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二十一話 約束

僕らはドームに逃げ帰ることができた。


といってもお母さんはもう追ってきていなかったから、追い付かれる心配はなかった。


ドームにつき、真白を寝かせた。血は出ていないが、顔の至るところが赤く染まっている。


何か手当てをしようとしたが、こんな公園の石のドームの中じゃ、まともな道具なんて無い。


「本当にごめん、僕のせいで」


僕は泣きながら言った。こんなつもりじゃなかったのに、真白に怪我をさせてしまった。


真白は僕の顔を見ると、眉間に皺を寄せ痛みに耐えながら口角をあげた。


「こんなの何でもないよ、それより助けてくれたのが、嬉しかったよ」


「でも、死ぬ前くらい綺麗でいたいって言ってたのに、こんな……」


真白の顔は赤く腫れ始めている。真白はゆっくりと顔を横に振った。


「大丈夫だよ、こんな傷も私たちらしくて良いじゃん」


真白の慰めが、僕の胸を締め付けていた。僕の痛みなんてどうでもよかった。


僕のワガママで、真白を傷つけてしまったことが、罪悪感となって僕の胸を突き刺している。


僕が家に行きたいなんて言ったから。図鑑なんて取りに行かなくても、何も困ることなんて無いのに。僕の妄執に、真白を付き合わせてしまった。


「体当たりで助けてくれたとき、アメコミのヒーローみたいに見えたよ」


痛みを堪えた歪んだ笑顔で真白が冗談を飛ばす。僕は泣きながら首を横に振った。


「僕はヒーロー何かじゃないよ、もう無理しないで寝てて」


「そう?じゃあ遠慮無く……」


そう言って真白は寝息を立て始めた。僕はいたたまれなくて、ご飯も食べずに看病をした。


真白は夜になるまで目を覚まさなかった。


夜になり、空気も冷え始めた頃、真白は目を覚ました。


真白は起き上がって伸びをした。


「うわ、もう夜じゃん」


「うん、全然目を覚まさないから、もしかしたら死んじゃったんじゃないかって、不安だったんだよ」


真白は横で看病していた僕の顔を見て、急に噴き出した。


「落ち込みすぎでしょ、気にしないでって言ったじゃん」


「だって、傷付けちゃったから」


真白はひとしきり笑って、涙が滲んだ目を拭った。


「んー、じゃあさそんなに申し訳ないなら、明日は私のやりたいことに付き合ってもらおうかな、それでチャラね」


真白は照れ笑いを浮かべながら言った。真白の優しさに、僕はまた泣いてしまった。


「もちろん、もちろんだよ」


泣きながらも、絞り出すように僕は言った。真白はただ優しく微笑んでいる。


ドームの中で、僕の啜り泣く声だけが響いていた。


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