忌み子
私は、母に売られた。
私が連れ去られるとき、見えないように金貨3枚を受け取っていた。
私の魔力は恐ろしいんだって、その程度の価値しかないんだって。
私は、忌み子だった。
ガシャン、と大きな音を立てて檻のドアが開く。
「ふぅ、大丈夫か?」
彼はそんな私の檻をいともたやすくこじ開けてくれた。
盗賊は2人くらい逃がしたものの、何とか迎撃に成功してよかった。
血の魔術、強力だけど流石にまだ扱い切れてないな…
しかし奴らの荷物を奪えてよかった。多分この大きさ的に奴隷の運搬中だっただろう。
「鍵奪っておいて良かったな、今のちからだとこじ開けられる気がしないからな…」
ガシャン、と大きな音を立てて檻のドアを開ける。
「ふぅ、大丈夫か?」
「あなたは、だれ?」
見たところ、同じ年か一個上くらいの女の子がそこに居た。
「俺はゼロ、その辺の町の子供だ。君は?」
「私は…… 忌み子。」
忌み子かぁ、随分と重い話になったなぁ。
「えーと、名前は?」
「……思い出したくない」
「家はどこ?」
「帰る家なんて、ないの」
「そっかぁ」
「じゃあさ、俺と一緒に来ない?」
「どうせあなたも裏切るんでしょ?」
裏切る、か。嫌な言葉だ。
でも何よりも嫌なことは、こんな状況でも打算的に考えてしまう自分がいることだ。
「俺さ、詳しくは言えないけどいずれは世界を救いたいと思ってるんだよね」
「…………」
少女は何も言わなかった。
「救いたい理由は単純に自分がこの先死なないように、っていう自分の為だけなんだけどね」
「でもさ、世界を救うなんて一人じゃ絶対無理だと思うんだよね」
少女は何も言わない。
「良かったらさ、世界を救うのを手伝ってくれないかな?」
少女に向かって手を伸ばす。
「でも、貴方は絶対に後悔する。だって、私の魔力は禁忌だって…」
「禁忌だっていいじゃないか。欠点が何一つない人間なんてどこにもいない。俺だってそうだ」
改めて少女に向かって手を伸ばす。
「ふふ、おかしな人…」
差し出した手は握り返される。
「で、改めて聞くけど名前は?」
「捨てたって言ったのに、改めて聞くなんてデリカシーがないのね」
うるせぇ、前世は人間関係をほぼ断ってたんだから仕方ないだろ!!
「でもそうよね、名前が無いのは不便よね…」
「だから、貴方が付けてくれないかしら?」
「そうだなぁ、いきなり言われても困るんだが……」
周りに目をやる。
周囲には血塗れだが、その中でも一輪の花が目に入った。
「華、か…」
「何か思いついた?」
「グラシリア、なんてどう?相性はグラスだ。」
「グラシリア、それが私の新しい名前… 嬉しいわ、ありがとう!」
その時、グラシリアが笑ったような気がした。




