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二十四話 警官

二人の警官は訝しげに僕らを眺めている。僕と美香は驚きのあまり固まって言葉もでなかった。


「お前ら、一回でろ」


男は命令口調で僕らに言った。僕らは何がなんだか分からないけど、言われるがままに外に出る。


「名前は?」


また男が言った。ビール腹のガタイの良い男と、その後ろに隠れるようにして立っている二十代くらいの若い女性警官だ。


「えっと、相沢翔太です」


「真白美香です」


「相沢翔太と真白美香ね」


男は僕らの名前をメモ帳に記入した。面倒事を押しつけられたと言わんばかりに、しきりにため息をついている。


「まぁ何がなんだか分からないと思うけど、公園に浮浪者が寝泊まりしてるって言う通報が入ってね、それで来てみたんだけど……こんな若い浮浪者とはな」


男は僕らを交互に見て言った。一つため息もついた。


「君ら見る限り中学生くらいだろ、家出か?」


「あ、まぁそんなところです」


男はまたため息をつく。気だるげで、何処か好きになれないヤツだった。


「あのさぁ君たちはまだ若いから分からんのかも知れんけど、親は大変なんだよお前らみたいな子供を持つと。目ぇ離した瞬間何しでかすか分からん、一瞬も気が離せんようなバカと一緒に暮らしてる親の気苦労を考えられないのか?」


男は機関銃のように畳み掛けて言った。言い返したいことは多々あったが、ここで言い返したらよけい面倒臭くなる。美香も横で黙って聞いている。


「まぁ良いや、住所どこ?こんな時間だから送るぞ」


住所を聞かれた僕と美香は蛇に睨まれた蛙みたいに固まってしまった。男は怪訝そうに首を傾げる。


「どうした?なんで言わないんだよ」


名前は言っても、住所だけは言えなかった。ここまで来て家に帰らされるなんて、死ぬことなんかよりもずっと辛いことだ。


「ん?て言うかお前……」


男は急に美香の顔を覗きだした。美香は恐怖からそっぽを向く。それでもお構いなしに男は美香を凝視している。


「お前、真白のとこの娘さんか」


「え、先輩知り合の子ですか?」


後ろの女性警官がやっと口を開いた。男は首を横に振った。


「コイツと知り合いって訳じゃないが、コイツの親がちょっとした有名人でな、一般人への暴力暴言、迷惑行為は当たり前のクズなんだよ、名前が同じだったから引っ掛かってたが、そういえばアイツにも子供がいたな」


男は美香を見定めるようにまた凝視している。美香は何も言わずに俯いている。


そして男はまた一つため息をついた。息が真白の前髪に当たって、髪が揺れている。


僕の拳に力が入った。


「あの真白の娘が問題行為とは、蛙の子は蛙ってとこかねぇ、クズの子はクズになるんだから、子供なんて作らないでほしいよ全く」


呆れるようにして男は言った。後ろの女性警官がまぁまぁと宥めている。


僕は拳に力を入れすぎて、爪が肉に食い込んでいた。耐えろ、今まで罵倒なんて言われなれてるだろう。


明日なんだ。明日になれば全部終わらせられる。


美香も耐えてくれ。ここは耐えて嵐が過ぎるのを待つのが得策……。


僕が美香の様子を見ようと横を見ると、ちょうどその時、美香の目から涙が零れた。


「……真白美香です」


グチグチと何かを言っていた男は僕のを方をキョトンとした顔で見た。女性警官も男を宥めるのを忘れ僕を見ている。


「何だ急に」


「彼女の名前は美香です、真白美香です!美香と美香のお父さんは関係ない。もう一度言ってあげましょうか、真白美香です、その薄い頭に刻んでください!」


僕は一息に言った。男の顔がみるみる赤くなっていく。


横で美香が吹き出していた。


「んだとこら!」


「まって!先輩待ってください!」


女性警官は男を必死に宥め、一度男を離れたところへと連れていった。


残された僕と美香は顔を見合せて笑った。


「ありがとう翔太」


「何でもないよ、こんなこと」


そんなことを言い合っていると、女性警官だけが戻ってきた。


「何であんなこと言うの、先輩カンカンだよ?」


子供を叱るようにして女性警官は言った。いや、実際に僕らは子供なのだ。


「ごめんなさい、ついカッとなって」


僕がそう言うと、女性警官は表情を綻ばせた。


「じゃあおねぇさんには教えてくれる?何で家出なんかしちゃったの?」


女性警官は膝に手を当て、目線を下げて言った。終始子供扱いで少し引っ掛かる。


どう言おうか悩み、美香の方を見やると、美香は笑顔で頷いた。


「ねぇおねぇさん、私達死のうと思ってるんです」







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