの?そんなことされてるのに」


真白は僕の左腕を指差した。


赤黒く痛々しい火傷の痕がくっきりと残っている。僕はとっさに右手で火傷痕を隠した。


「それにさ、自分の子どもがイジメられてるのに助けもしないなんて、愛があるとは思えないよ」


真白の言葉に僕はドキリとした。額に汗がジワリと滲み出す。だけど、何でこんな反応をしているのか、自分でも分からなかった。


「お母さんは、知らないだけなんだよ、僕が言ってないから」


僕は絞り出すようにいった。冷蔵庫に入れられた時みたいに声が震えている。僕は、なんでこんなに動揺しているんだ。


「あ、そうだったんだ。じゃあさ言ってみれば良いじゃない、君のお母さんが本当に君の味方なら、守ってくれるはずでしょ?」


「でも、お母さんに心配かけさせたくないし」


「心配なんてしないでしょ」


真白はバッサリと言い切った。僕は真白を睨み付けたが、真白は相変わらず飄々としている。


「ま、取りあえず言ってみなよ。そしたら、私が正しくて、君が間違ってるのが分かるんじゃない?」


真白はそう言って、教室へと戻っていった。






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