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二十三話 ラストスパート

六日目。僕らはこの日に何処も行かないことに決めた。


何処にも行かない変わりに、僕らの過去の話を、お互いにすることにした。


できるだけ楽しい思い出だけを、悲しい思い出はできるだけ冗談を交えながら語り合った。


明日僕たちは死ぬ。だけどそれは、自分で決断して、自分で選んだ道なのだ。


だからこそ、最後まで楽しい思い出にしたくて、僕らは語り合った。


一日と言う短い時間は、僕らの短い人生を語り合うのにちょうど良い長さだった。


日が沈みだし、外に見える子供たちが少なくなっていっても、僕らは語り合っていた。


日が地平線に沈み、暗闇が周囲を飲み込むまで僕らは語った。


夜になり、短い自分達の人生を語り終わってから、僕は美香にずっと気になっていることを聞いた。


「ねぇ、美香はさ何で僕を誘ったの?」


真白を美香と呼ぶのにも大分慣れてきていた。最初は慣れなくて美香にからかわれまくったけど。


「んー、何て言うかさ、自信がなかったんだよね」


「自信?何の?」


「自分の決断が正しい自信」


決断、というのは僕らが明日行うことにだろう。


「お母さんが死んじゃった時から考えてはいたんだけど、でも世間様の中じゃ悪いことってされてるじゃん?だから私の選択は間違えてるのかなって常々思ってたんだ」


美香は俯いて言った。


「だから、同じ境遇の翔太に、判断してほしかったんだよ、私の決断が正しいのか、勝手な話だけどね」


「そんなこと無いよ、美香のお陰で僕は前に進めたから」


「それは良かった」


美香は少し顔をあげて笑ったけど、直ぐにまた俯いてしまった。


「ねぇ翔太」


美香は体操座りになって、膝の間に顔を埋めた。


「私たちって間違えてるのかな?」


顔を隠したまま美香は言った。その声は明らかに震えていて、泣いているのが手に取るように分かった。


慰めようとして、僕は美香の肩に手を置き、口を開いた。


「そんなこと無いよ、そんなこと、無いよ」


自分に言い聞かせるようにして僕は言った。僕らの行いが正しい何て、僕も美香も思えないのだ。


だけど、僕らにはこれしか無かったんだ。


「そろそろ寝ようか」


僕がそう言うと、美香は顔を隠したまま頷いた。


最後の夜を終えようと横になったその時。僕らを目映い光が襲った。


ドームの入り口から強い光が僕らを照らしている。月や星の光とは別の、人工的な光。


「おい、そこで何してるんだ」


光の奥から男の声がした。目がなれ、光の奥の何かが輪郭を帯びていく。


そこにいたのは、懐中電灯をもった二人の警察だった。

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