世界救済の始まり
――――ゼロ歴10年 5の月
先日、最後の姉も学園に出荷され遂に俺一人だけが残った。
「これで心置きなく家で世界救済の計画を話し合えるなぁ!」
「もう、ご両親もいらっしゃるのに気を抜きすぎじゃない?」
俺たちはこの3年、毎日のように家を抜け出しては二人で手合わせを行い、とにかく鍛えまくった。
家族にはしこたま怒られたが、途中から諦めたようで「気を付けて帰って来いよ」程度で済んだ。
「で、体を鍛えるのは良いのだけど世界を救うって話、そろそろ具体的に聞いてもいいかしら?」
そう、グラスには「世界がやばいから救うぜ!」くらいしか伝えてないのにここまで何も言わずについてきてくれたんだ。
本当にありがたいことなんだが、単純と言うか他の人に騙されないかちょっと心配だ。
「とはいっても、俺も戦争の影響で世界が滅ぶとしか聞かされてないんだよなぁ」
「と言う事は戦争を止めるのが一番手っ取り早い解決手段ね。策は?」
「…………え?」
策?策って何が?
「だから、その戦争を回避する作戦よ。考えてあるんでしょう?」
「……………………」
「…………え?嘘でしょ?まさか「世界が滅ぶ」と分かって、しかも原因までぼんやりとだけど分かってる上で無策だったってこと?」
「いや違うよ?俺もさ、世界が滅ぶって言われたからある程度の対策は考えてたけどさ?ただの高校生にそんな気転が利くわけないじゃん?逆にどうすりゃよかったのよって話よ?」
「言い訳に関しては口も頭も回るのね」
グサァ!
「まぁ無能な貴方に代わって私の方からいくつか提案させてもらってもいいかしら?」
グサグサァ!!
「まず大前提として、「戦争を止められたら世界が救われる」という条件にして話を進めるわ」
「最初に仲間にした参謀が有能そうで助かったよ…」
「戦争を終わらせるには和平か侵略を完遂するかが条件だけど、侵略が完遂した場合は止めたとは言えないから平和的に終わらせるのが必須になるわ」
「平和的に、と言っても何か目的があって戦争が起こってるわけだからな。それを突き留めないと話にならないな」
「戦争を起こす理由なんて大抵物資や土地などの相手が持ってる物が欲しい、くらいよ」
7歳の時から思ってはいたけど、コイツちょっと達観しすぎてないかな?
「で、本当は国同士で勝手に解決してくれればいいんだけど貴方が介入しなければ世界が滅びるらしいのでここからは国に介入して戦争を終わらせる具体例を出していくわ」
「一つ目、貴方が国王となって他の国への攻撃をやめ、和平交渉を申し出る案」
「20歳までに国王とかハードルが高いってレベルじゃねぇな。次。」
「二つ目、貴方が世界的に有名な人物となり発言権を手に入れ、各国に訴える案」
「これもハードルが高いけど、こっちの方がまだ可能性がありそうだな」
「三つ目、そもそも食料や兵器を無くすことで戦争を継続できない状況にする案」
「由緒正しい兵糧攻めって奴だな」
「四つ目、戦争を裏で操ってる組織を壊滅させる案」
急に流れが変わったな?
「戦争を裏で操ってるなんて、ちょっとお話がすぎないか?」
「前世の記憶を引き継いで、しかも女神様から世界を救って欲しいって言われてる人が言っても説得力ないわよ?」
一理ある。
「それに、今まで仲の良かった国同士がいきなり戦争をしてるのよ?裏で何者かが糸を引いてるって考える方が正しいわ」
「でもそんな組織なんて信じがたいなぁ」
「意外じゃないわよ?昔の時代の戦争もきっかけは宗教だったって言うし、今の時代の宗教のトップが有権者を唆して戦争を仕掛けさせてる可能性も十分あると思うわ」
確かに、あっちの世界でも宗教絡みの戦争は多かった気がする。
「以上四つが私の提案する策よ」
「とりあえず俺が発言権を得るのが一番平和的で手っ取り早そうだと思った」
「それよりも、どの案を選んでも現状足りてない物があるの、気付いてるかしら?」
「いや全く?」
「…………」
うわ、超嫌な顔されたわ。
「物資、と言うよりかは人員と資金ね」
「うーん、詰んだか?」




