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三話 会話

「何してんの?」


真白は小首を傾げて言った。

帰っていないのか制服のままで、変わらず顔に大きなアザが残っている。


何でこんなところに来てるんだろうか。真白美香の家は知らないが、この辺りで会ったことはないはずだ。


僕は真白から顔を背け、外の景色に目線を移した。


「追い出されたの?」


僕のあからさまな態度を無視して、真白は尋ねてきた。死にたいと言っていたとは思えない、よく通る澄んだ声だった。


僕は頑として反応せず、外を眺めていた。


「私もなんだ」


ひとりごちるように真白は言った。視界の端で真白が座ったのが見える。居座るなよ。


「帰ってくるのが遅いとか言ってさ、学校があるから仕方ないじゃんね、それでちょっと言い返したら突き飛ばされて、追い出されちゃった」


知らないよ。喉まで出かかった言葉を飲み込む。僕の眉間に皺が寄るのも気にせず、真白は続けた。


「追い出されちゃったし、その辺でも散歩しようかなって思ったら、君を見つけてさ、私、目良いんだよ」


どうでもいい。見つけたとしても来るなよ、友達でもないだろ。


僕は真白の言葉に返事をせず、視線を向けることもなくただ立っていた。


お母さんのために音を出したくない。それに、「死ににいかない?」なんて聞かれてから、僕には真白美香を恐れる心が芽生えていた。返事をしたらあの世に連れていかれる都市伝説のような怖さがある。


不意に肩をガッと掴まれ、無理やり横を向かされた。


「ねぇ、無視しないでよ」


真白の不服そうな顔が、鼻先に迫っていた。


ドキリと鼓動が高鳴る。手入れされていない黒髪に隠された顔が、露になっている。


モデルみたいに整った顔。切れ長の相貌が、僕を見つめていた。


僕はびっくりして、思いっきり真白を突き飛ばした。真白は一瞬よろけたが、何事もなかったように微笑んだ。


「私の提案、考えてくれた?」


微笑を浮かべたまま、真白美香は言った。提案とは、一緒に死ぬというあの提案のことなのだろう。


笑みを浮かべて死を提案する目の前のナニかに、僕は恐怖を感じた。鳥肌が立ち、真夏の猛暑を無視して首筋が冷える。


僕は無言で頭を横に振った。


「なんでよ、生きてたって、いいことないでしょ?」


真白は頬を膨らませた。不満を隠さない姿は、中学生というより幼児かぶりっこのようだった。


「いじめと虐待でアザだらけになってさ、先生からも見放されて、なんの希望があるのよ」


「虐待じゃない」




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